50 / 882
ライオン傭兵団編
episode47
しおりを挟む
「さ~てぇ、次はぁ、台所よ~ん」
台所に近づくにつれ、美味しそうな匂いが漂ってきていた。
「おじちゃーん、おばちゃーん、ちょぉっといいかしらあ~」
「おやマリオンちゃん、どうしたの?」
「昨日話したでしょぉ、新しい子のこと。挨拶に連れてきたのお」
「ああ」
「あの、キュッリッキです。よろしく」
ぎこちない表情と動作で、キュッリッキはぺこりと頭を下げた。
「まあ、まあ、とっても綺麗な子ねえ。初めまして、私はここの料理当番兼、管理人をしているイングリッドといいます。そしてこちらは旦那のキリ」
「よろしく」
二人は同い年で、今年53歳になるという。ふっくらと優しそうな笑顔のイングリッドは、基本”キリ夫人”と呼ばれている。マリオンや一部の仲間たちは”おばちゃん”と呼んでいた。キリのほうは、まるで枯れ木のように痩せていて、無表情が普通らしい。そしてとても無口だという。
「お二人共、複合の料理スキル〈才能〉を持ってるから、料理は高級レストランよりも美味しいのよん」
「おほほ、マリオンちゃん褒めすぎよ」
嬉しそうにキリ夫人は笑った。
「ホントだもの~」
「あらあら、ありがとう」
「ねえ、今日のお昼ご飯なぁに~?」
「チキンのクリームシチューと、3種類のパスタ、卵サラダにデザートはミルクババロアよ」
「ペペロンチーノあるう?」
「ありますよ」
「やった~!」
「マリオンちゃんは、ペペロンチーノ大好きだものね。ああ、そう、そう。キュッリッキちゃんは、好き嫌いなものはある?」
「え」
二人の会話を見守っていたキュッリッキは、いきなり問われて慌てて考えた。
「えっと、好きなものはポーチドエッグとかムースとか、ババロアも好き。嫌いなものは、生野菜。苦手なの、生野菜のサラダとか」
「あらあら。青臭いのがきっとダメなのねえ。じゃあ、茹でたりした野菜は大丈夫?」
「うん。生じゃなければ、野菜は嫌いじゃないの」
「ふふ、判ったわ」
キリ夫人は優しい笑顔で頷いた。
「お昼ご飯、もうちょっとで出来るから、楽しみにしていてね」
「はい」
キリ夫妻が仕事に戻ったので、二人は台所を出た。
「最後に食堂へごあんな~い」
食堂は談話室よりもちょっとだけ狭いが、道路に面して窓も大きく、明るくてとても広々としている。
10人ずつ向かい合えるほど、長いダイニングテーブルが2台あり、ベンチのような長椅子が、それぞれ1脚ずつ置かれている。
テーブルも椅子も、シンプルな木材で、テーブルの至るところに調味料を入れた瓶が置かれていた。
「ここに料理の皿を持ってきてくれるからぁ~、各自取り皿に食べたい料理を入れて、食べるのよん。ビュッフェっぽい感じね」
「じゃあ残さなくていいね」
「そうね。でもお、美味しいから、ついついとっちゃうのよぉ~」
「そっかあ、楽しみ」
台所に近づくにつれ、美味しそうな匂いが漂ってきていた。
「おじちゃーん、おばちゃーん、ちょぉっといいかしらあ~」
「おやマリオンちゃん、どうしたの?」
「昨日話したでしょぉ、新しい子のこと。挨拶に連れてきたのお」
「ああ」
「あの、キュッリッキです。よろしく」
ぎこちない表情と動作で、キュッリッキはぺこりと頭を下げた。
「まあ、まあ、とっても綺麗な子ねえ。初めまして、私はここの料理当番兼、管理人をしているイングリッドといいます。そしてこちらは旦那のキリ」
「よろしく」
二人は同い年で、今年53歳になるという。ふっくらと優しそうな笑顔のイングリッドは、基本”キリ夫人”と呼ばれている。マリオンや一部の仲間たちは”おばちゃん”と呼んでいた。キリのほうは、まるで枯れ木のように痩せていて、無表情が普通らしい。そしてとても無口だという。
「お二人共、複合の料理スキル〈才能〉を持ってるから、料理は高級レストランよりも美味しいのよん」
「おほほ、マリオンちゃん褒めすぎよ」
嬉しそうにキリ夫人は笑った。
「ホントだもの~」
「あらあら、ありがとう」
「ねえ、今日のお昼ご飯なぁに~?」
「チキンのクリームシチューと、3種類のパスタ、卵サラダにデザートはミルクババロアよ」
「ペペロンチーノあるう?」
「ありますよ」
「やった~!」
「マリオンちゃんは、ペペロンチーノ大好きだものね。ああ、そう、そう。キュッリッキちゃんは、好き嫌いなものはある?」
「え」
二人の会話を見守っていたキュッリッキは、いきなり問われて慌てて考えた。
「えっと、好きなものはポーチドエッグとかムースとか、ババロアも好き。嫌いなものは、生野菜。苦手なの、生野菜のサラダとか」
「あらあら。青臭いのがきっとダメなのねえ。じゃあ、茹でたりした野菜は大丈夫?」
「うん。生じゃなければ、野菜は嫌いじゃないの」
「ふふ、判ったわ」
キリ夫人は優しい笑顔で頷いた。
「お昼ご飯、もうちょっとで出来るから、楽しみにしていてね」
「はい」
キリ夫妻が仕事に戻ったので、二人は台所を出た。
「最後に食堂へごあんな~い」
食堂は談話室よりもちょっとだけ狭いが、道路に面して窓も大きく、明るくてとても広々としている。
10人ずつ向かい合えるほど、長いダイニングテーブルが2台あり、ベンチのような長椅子が、それぞれ1脚ずつ置かれている。
テーブルも椅子も、シンプルな木材で、テーブルの至るところに調味料を入れた瓶が置かれていた。
「ここに料理の皿を持ってきてくれるからぁ~、各自取り皿に食べたい料理を入れて、食べるのよん。ビュッフェっぽい感じね」
「じゃあ残さなくていいね」
「そうね。でもお、美味しいから、ついついとっちゃうのよぉ~」
「そっかあ、楽しみ」
1
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる