片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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ライオン傭兵団編

episode29

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 ドアを開けると、知らない男が立っていた。男はちょっと会釈をする。

(確認しないで開けちゃった…)

 ――いいか、女の一人暮らしは危ないんだ。無闇にドアを開けるなよ!

 そうハドリーから念押しされていたのに、迂闊にも開けてしまった。

 無用心に開けたことを後悔しつつ、身を固くして男を見上げる。

 キュッリッキの怯えたような表情を見て察したのか、男はすぐ柔らかな笑顔を浮かべ、慇懃に頭を下げた。

「いきなりごめんね。オレはライオン傭兵団所属の、メルヴィンって言います。今夜キミの歓迎会があるから、迎えに来ました」

(歓迎会……あ)

 明け方カーティスたちと別れる際に、誰か迎えに寄越すようなことを言っていたのを思い出した。

(そうだ、今夜は歓迎会してもらうんだった)

 今時分まですっかり忘れていたので、キュッリッキは内心慌てた。

「ちょっと待っててね」

「はい」

 とは言ったものの、ドアを閉めていいか戸惑い、神妙な顔で考え込む。素っ気ない態度になりはしないか、果たしてドアを閉めていいものだろうか。

「オレは、下で待っていますから。ごゆっくり」

 メルヴィンは感じの好い笑顔で言うと、直ぐにその場から離れていった。それに安堵してドアを閉めると、キュッリッキは室内に駆け込んだ。

 肩出しになっている中袖のオレンジ色のカットソーと、小花がプリントされた白いミニスカートに着替えた。

 自分の歓迎会ということだから、数少ない外出着をチョイスする。

 姿見で身だしなみをチェックし、ポシェットをかけると、キュッリッキは部屋を出た。



「お待たせー」

 下へ降りると、メルヴィンは夕暮れの港の方を見ていた。

「船が沢山見えて、眺めのいいところですね」

「うん」

 メルヴィンの傍らに立ち、キュッリッキは心の中で唸る。

(どうしてこう、みんな背が高いんだろう。こないだのギャリーたちも高かったし)

 自分の背が低いだけ、という点は除外する。キュッリッキと比べれば、大概の人は背が高いのだ。

 スタンドカラーの裾の長い黒い上着に、白いゆったりめのズボン姿のメルヴィンは、肩幅もしっかりあって、威風堂々とした雰囲気をまとっていた。そして、整った顔立ちは、ハンサムという表現より、凛々しいといったほうがしっくりくる。

(傭兵っていうより、騎士とか軍人とか、そんなイメージがする人だな~)

 メルヴィンの顔をジッと見上げてアレコレ考えていると、視線に気づいてメルヴィンは優しく微笑んだ。

「そろそろ乗合馬車が来る頃ですね。停留所へ行きましょう」

「う、うん」

 停留所へ向けて歩き始めたメルヴィンを、キュッリッキは慌てて追いかけた。
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