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ナルバ山の遺跡編
episode66
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ベルトルドが戻ってきたら決裁しやすいようにと、リュリュは書類を丁寧に仕分けていた。その様子を、デスクの隅に置かれたカゴの中からジッと見つめ、オデットは小さな欠伸をする。そんな穏やかな時間を突き破るかのように、扉の開く音がして、ムスっと両頬を膨らませたベルトルドが帰ってきた。
ベルトルドのご機嫌ナナメな顔を見て、リュリュは目をパチクリとさせる。
「おかえり、ベル。どうだったのん?」
ベルトルドは無言でデスクに戻り、勢いをつけてチェアに座る。そして腕を組んで、更に両頬をいっそう膨らませた。
「ンもう、ふくれっ面しててもしょうがないでしょっ。洗いざらい白状なさい」
両手を腰に当て、くねっとポーズを取ると、リュリュはベルトルドを叱りつけるように見下ろした。
ベルトルドは両頬の膨らみを収めると、拗ねた目でリュリュを見上げる。
「キャラウェイは悪事がバレて、逮捕された」
「あら良かったわあ。ブルーベル将軍、元の鞘に戻ったみたいね」
「うん」
「じゃああーた、なんでそんなご機嫌ナナメなのヨ?」
これには口をへの字に曲げて、眉を寄せた。
「あのクソボケナスジジイめ、今回のこと、ず~~~~っと前から周到に準備してやがった」
「え?」
「昼行灯のボケのくせに、悪知恵ばっかり働かせてないで、仕事しろ仕事!」
今は怒り心頭状態なので、多少鎮火するまでリュリュは待って、改めて質問する。
キャラウェイの暗躍は、数年前から皇王の耳に入っていた。しかし巧みに尻尾を隠し通していて、中々掴ませてもらえない。まさか、透視して知ったから逮捕する、というわけにもいかず、チャンスを待っていた。
そんな時、ブルーベル将軍が罠に嵌められる事態となり、これは好機と、キャラウェイの悪巧みに知らずに乗せられたと思わせる。ブルーベル将軍が罷免されたのを聞けば、絶対怒って乗り込んでくるベルトルドを利用することで、キャラウェイの悪事を暴き、逮捕に漕ぎ着けたのだった。
そこまでは、別に怒ることでもなかったのだが、このことで皇王はご褒美と称し、
「この俺に軍総帥の地位を押し付けやがったっ!!」
右の拳をドンッとデスクに打ち付け、ベルトルドはリュリュに噛み付く勢いで怒鳴った。
暫く目を瞬かせていたリュリュは、ぷっと吹き出す。
「それってあーた、キャラウェイをダシにして、総帥を押し付けるのが主目的だったんじゃないのっ」
「ぐぎぎぎぎ…」
副宰相の地位にいるベルトルドには、目立って功績なり武勲を立てる機会がない。確かに仕事の面では舌を巻く優秀さだが、総帥の地位を下賜するとなると、イマイチ説得力に欠ける。
だが今回の件は、ブルーベル将軍が罠に嵌められ、罷免されるという事態を引き起こした。これは軍部を心胆寒からしめる大事件だった。この窮地を救い、ブルーベル将軍を再び将軍職に戻した功績は、総帥の地位を下賜するにはちょうどいいのだ。
「さすが、ご寵愛を一身に受けているわねん」
「あんなジジイのご寵愛なんぞ、気色悪くていらんわ! まったく、仕事が増えるだけじゃないか」
そう、仕事は今よりも倍増えるだろう。でも、とリュリュは思う。
(ベルなら、問題なくこなせちゃうでしょうね。むしろ国政と軍を掌握していれば、色々やりやすいでしょうし。もっとも、アタシも忙しくなっちゃうわ)
ベルトルドは肘掛に片肘ついて、もう片方の手にオデットを持って、指でモフモフしている。オデットはヒゲをそよがせて、気持ちよさそうだった。
暫くして下士官が一通の書類を執務室に持ってきて、リュリュに手渡し出て行った。
書類には、キャラウェイの将軍職剥奪、逮捕投獄、ブルーベル将軍の復帰、そして、ベルトルドが軍総帥の地位を近日中に正式に引き継ぐ旨が記されていた。
ベルトルドのご機嫌ナナメな顔を見て、リュリュは目をパチクリとさせる。
「おかえり、ベル。どうだったのん?」
ベルトルドは無言でデスクに戻り、勢いをつけてチェアに座る。そして腕を組んで、更に両頬をいっそう膨らませた。
「ンもう、ふくれっ面しててもしょうがないでしょっ。洗いざらい白状なさい」
両手を腰に当て、くねっとポーズを取ると、リュリュはベルトルドを叱りつけるように見下ろした。
ベルトルドは両頬の膨らみを収めると、拗ねた目でリュリュを見上げる。
「キャラウェイは悪事がバレて、逮捕された」
「あら良かったわあ。ブルーベル将軍、元の鞘に戻ったみたいね」
「うん」
「じゃああーた、なんでそんなご機嫌ナナメなのヨ?」
これには口をへの字に曲げて、眉を寄せた。
「あのクソボケナスジジイめ、今回のこと、ず~~~~っと前から周到に準備してやがった」
「え?」
「昼行灯のボケのくせに、悪知恵ばっかり働かせてないで、仕事しろ仕事!」
今は怒り心頭状態なので、多少鎮火するまでリュリュは待って、改めて質問する。
キャラウェイの暗躍は、数年前から皇王の耳に入っていた。しかし巧みに尻尾を隠し通していて、中々掴ませてもらえない。まさか、透視して知ったから逮捕する、というわけにもいかず、チャンスを待っていた。
そんな時、ブルーベル将軍が罠に嵌められる事態となり、これは好機と、キャラウェイの悪巧みに知らずに乗せられたと思わせる。ブルーベル将軍が罷免されたのを聞けば、絶対怒って乗り込んでくるベルトルドを利用することで、キャラウェイの悪事を暴き、逮捕に漕ぎ着けたのだった。
そこまでは、別に怒ることでもなかったのだが、このことで皇王はご褒美と称し、
「この俺に軍総帥の地位を押し付けやがったっ!!」
右の拳をドンッとデスクに打ち付け、ベルトルドはリュリュに噛み付く勢いで怒鳴った。
暫く目を瞬かせていたリュリュは、ぷっと吹き出す。
「それってあーた、キャラウェイをダシにして、総帥を押し付けるのが主目的だったんじゃないのっ」
「ぐぎぎぎぎ…」
副宰相の地位にいるベルトルドには、目立って功績なり武勲を立てる機会がない。確かに仕事の面では舌を巻く優秀さだが、総帥の地位を下賜するとなると、イマイチ説得力に欠ける。
だが今回の件は、ブルーベル将軍が罠に嵌められ、罷免されるという事態を引き起こした。これは軍部を心胆寒からしめる大事件だった。この窮地を救い、ブルーベル将軍を再び将軍職に戻した功績は、総帥の地位を下賜するにはちょうどいいのだ。
「さすが、ご寵愛を一身に受けているわねん」
「あんなジジイのご寵愛なんぞ、気色悪くていらんわ! まったく、仕事が増えるだけじゃないか」
そう、仕事は今よりも倍増えるだろう。でも、とリュリュは思う。
(ベルなら、問題なくこなせちゃうでしょうね。むしろ国政と軍を掌握していれば、色々やりやすいでしょうし。もっとも、アタシも忙しくなっちゃうわ)
ベルトルドは肘掛に片肘ついて、もう片方の手にオデットを持って、指でモフモフしている。オデットはヒゲをそよがせて、気持ちよさそうだった。
暫くして下士官が一通の書類を執務室に持ってきて、リュリュに手渡し出て行った。
書類には、キャラウェイの将軍職剥奪、逮捕投獄、ブルーベル将軍の復帰、そして、ベルトルドが軍総帥の地位を近日中に正式に引き継ぐ旨が記されていた。
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