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ライオン傭兵団編
episode50
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食事が終わると、キュッリッキは中断していた荷解きをしに自室へ、そしてほかは談話室へ移動した。そこで早速、ギャリーはカーティスから叱咤された。
「来て早々泣かさないでください、全く」
「面目ねえ」
デカイ図体をしょんぼりさせて、ギャリーは頭を掻いた。
「彼女は人見知りする子です。それでも仲間に溶け込もうと、努力してるんですから」
「だな…」
「アンタもぉ、たいがい粗チンなんだからあ、ヴァルトやメルヴィンくらいになってから、他人の身体にケチつけなさいヨ」
「誰が粗チンだ! オレのは標準サイズって言うんだよっ! ヴァルトやメルヴィンのが異常なんだ」
「ふふーん」
「いえ…オレのはそんな…別に…」
腕組みして得意げなヴァルトとは対照的に、メルヴィンは困ったように頬をポリポリ掻いていた。
「つーか! なんでテメーがそんなこと知ってんだよ!」
問い詰められたマリオンの顔が、ニヤリ、と歪んだ。それを見た室内の男性陣の顔に闇が射す。
――この痴女。
マリオンのスキル〈才能〉は、ダブルAランクのサイ《超能力》である。
「……まあ、ギャリーもですが、みなさんも気をつけてください。彼女はベルトルド卿自らがスカウトしてきたという背景もあります。無駄にチヤホヤする必要はありませんが、余計なことをしていると、ベルトルド卿にチクられることになりますよ」
その瞬間、室内の温度が急激に下がり、全員の表情が恐怖に歪んだ。
――キュッリッキを泣かせる、ベルトルドにチクられる、ベルトルドが怒る、速攻制裁が飛んでくる。
それを頭に浮かべると、冷や汗は滝のように流れ、胃に百穴状態だ。
「初日から仲間の関係が拗れるのはよくありません。ギャリー、キュッリッキさんに謝ってきてください。そして、仲直りするんですよ」
「お、おう」
「ダイジョーブよ。キュッリッキちゃん、アンタのこと嫌ってないからあ~」
「マジで?」
「マジで。みんなと早く馴染めるようにぃ、アンタがぁからかってるってこと、あの子ちゃ~んと判ってるもん」
「……ケッ」
照れ隠しに、ギャリーは明後日の方向へと視線を泳がせる。
「ンでも、言いすぎなのは事実よん。ちゃあんとぉ、謝ってきなさいな~」
「わーった」
ギャリーは素直に頷くと、談話室を出た。
窓もドアも開けっ放しにして、キュッリッキは荷解きをしていた。
ハーツイーズのアパートより若干広いが、閉め切っているとホコリがこもりそうである。
荷物は大して多くない。調理器具や掃除セットなどは、持ってきても使わないだろうとメルヴィンに言われたので、アパートに置いてきてある。家具類は備え付けのものを使っていたし、新しく購入したものはない。
身の回りのものや、ちょっとした小物類しかないので、馬車まで出してもらったのは、大げさだったなと思った。
服をたたみ直してチェストの引き出しにしまっていると、ドアがノックされた。
「来て早々泣かさないでください、全く」
「面目ねえ」
デカイ図体をしょんぼりさせて、ギャリーは頭を掻いた。
「彼女は人見知りする子です。それでも仲間に溶け込もうと、努力してるんですから」
「だな…」
「アンタもぉ、たいがい粗チンなんだからあ、ヴァルトやメルヴィンくらいになってから、他人の身体にケチつけなさいヨ」
「誰が粗チンだ! オレのは標準サイズって言うんだよっ! ヴァルトやメルヴィンのが異常なんだ」
「ふふーん」
「いえ…オレのはそんな…別に…」
腕組みして得意げなヴァルトとは対照的に、メルヴィンは困ったように頬をポリポリ掻いていた。
「つーか! なんでテメーがそんなこと知ってんだよ!」
問い詰められたマリオンの顔が、ニヤリ、と歪んだ。それを見た室内の男性陣の顔に闇が射す。
――この痴女。
マリオンのスキル〈才能〉は、ダブルAランクのサイ《超能力》である。
「……まあ、ギャリーもですが、みなさんも気をつけてください。彼女はベルトルド卿自らがスカウトしてきたという背景もあります。無駄にチヤホヤする必要はありませんが、余計なことをしていると、ベルトルド卿にチクられることになりますよ」
その瞬間、室内の温度が急激に下がり、全員の表情が恐怖に歪んだ。
――キュッリッキを泣かせる、ベルトルドにチクられる、ベルトルドが怒る、速攻制裁が飛んでくる。
それを頭に浮かべると、冷や汗は滝のように流れ、胃に百穴状態だ。
「初日から仲間の関係が拗れるのはよくありません。ギャリー、キュッリッキさんに謝ってきてください。そして、仲直りするんですよ」
「お、おう」
「ダイジョーブよ。キュッリッキちゃん、アンタのこと嫌ってないからあ~」
「マジで?」
「マジで。みんなと早く馴染めるようにぃ、アンタがぁからかってるってこと、あの子ちゃ~んと判ってるもん」
「……ケッ」
照れ隠しに、ギャリーは明後日の方向へと視線を泳がせる。
「ンでも、言いすぎなのは事実よん。ちゃあんとぉ、謝ってきなさいな~」
「わーった」
ギャリーは素直に頷くと、談話室を出た。
窓もドアも開けっ放しにして、キュッリッキは荷解きをしていた。
ハーツイーズのアパートより若干広いが、閉め切っているとホコリがこもりそうである。
荷物は大して多くない。調理器具や掃除セットなどは、持ってきても使わないだろうとメルヴィンに言われたので、アパートに置いてきてある。家具類は備え付けのものを使っていたし、新しく購入したものはない。
身の回りのものや、ちょっとした小物類しかないので、馬車まで出してもらったのは、大げさだったなと思った。
服をたたみ直してチェストの引き出しにしまっていると、ドアがノックされた。
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