片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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ライオン傭兵団編

episode36

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「なんつーかさ、こんな可愛いくて綺麗な子が、人殺しをするの見るの辛いんだ。1人も600人も同じことだけどよ、やってほしくねーって思っちまう。――こないだのは、オレたちが殺らせたんだけどな」

「そうですね…」

「うまく言えねえんだけどよ、もう二度と、殺しはさせたくねえ。年齢よりずっとガキみたいな雰囲気をしてるくせにさ」

「ええ、オレもそう思います」

 ザカリーが言うように、キュッリッキは年齢よりもずっと幼い。話をしてまだ半日も経ってないが、それだけはハッキリと判った。

 たとえ仕事といえど、殺しがあると気が滅入る。男で年上の自分でもそう思うくらいだ。まだ18歳のキュッリッキには、絶対辛いはずだと思う。

「傭兵という仕事をしている以上、殺し合いと無縁ではありえません。ですが、極力この子には、殺しをさせずに済ませたいですね」

「ああ」

「召喚の力が、どれほどの幅を持っているかまだ判りません。これからそれを教えてもらいながら、支援も出来るのなら、そういう後衛担当を任せたりもいいですね。カーティスさんもこの子の扱いをどうするか、悩んでいましたし」

「カーティスが悩むんなら、オレたちも真面目に考えないとか」

「そうですね」

 ザカリーはメルヴィンの横に並ぶと、キュッリッキの寝顔を覗き込んだ。

「ホント、めっちゃ可愛いよな」

「そうですね。可愛いと思います」

 ライオン傭兵団にも女性メンバーはいるが、キュッリッキと比べると…、などと、男性陣は思ってしまう。

「オレはルーとは違うからな、ちっぱいでもバッチコイだ」

「……」

 メルヴィンは苦笑するにとどめた。



 キュッリッキの住むアパートに到着する。

「ザカリーさんすみません、キュッリッキさんのポシェットから、部屋の鍵を探して、開けてくれませんか」

「おっけい」

 暗い中でもハッキリと見ることのできるザカリーは、イチゴのキーホルダーのついた鍵を見つけて、直ぐにドアを開けた。

 メルヴィンはそっと、キュッリッキをベッドに寝かせる。

 これまでずっと目を覚まさず、朝までぐっすり眠っていそうなほど深い。

「片付いてて、綺麗な部屋だな」

 狭い部屋だが、掃除も行き届いているのが見てとれる。

「女の子の部屋は、綺麗ですよね」

「イヤ、マリオンの部屋はゴミ部屋だぞ。キリ夫人が怒ってるくらいだからな」

「そ、それは…」

「ところでメルヴィン、オレはあることに気づいた」

「え?」

「このまま帰るのはいいんだが、出たあと鍵を閉めるのはどうするよ」

「あ…」

 二人は暫し考え込み、

「仕方がない、朝まで居るか」

「……せめて、起きる前に出ましょうか」

「だな…。朝になれば誰か住人は起きるだろうし。それまではさすがに鍵かかってない状態で一人にはできねえ」

「ええ、迂闊でした…」

 考えが足らなかったことに、メルヴィンは額を抑えて嘆息した。
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