40 / 882
ライオン傭兵団編
episode37
しおりを挟む
朝6時、キュッリッキは目を覚ました。
暫く天井をぼんやり見ていたが、ここが自分の部屋だと気づいて目を眇める。
「いつの間に帰ってきたの…かな」
昨夜、ライオン傭兵団の入団歓迎会をしてもらっていた。食べろ!飲め!騒げ! で盛り上がり、途中から意識がなくなった。歩いて帰ってきた記憶がない。
雰囲気に飲まれて、あまり酒も料理も口にしていない。でも、とても楽しかったのは覚えている。あんなふうに初対面の人や、まだそんなに話したこともない人と、笑い合ったり喋ったり、初めてのことだ。
「えへへ、アレが、新しい仲間かぁ~」
口にするだけで、くすぐったい気持ちに包まれた。
「仲良くできるとイイナ」
首を引っ込めて、シーツで顔半分を覆う。楽しかった余韻が、身体のあちこちに残っていて、とても気分が良い。今日は良い事がありそうだ。
「さて、とりあえずシャワー浴びようっと」
キュッリッキは身体を起こし、ベッドから出ようとして動きを止めた。
「え……」
床に座り込んでいる男が二人、目の前にいる。
メルヴィンとザカリーだ。
「え…え……えっ………きゃあああああああああああああああああっ!?」
アパート中に轟く大声で悲鳴を上げた。
少しすると、建物を揺するほどの、ドタドタドタドターッという足音を鳴り響かせ、人生の大先輩”おばちゃんズ”が、ドアを蹴破って雪崩込んできた。
「大丈夫かいキュッリッキちゃん!?」
「誰だい女の子に悪さしに来ている奴は!!」
鉄製のフライパン、ステンレスの鍋、オタマ、包丁などを手にし、同じアパートに住む”おばちゃんズ”たちは、勇ましい姿で憤然と叫んだ。
「そこのアヤシイ二人だねっ!」
ビシッと指をさし、”おばちゃんズ”は問答無用聞く耳持たずで、メルヴィンとザカリーに襲いかかった。
呆気にとられていた二人は、目を白黒させている間に、散々ボコられた挙句、縛り上げられてしまった。
「い、一体何事ですか…」
包丁の切っ先を突きつけられて、メルヴィンは冷や汗をかきながらようやく声を発した。ザカリーと背中合わせに縛られている。
「こんな色男が、何を不自由してんだか。か弱い女の子の部屋に夜這いならぬ朝這いするなんてさ。キュッリッキちゃんはね、まだまだウブで世間知らずなんだ。それを大人げないったらないねえ」
「朝這いって!?」
ベッドのほうを見ると、ベッドの上にぺたりと座り込み、ベソ顔のキュッリッキが自分たちを見ている。それでやっと、この事態に気づく。
「ザカリーさん…」
声を潜めてザカリーに声をかけると、情けないため息が返された。
「オレら寝ちゃってたみたいだな」
「ええ、さらに迂闊でした」
「なあにコソコソ話してんだい!」
「ヒッ」
振り下ろされた包丁が、1ミリスレスレの位置でピタリと止められた。ザカリーは今にも泡を吹きそうである。そこへ、
「大丈夫か、リッキー!」
血相を変えたハドリーが、転がる勢いで駆け込んできた。
暫く天井をぼんやり見ていたが、ここが自分の部屋だと気づいて目を眇める。
「いつの間に帰ってきたの…かな」
昨夜、ライオン傭兵団の入団歓迎会をしてもらっていた。食べろ!飲め!騒げ! で盛り上がり、途中から意識がなくなった。歩いて帰ってきた記憶がない。
雰囲気に飲まれて、あまり酒も料理も口にしていない。でも、とても楽しかったのは覚えている。あんなふうに初対面の人や、まだそんなに話したこともない人と、笑い合ったり喋ったり、初めてのことだ。
「えへへ、アレが、新しい仲間かぁ~」
口にするだけで、くすぐったい気持ちに包まれた。
「仲良くできるとイイナ」
首を引っ込めて、シーツで顔半分を覆う。楽しかった余韻が、身体のあちこちに残っていて、とても気分が良い。今日は良い事がありそうだ。
「さて、とりあえずシャワー浴びようっと」
キュッリッキは身体を起こし、ベッドから出ようとして動きを止めた。
「え……」
床に座り込んでいる男が二人、目の前にいる。
メルヴィンとザカリーだ。
「え…え……えっ………きゃあああああああああああああああああっ!?」
アパート中に轟く大声で悲鳴を上げた。
少しすると、建物を揺するほどの、ドタドタドタドターッという足音を鳴り響かせ、人生の大先輩”おばちゃんズ”が、ドアを蹴破って雪崩込んできた。
「大丈夫かいキュッリッキちゃん!?」
「誰だい女の子に悪さしに来ている奴は!!」
鉄製のフライパン、ステンレスの鍋、オタマ、包丁などを手にし、同じアパートに住む”おばちゃんズ”たちは、勇ましい姿で憤然と叫んだ。
「そこのアヤシイ二人だねっ!」
ビシッと指をさし、”おばちゃんズ”は問答無用聞く耳持たずで、メルヴィンとザカリーに襲いかかった。
呆気にとられていた二人は、目を白黒させている間に、散々ボコられた挙句、縛り上げられてしまった。
「い、一体何事ですか…」
包丁の切っ先を突きつけられて、メルヴィンは冷や汗をかきながらようやく声を発した。ザカリーと背中合わせに縛られている。
「こんな色男が、何を不自由してんだか。か弱い女の子の部屋に夜這いならぬ朝這いするなんてさ。キュッリッキちゃんはね、まだまだウブで世間知らずなんだ。それを大人げないったらないねえ」
「朝這いって!?」
ベッドのほうを見ると、ベッドの上にぺたりと座り込み、ベソ顔のキュッリッキが自分たちを見ている。それでやっと、この事態に気づく。
「ザカリーさん…」
声を潜めてザカリーに声をかけると、情けないため息が返された。
「オレら寝ちゃってたみたいだな」
「ええ、さらに迂闊でした」
「なあにコソコソ話してんだい!」
「ヒッ」
振り下ろされた包丁が、1ミリスレスレの位置でピタリと止められた。ザカリーは今にも泡を吹きそうである。そこへ、
「大丈夫か、リッキー!」
血相を変えたハドリーが、転がる勢いで駆け込んできた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
151
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる