65 / 882
ナルバ山の遺跡編
episode62
しおりを挟む
(なんという、忌々しい小僧めが…)
もちろん、身長差ではない。傲岸な表情も態度も改めず、不躾に見下ろしてくるその目が気に入らない。
(フンッ、まあいい。きゃつをこの場で、その不釣合いな地位から蹴り落としてくれる)
そうキャラウェイ将軍は胸の内で嘲笑した。
一方ベルトルドは、
(ふーん)
呆れたように、小さく鼻を鳴らしていた。
玉座で笑いを噛み殺していた皇王は、わざとらしく咳払いをする。
「して、何用じゃ、キャラウェイ」
皇王に声をかけられ、キャラウェイ将軍は慌ててその場に跪いた。
「はっ! 実は陛下に申し上げたい義がございます!」
「ほほう」
「過日、隣におられる副宰相殿の良からぬ噂を耳にいたしまして。そのような不穏な噂など言語道断! 至急出処を掴み、処罰しようとした矢先、このようなものを発見したのでございます」
皇王の傍近くに控える侍従を手招きし、キャラウェイ将軍は封筒を手渡した。
侍従は速やかにこれを皇王に手渡し、皇王が中身を抜き取ると、封筒だけを受け取り控えた。
皇王は一通の書類に添付されたものを見て、大袈裟な溜め息をついてみせた。
「ベルトルドや、そなた、サイヨンマー伯夫人にまで手を出しておったのか」
「ぬ?」
ベルトルドは大股で玉座に近寄り、皇王の手にしている書類を覗き込んだ。
「……ああ、淫乱夫人か」
サイヨンマー伯爵は、貴族でありながら商才のある人物で、家督を継ぐ前から家業の商売を手伝い、莫大な富を築いている。その夫人ヘルカは、社交界でも上位の美貌の持ち主として、あらゆる男性との浮名を流していた。
「言っておくが、俺が手を出したわけじゃないぞ、淫乱夫人が手を出してきたんだ」
ベルトルドは腕を組むと、キャラウェイ将軍をジロリと睨む。
「セックスは上手いが、淫乱すぎるんだ。俺の股間に食らいついて、離れようとしないからさすがに呆れて蹴飛ばした。その件で俺を恨んでるのかな?」
「そんな個人的な恨みなど知らぬ……」
キャラウェイ将軍は眉をピクピクさせて、ベルトルドを睨み返した。
「しかし女は怖いなあ、堂々と浮気をボケジジイに披露してしまうんだから」
「浮気の証拠写真を見て、開き直ってるそなたのほうが怖いぞ」
「だいたいこれは、俺は後ろ姿で後頭部と背中しか見えないじゃないか。淫乱夫人の乱れ切った喘顔だけは、ハッキリと写っているが」
それに、と言ってベルトルドは肩をすくめる。
「一体何時撮ったんだコレ? 天蓋付きのベッドだったと記憶にあるんだがな…」
「天蓋に監視カメラでも設置してあったんじゃろ…」
「ああ。悪趣味だなあ~」
すっかり世間話のように話し始めたベルトルドと皇王を見て、キャラウェイ将軍は予想外の展開に頭を激しく混乱させていた。
もちろん、身長差ではない。傲岸な表情も態度も改めず、不躾に見下ろしてくるその目が気に入らない。
(フンッ、まあいい。きゃつをこの場で、その不釣合いな地位から蹴り落としてくれる)
そうキャラウェイ将軍は胸の内で嘲笑した。
一方ベルトルドは、
(ふーん)
呆れたように、小さく鼻を鳴らしていた。
玉座で笑いを噛み殺していた皇王は、わざとらしく咳払いをする。
「して、何用じゃ、キャラウェイ」
皇王に声をかけられ、キャラウェイ将軍は慌ててその場に跪いた。
「はっ! 実は陛下に申し上げたい義がございます!」
「ほほう」
「過日、隣におられる副宰相殿の良からぬ噂を耳にいたしまして。そのような不穏な噂など言語道断! 至急出処を掴み、処罰しようとした矢先、このようなものを発見したのでございます」
皇王の傍近くに控える侍従を手招きし、キャラウェイ将軍は封筒を手渡した。
侍従は速やかにこれを皇王に手渡し、皇王が中身を抜き取ると、封筒だけを受け取り控えた。
皇王は一通の書類に添付されたものを見て、大袈裟な溜め息をついてみせた。
「ベルトルドや、そなた、サイヨンマー伯夫人にまで手を出しておったのか」
「ぬ?」
ベルトルドは大股で玉座に近寄り、皇王の手にしている書類を覗き込んだ。
「……ああ、淫乱夫人か」
サイヨンマー伯爵は、貴族でありながら商才のある人物で、家督を継ぐ前から家業の商売を手伝い、莫大な富を築いている。その夫人ヘルカは、社交界でも上位の美貌の持ち主として、あらゆる男性との浮名を流していた。
「言っておくが、俺が手を出したわけじゃないぞ、淫乱夫人が手を出してきたんだ」
ベルトルドは腕を組むと、キャラウェイ将軍をジロリと睨む。
「セックスは上手いが、淫乱すぎるんだ。俺の股間に食らいついて、離れようとしないからさすがに呆れて蹴飛ばした。その件で俺を恨んでるのかな?」
「そんな個人的な恨みなど知らぬ……」
キャラウェイ将軍は眉をピクピクさせて、ベルトルドを睨み返した。
「しかし女は怖いなあ、堂々と浮気をボケジジイに披露してしまうんだから」
「浮気の証拠写真を見て、開き直ってるそなたのほうが怖いぞ」
「だいたいこれは、俺は後ろ姿で後頭部と背中しか見えないじゃないか。淫乱夫人の乱れ切った喘顔だけは、ハッキリと写っているが」
それに、と言ってベルトルドは肩をすくめる。
「一体何時撮ったんだコレ? 天蓋付きのベッドだったと記憶にあるんだがな…」
「天蓋に監視カメラでも設置してあったんじゃろ…」
「ああ。悪趣味だなあ~」
すっかり世間話のように話し始めたベルトルドと皇王を見て、キャラウェイ将軍は予想外の展開に頭を激しく混乱させていた。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます
tera
ファンタジー
※まだまだまだまだ更新継続中!
※書籍の詳細はteraのツイッターまで!@tera_father
※第1巻〜7巻まで好評発売中!コミックス1巻も発売中!
※書影など、公開中!
ある日、秋野冬至は異世界召喚に巻き込まれてしまった。
勇者召喚に巻き込まれた結果、チートの恩恵は無しだった。
スキルも何もない秋野冬至は一般人として生きていくことになる。
途方に暮れていた秋野冬至だが、手に持っていたアイテムの詳細が見えたり、インベントリが使えたりすることに気づく。
なんと、召喚前にやっていたゲームシステムをそっくりそのまま持っていたのだった。
その世界で秋野冬至にだけドロップアイテムとして誰かが倒した魔物の素材が拾え、お金も拾え、さらに秋野冬至だけが自由に装備を強化したり、錬金したり、ゲームのいいとこ取りみたいな事をできてしまう。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる