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ライオン傭兵団編
episode58
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帰りはちゃんとお姫様抱っこで連れ帰ってもらったキュッリッキは、アジトの玄関前におろされると、一目散に自分の部屋へ駆け込んで、後ろ手にドアを閉めた。
「どうしよう…、ザカリーに見られちゃった」
心の中は、不安でいっぱいになっていた。もしみんなにバラされたら、ライオン傭兵団だけではなく、ハワドウレ皇国にすら居られない。居たくない。それに、ルーファスやマリオンはサイ《超能力》を使う。透視されたらどうしよう。
「ヴァルトにも、見せるんじゃなかった」
油断してしまった。ずっと隠しておくべき秘密だったのに。
キュッリッキはベッドにうつ伏せで倒れこむ。可愛らしい柄のキルトで作られたベッドカバーが、目の端に映った。昨日、マリオンと一緒に買いに行ったのだ。
アジトにきて1週間、少しずつ馴染み出してきた矢先だったのに、また居場所をなくすのだろうか。心がズキズキと痛んだ。
「ずっと、ここに居たい…」
ベッドカバーをギュッと握り、目の端から涙がツウッと流れ落ちた。
ザカリーは倉庫街からノロノロ帰り着くと、自室でタバコを3本ほど吸って、談話室に足を向けた。憂鬱はおさまらなかったが、酒でも飲みたい気分だった。
「あー、ザカリ~」
マリオンが笑顔で手を振る。
「ついにキューリちゃんがあ、談話室デビューを果たしたわよぉ~」
「おっ」
ひどく緊張した顔で、オレンジ色のソファの隅に腰掛けている。とてもデビューを果たした表情ではないが、こうして談話室に来る気になったのかと思うと、ザカリーはひっそりと安堵した。
キュッリッキの横には、ルーファスとマリオンが並んで座って、キュッリッキを笑わせようと、傭兵団の赤裸々談を語り聞かせている。話題に挙がる面々が、時折誤魔化そうとツッコミまくっていた。
ビールを手酌でコップに注ぎ、グイッと一気に呑む。今まさに、ギャリーの恥ずかしい思い出話が披露されていて、ザカリーも時々ツッコミ混ざる。そしてキュッリッキも、緊張した表情は中々崩れないが、我慢しきれず笑みを漏らしてもいる。
(よかった、もうあんまり怒ってないんだな)
ザカリーは自分に都合よく解釈していたが、キュッリッキはそうではなかった。
不安だから談話室へ来たのだ。ザカリーがみんなにバラしはしないか、もしバラそうとするなら、それを阻止するために。
ヴァルトについては、あまり心配していない。彼の性格的に、バラすつもりなら、とうにバラしている。でも、ザカリーはどうだか判らない。まだそこまで、信用することはできないからだ。
(絶対、みんなに知られないようにしなくちゃなんだから)
キュッリッキはスカートをギュッと握り、更に表情を固くした。
この出来事が、後に大きな悲劇を招き寄せることになるとは、このときキュッリッキもザカリーも、気づいていなかった。
****
『ライオン傭兵団編』終わります。次回から『ナルバ山の遺跡編』開始です。(掲載当初、思いっきり暫く間違えていたナルバ山の遺跡編です><)
『ナルバ山の遺跡編』から、本格的にベルトルド、アルカネット両名が参戦します。そして、キュッリッキの相棒も登場です。
引き続き読んでいただけると幸いです。よろしくお願いします。
「どうしよう…、ザカリーに見られちゃった」
心の中は、不安でいっぱいになっていた。もしみんなにバラされたら、ライオン傭兵団だけではなく、ハワドウレ皇国にすら居られない。居たくない。それに、ルーファスやマリオンはサイ《超能力》を使う。透視されたらどうしよう。
「ヴァルトにも、見せるんじゃなかった」
油断してしまった。ずっと隠しておくべき秘密だったのに。
キュッリッキはベッドにうつ伏せで倒れこむ。可愛らしい柄のキルトで作られたベッドカバーが、目の端に映った。昨日、マリオンと一緒に買いに行ったのだ。
アジトにきて1週間、少しずつ馴染み出してきた矢先だったのに、また居場所をなくすのだろうか。心がズキズキと痛んだ。
「ずっと、ここに居たい…」
ベッドカバーをギュッと握り、目の端から涙がツウッと流れ落ちた。
ザカリーは倉庫街からノロノロ帰り着くと、自室でタバコを3本ほど吸って、談話室に足を向けた。憂鬱はおさまらなかったが、酒でも飲みたい気分だった。
「あー、ザカリ~」
マリオンが笑顔で手を振る。
「ついにキューリちゃんがあ、談話室デビューを果たしたわよぉ~」
「おっ」
ひどく緊張した顔で、オレンジ色のソファの隅に腰掛けている。とてもデビューを果たした表情ではないが、こうして談話室に来る気になったのかと思うと、ザカリーはひっそりと安堵した。
キュッリッキの横には、ルーファスとマリオンが並んで座って、キュッリッキを笑わせようと、傭兵団の赤裸々談を語り聞かせている。話題に挙がる面々が、時折誤魔化そうとツッコミまくっていた。
ビールを手酌でコップに注ぎ、グイッと一気に呑む。今まさに、ギャリーの恥ずかしい思い出話が披露されていて、ザカリーも時々ツッコミ混ざる。そしてキュッリッキも、緊張した表情は中々崩れないが、我慢しきれず笑みを漏らしてもいる。
(よかった、もうあんまり怒ってないんだな)
ザカリーは自分に都合よく解釈していたが、キュッリッキはそうではなかった。
不安だから談話室へ来たのだ。ザカリーがみんなにバラしはしないか、もしバラそうとするなら、それを阻止するために。
ヴァルトについては、あまり心配していない。彼の性格的に、バラすつもりなら、とうにバラしている。でも、ザカリーはどうだか判らない。まだそこまで、信用することはできないからだ。
(絶対、みんなに知られないようにしなくちゃなんだから)
キュッリッキはスカートをギュッと握り、更に表情を固くした。
この出来事が、後に大きな悲劇を招き寄せることになるとは、このときキュッリッキもザカリーも、気づいていなかった。
****
『ライオン傭兵団編』終わります。次回から『ナルバ山の遺跡編』開始です。(掲載当初、思いっきり暫く間違えていたナルバ山の遺跡編です><)
『ナルバ山の遺跡編』から、本格的にベルトルド、アルカネット両名が参戦します。そして、キュッリッキの相棒も登場です。
引き続き読んでいただけると幸いです。よろしくお願いします。
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