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ライオン傭兵団編
episode49
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もとから少食で、普通の量に盛られた料理を食べるのも遅い。食べたくないのではなく、すぐ満腹感を得てしまうのだ。
幸いババロアは喉越しもよく、お腹いっぱいに食べられそうだ。
「もっと沢山食べねえと、ちっぱいがおっきくならないぞ」
「むっ!」
「ギャリーさん、あんまり言わないほうがいいですよ…」
メルヴィンが緩く嗜めると、マリオンも「そーそー」と睨む。
「デカぱいのおめーに言われても、嫌味だぞ」
「アタシのことはぁ、どぉーでもいいのよお」
「だいたい、あんだけしか食わねえから、栄養が回らねんだ。もっと食えばちっぱいにも栄養が回んだろう」
「まーったくアンタは、デリカシィが欠片もないわねえ」
「シっ」
口に人差し指をたて驚いているメルヴィンを見て、そしてみんな視線をキュッリッキに向ける。
「ほらあ、泣かしちゃったあ~~~」
「ギャリーさんっ!」
「あちゃ…」
ギャリーを睨みつけながら、キュッリッキの目からは大粒の涙がぽろぽろこぼれていた。
胸が小さいのはずっと気にしている。しかしこればかりは、どうしようもない。何故ならキュッリッキはアイオン族だからだ。
背に翼を2枚持つアイオン族は、空を自由に翔ぶことができる。そのためか、体重が極端に少なくて、平均的な体格のヴィプネン族と比べると、20kgくらいは少ないのだ。しかもアイオン族は太ることができない体質である。どんなに暴飲暴食を繰り返しても、絶対に太らない。
さらに極めつけは、アイオン族の女性は総じて胸のふくらみが乏しい種族でもあった。一応個人差もあるが、貧乳だのちっぱいだの言われるレベルである。
それにキュッリッキは、自分がアイオン族であることを、誰にも知られたくなくて隠している。――心の傷と共に。
ギャリーに反論しようとしたが、そのことを言うわけにもいかず、キュッリッキは悔しさを込めて涙を流すしかなかった。
「あら、あら、まあまあ」
キリ夫人は立ち上がると、キュッリッキの傍らに立って、エプロンの裾で涙を拭ってやる。
「ギャリーちゃん、女の子の身体のことを論うのは善くないことよ。小食なのは、身体がもうこれだけでいいよ、って言っているの。無理に食べると、お腹をこわすかもしれないしね」
「へい…」
ヤッチマッタ、と表情に書いて、ギャリーは肩を落とした。
「さあキュッリッキちゃん、ババロアはもうちょっと食べられそうでしょ?」
「うん」
「まだまだいっぱいあるから、食べてね。おばさんの自慢のデザートよ」
「食べるの」
しゃくり上げながら、スプーンですくったババロアを口に運ぶ。ババロアのほどよい甘さとミルクの味が、キュッリッキは気に入っていた。
キュッリッキの様子に安堵して、キリ夫人は腰を上げる。
「さあみんな、冷めないうちに食べちゃってね」
優しい笑顔のキリ夫人に場を収めてもらい、みんな食事を再開した。
幸いババロアは喉越しもよく、お腹いっぱいに食べられそうだ。
「もっと沢山食べねえと、ちっぱいがおっきくならないぞ」
「むっ!」
「ギャリーさん、あんまり言わないほうがいいですよ…」
メルヴィンが緩く嗜めると、マリオンも「そーそー」と睨む。
「デカぱいのおめーに言われても、嫌味だぞ」
「アタシのことはぁ、どぉーでもいいのよお」
「だいたい、あんだけしか食わねえから、栄養が回らねんだ。もっと食えばちっぱいにも栄養が回んだろう」
「まーったくアンタは、デリカシィが欠片もないわねえ」
「シっ」
口に人差し指をたて驚いているメルヴィンを見て、そしてみんな視線をキュッリッキに向ける。
「ほらあ、泣かしちゃったあ~~~」
「ギャリーさんっ!」
「あちゃ…」
ギャリーを睨みつけながら、キュッリッキの目からは大粒の涙がぽろぽろこぼれていた。
胸が小さいのはずっと気にしている。しかしこればかりは、どうしようもない。何故ならキュッリッキはアイオン族だからだ。
背に翼を2枚持つアイオン族は、空を自由に翔ぶことができる。そのためか、体重が極端に少なくて、平均的な体格のヴィプネン族と比べると、20kgくらいは少ないのだ。しかもアイオン族は太ることができない体質である。どんなに暴飲暴食を繰り返しても、絶対に太らない。
さらに極めつけは、アイオン族の女性は総じて胸のふくらみが乏しい種族でもあった。一応個人差もあるが、貧乳だのちっぱいだの言われるレベルである。
それにキュッリッキは、自分がアイオン族であることを、誰にも知られたくなくて隠している。――心の傷と共に。
ギャリーに反論しようとしたが、そのことを言うわけにもいかず、キュッリッキは悔しさを込めて涙を流すしかなかった。
「あら、あら、まあまあ」
キリ夫人は立ち上がると、キュッリッキの傍らに立って、エプロンの裾で涙を拭ってやる。
「ギャリーちゃん、女の子の身体のことを論うのは善くないことよ。小食なのは、身体がもうこれだけでいいよ、って言っているの。無理に食べると、お腹をこわすかもしれないしね」
「へい…」
ヤッチマッタ、と表情に書いて、ギャリーは肩を落とした。
「さあキュッリッキちゃん、ババロアはもうちょっと食べられそうでしょ?」
「うん」
「まだまだいっぱいあるから、食べてね。おばさんの自慢のデザートよ」
「食べるの」
しゃくり上げながら、スプーンですくったババロアを口に運ぶ。ババロアのほどよい甘さとミルクの味が、キュッリッキは気に入っていた。
キュッリッキの様子に安堵して、キリ夫人は腰を上げる。
「さあみんな、冷めないうちに食べちゃってね」
優しい笑顔のキリ夫人に場を収めてもらい、みんな食事を再開した。
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