片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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ライオン傭兵団編

episode30

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 乗合馬車が来るのを停留所で待ちながら、メルヴィンは傍らに立つキュッリッキを、チラッと横目で見る。

 昨日、ルーファスのテレパシー中継で見せられた彼女の戦闘は、仰天するほど摩訶不思議なものだった。巨大な壁と黒い水。一瞬でソープワート軍を消し去った、その凄まじい力。

 18歳と聞いているが、まだ幼さをまとった少女である。童顔というわけではなく、全体的に幼い雰囲気がするのだ。あどけなさと危なっかしさを同居させた、そばにいてやらないと、不安になるほどに。

 こんな少女が、あれだけのことをやってのけてしまう。召喚スキル〈才能〉とは、恐ろしいものだと思った。

 この先どういうふうにキュッリッキを使っていくか、悩みどころではある、とカーティスは言っていた。キュッリッキ自身は、力のコントロールは出来るだろうから、その強大すぎる力を、如何に仕事に活かしていくか。そこが、カーティスや他のメンバーたちに課せられた、最大の試練になるかもしれない。

 仲間に取り込んだからには、その力を上手に活かしてやらなければならない。メルヴィンもそう思うのだった。

「ね、馬車きたよ」

「あ、はい」

 キュッリッキに促されて、メルヴィンはハッとなって、慌てて馬車に乗り込んだ。すっかり自分の世界に入り込んでいた。

 並んで座ると、メルヴィンはひっそりと息をつく。他にも乗客が2人いた。

「考え事でもしてたの?」

「ええ、まあ」

「ふーん」

 一応聞いてみた、といった感じの口調で言われ、メルヴィンは苦笑する。

 先程から、極力目を合わせようとしない。ツンケンしているわけでもなく、もしかしたら人見知りする子なのだろうか、とメルヴィンは気づく。小さな身体を固くして、どう接すればいいのか判らないといった感じだ。

「昨日の戦闘、凄かったですね」

 唐突に切り出されて、キュッリッキはビクッと思わず身構える。

「召喚スキル〈才能〉の力というのは、凄いものなんですね。初めて見たので驚きましたが、この先色々な力を見ることが出来るのは、楽しみでもあります」

「あ、ありがとう」

 頬を赤く染めて、キュッリッキは少し俯いた。こうして率直に褒められることはあまりないので、つい照れてしまう。

「あれは、魔法のようなものなんですか?」

 純粋に問われ、否定するように首を横に振る。

「アルケラに住んでいる子たちを、こちらの世界に呼ぶの。そして、アタシの思った通りに動いてくれるんだよ。だから、魔法とは違うの」

 いざ言葉にして説明しようとすると、どう伝えればいいか困ってしまう。

「うーん、どう説明したら判りやすいかなあ…」

 細い顎に人差し指をあてて、キュッリッキは上目遣いに、暗くなってきた空を見上げた。
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