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ナルバ山の遺跡編
episode64
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ベルトルドは素っ頓狂な声を上げた。と同時に、侮蔑も顕にキャラウェイ将軍を見据える。
「陳腐すぎて恥ずかしい夢だな。恥ずかしすぎて表を歩けないような夢だぞ貴様!」
「なっ、なんだと小僧!!」
これにはさすがに、キャラウェイ将軍は立ち直った。幼い頃からいだき続けた、純粋な夢だからだ。それを侮辱されて、黙っているわけにはいかない。
青ざめていた顔が一気に赤く染まると、今にも蒸気が噴出しそうな勢いで、キャラウェイ将軍は立ち上がった。
「世界征服のどこが悪い! どこが恥ずかしいんだ!! 男なら一度は見る至高の夢である!」
一歩踏み出し断言するキャラウェイ将軍に、ベルトルドは軽蔑の眼差しを向けた。
「ならば聞く。仮に世界征服が成され、そのあとどうする?」
「は?」
「3惑星全てが貴様のものとなった。世界は貴様を王と仰ぎ見る。さあ、そうして世界をどこへ導く?」
口をパクッと閉じて、キャラウェイ将軍は目を瞬かせた。
「おそらく世界は類を見ないほど、徹底的に破壊されただろう。焦土と化した大地には廃墟と土くれだけが残され、生き残った人々には衣食住の保証もない。国自体が無くなっているのだから、この先どう生きていくか見当もつかん。希望も見いだせない。戦禍で優秀な人材は損なわれ、それでも国を基礎から作り直さなくてはならない。さあ、貴様はどう立て直していく?」
ベルトルドの顔を見つめながら、それでもキャラウェイ将軍は口を開くことができずにいる。
征服したあとのことなど、考えたこともないからだ。
「俺はな、このボケジジイにあらゆる権限を押し付けられ、毎日仕事が山のように押し寄せてくる。本来なら、こんなところで年寄りどものくだらない攻防を見学している暇などないのだ。俺が仕事を遅らせれば、結果的にそのしわ寄せを喰らうのは国民だからな」
ブルーグレーの瞳が、鋭い光を放つ。そして、射抜くようにしてキャラウェイ将軍の目を見つめた。
「民なくして国は成り立たん。俺らのような偉そうな地位にいる者は、民の代理に過ぎん。暮らしを良くするため、安全で安心な環境を保証してもらうため、それを効率的にできる人間に任せているんだ。男だから、とか、女だから、なんぞ、まったくもって関係ない! 仕事がきっちりこなせて、責任をしっかり取れる者が、その地位に就けばいいだけの話だ。小者のロマンスなんぞが、民を足蹴にしていい道理があるか、馬鹿者!」
一括され、キャラウェイ将軍はひっくり返った。
「ワイズキュール家が千年前に種族統一国家を作った。しかし、長い年月の間に少しずつ離反するものが現れ、小国が興った。人の数だけ思想も理想も夢もあるだろう。まつろわない人々を無理に繋いだところで、無用な騒乱を招くだけだ。――現在この惑星ヒイシには、ハワドウレ皇国と17の小国、5つの自由都市がある。千年の間にこうなった。判るか? 世界征服なぞしたところで、結局は元に戻るんだ」
ベルトルドはキャラウェイ将軍の前まで来ると、冷たい目で見下ろした。
「そんなに征服したかったら、囚人たちの中で、くだらない王でも気取るがいい!」
口から泡を噴き、キャラウェイ将軍は気絶してしまった。
「陳腐すぎて恥ずかしい夢だな。恥ずかしすぎて表を歩けないような夢だぞ貴様!」
「なっ、なんだと小僧!!」
これにはさすがに、キャラウェイ将軍は立ち直った。幼い頃からいだき続けた、純粋な夢だからだ。それを侮辱されて、黙っているわけにはいかない。
青ざめていた顔が一気に赤く染まると、今にも蒸気が噴出しそうな勢いで、キャラウェイ将軍は立ち上がった。
「世界征服のどこが悪い! どこが恥ずかしいんだ!! 男なら一度は見る至高の夢である!」
一歩踏み出し断言するキャラウェイ将軍に、ベルトルドは軽蔑の眼差しを向けた。
「ならば聞く。仮に世界征服が成され、そのあとどうする?」
「は?」
「3惑星全てが貴様のものとなった。世界は貴様を王と仰ぎ見る。さあ、そうして世界をどこへ導く?」
口をパクッと閉じて、キャラウェイ将軍は目を瞬かせた。
「おそらく世界は類を見ないほど、徹底的に破壊されただろう。焦土と化した大地には廃墟と土くれだけが残され、生き残った人々には衣食住の保証もない。国自体が無くなっているのだから、この先どう生きていくか見当もつかん。希望も見いだせない。戦禍で優秀な人材は損なわれ、それでも国を基礎から作り直さなくてはならない。さあ、貴様はどう立て直していく?」
ベルトルドの顔を見つめながら、それでもキャラウェイ将軍は口を開くことができずにいる。
征服したあとのことなど、考えたこともないからだ。
「俺はな、このボケジジイにあらゆる権限を押し付けられ、毎日仕事が山のように押し寄せてくる。本来なら、こんなところで年寄りどものくだらない攻防を見学している暇などないのだ。俺が仕事を遅らせれば、結果的にそのしわ寄せを喰らうのは国民だからな」
ブルーグレーの瞳が、鋭い光を放つ。そして、射抜くようにしてキャラウェイ将軍の目を見つめた。
「民なくして国は成り立たん。俺らのような偉そうな地位にいる者は、民の代理に過ぎん。暮らしを良くするため、安全で安心な環境を保証してもらうため、それを効率的にできる人間に任せているんだ。男だから、とか、女だから、なんぞ、まったくもって関係ない! 仕事がきっちりこなせて、責任をしっかり取れる者が、その地位に就けばいいだけの話だ。小者のロマンスなんぞが、民を足蹴にしていい道理があるか、馬鹿者!」
一括され、キャラウェイ将軍はひっくり返った。
「ワイズキュール家が千年前に種族統一国家を作った。しかし、長い年月の間に少しずつ離反するものが現れ、小国が興った。人の数だけ思想も理想も夢もあるだろう。まつろわない人々を無理に繋いだところで、無用な騒乱を招くだけだ。――現在この惑星ヒイシには、ハワドウレ皇国と17の小国、5つの自由都市がある。千年の間にこうなった。判るか? 世界征服なぞしたところで、結局は元に戻るんだ」
ベルトルドはキャラウェイ将軍の前まで来ると、冷たい目で見下ろした。
「そんなに征服したかったら、囚人たちの中で、くだらない王でも気取るがいい!」
口から泡を噴き、キャラウェイ将軍は気絶してしまった。
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