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ライオン傭兵団編
episode38
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「おはようございます、ご婦人会の皆さん」
「ハドリーちゃん、おはよう」
狭い部屋に”おばちゃんズ”が5人、床に縛られている男が2人。それを忙しく見やりながら、奥のベッドに座り込んで、ベソかいているキュッリッキのところへ向かう。
「リッキー」
「はどりぃ」
ハドリーが頭を撫でてやると、キュッリッキは大きくしゃくりあげた。
「目が覚めたら、メルヴィンとザカリーが、部屋で寝てたの、ヒック」
「ん? 知り合いなのか?」
「ライオン傭兵団の人」
「へ?」
ハドリーはメルヴィンのほうへ顔を向けると、メルヴィンが困った顔で頷いた。
なにか誤解が生じている、と気づいたハドリーは、肩で息をつくと、ヤレヤレと首を振った。
「ご婦人会の皆さん、どうやらリッキーの早とちりっぽいです」
「おや?」
恰幅のいい女が、目をぱちくりさせる。
「えと、そこの人、事情を話してもらえますか」
メルヴィンに向けて言うと、メルヴィンは「はい」と頷いた。
「オレはライオン傭兵団所属のメルヴィンといいます。後ろの彼はザカリー。昨夜キュッリッキさんの歓迎会があったんですが、彼女が寝てしまったので、二人でこちらのアパートまで送ってきたんです。ですが、鍵を掛けて出ていけなくて、せめて彼女が起きる朝までは、居なくてはと留まったんですが、不覚にも寝てしまいまして……」
「つまり、施錠出来ない部屋で、無防備に寝ている状態にしておけなかったわけですね」
「ええ」
「なるほど」
事情が判って、ハドリーは苦笑した。そして”おばちゃんズ”に顔を向ける。
「彼らはリッキーを守って居てくれたようです。ただ、途中で寝ちゃったようですが」
「おやまあ、そうだったのかい」
「朝っぱらからお騒がせしたようで、すみません」
ハドリーが申し訳なさそうに頭を下げると、”おばちゃんズ”はケラケラと大笑いした。そして、メルヴィンとハドリーを縛っていた縄を解いた。
「じゃあ、あたしらは戻るよ。亭主の朝飯を作んなきゃね」
「洗濯もしないとだ」
「おまえさんたち、叩いてすまなかったね」
「キュッリッキちゃん、何事もなくて良かった。困ったらすぐあたしらを呼ぶんだよ」
「ありがとう、おばちゃんたち」
”おばちゃんズ”はメルヴィンとザカリーに詫びて、賑やかに部屋を出て行った。
「すげえババアどもだった……」
立ち上がりながら、ザカリーが悪態をついた。
「ごめんね、メルヴィン、ザカリー」
事情が判ったキュッリッキも、しょんぼりしながら素直に謝る。
「いいえ。我々も迂闊でした。せめて部屋の外で待機していればよかったんですが、うっかり寝ちゃいまして…。そのせいで驚かせてしまって、こちらこそごめんなさい」
優しく微笑みながら言うメルヴィンに安堵して、キュッリッキは肩の力を抜いた。
「ハドリーちゃん、おはよう」
狭い部屋に”おばちゃんズ”が5人、床に縛られている男が2人。それを忙しく見やりながら、奥のベッドに座り込んで、ベソかいているキュッリッキのところへ向かう。
「リッキー」
「はどりぃ」
ハドリーが頭を撫でてやると、キュッリッキは大きくしゃくりあげた。
「目が覚めたら、メルヴィンとザカリーが、部屋で寝てたの、ヒック」
「ん? 知り合いなのか?」
「ライオン傭兵団の人」
「へ?」
ハドリーはメルヴィンのほうへ顔を向けると、メルヴィンが困った顔で頷いた。
なにか誤解が生じている、と気づいたハドリーは、肩で息をつくと、ヤレヤレと首を振った。
「ご婦人会の皆さん、どうやらリッキーの早とちりっぽいです」
「おや?」
恰幅のいい女が、目をぱちくりさせる。
「えと、そこの人、事情を話してもらえますか」
メルヴィンに向けて言うと、メルヴィンは「はい」と頷いた。
「オレはライオン傭兵団所属のメルヴィンといいます。後ろの彼はザカリー。昨夜キュッリッキさんの歓迎会があったんですが、彼女が寝てしまったので、二人でこちらのアパートまで送ってきたんです。ですが、鍵を掛けて出ていけなくて、せめて彼女が起きる朝までは、居なくてはと留まったんですが、不覚にも寝てしまいまして……」
「つまり、施錠出来ない部屋で、無防備に寝ている状態にしておけなかったわけですね」
「ええ」
「なるほど」
事情が判って、ハドリーは苦笑した。そして”おばちゃんズ”に顔を向ける。
「彼らはリッキーを守って居てくれたようです。ただ、途中で寝ちゃったようですが」
「おやまあ、そうだったのかい」
「朝っぱらからお騒がせしたようで、すみません」
ハドリーが申し訳なさそうに頭を下げると、”おばちゃんズ”はケラケラと大笑いした。そして、メルヴィンとハドリーを縛っていた縄を解いた。
「じゃあ、あたしらは戻るよ。亭主の朝飯を作んなきゃね」
「洗濯もしないとだ」
「おまえさんたち、叩いてすまなかったね」
「キュッリッキちゃん、何事もなくて良かった。困ったらすぐあたしらを呼ぶんだよ」
「ありがとう、おばちゃんたち」
”おばちゃんズ”はメルヴィンとザカリーに詫びて、賑やかに部屋を出て行った。
「すげえババアどもだった……」
立ち上がりながら、ザカリーが悪態をついた。
「ごめんね、メルヴィン、ザカリー」
事情が判ったキュッリッキも、しょんぼりしながら素直に謝る。
「いいえ。我々も迂闊でした。せめて部屋の外で待機していればよかったんですが、うっかり寝ちゃいまして…。そのせいで驚かせてしまって、こちらこそごめんなさい」
優しく微笑みながら言うメルヴィンに安堵して、キュッリッキは肩の力を抜いた。
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