片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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ライオン傭兵団編

episode25

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「リッキーいるのかー? リッキー」

 ドンドンドン。ドアの叩く音で、キュッリッキは薄らと目を覚ました。

 両手で目をゴシゴシ擦り、時計に目を向けると、針は正午を指し示していた。もう一度ドンドンドンとドアを叩く音がして、何だろうと身を起こす。

「リッキー」

「あ、ハドリーだ」

 はっきりと目が覚めて、キュッリッキはベッドから飛び降りると、小走りに駆け寄って玄関ドアを開けた。

「おはよー、ハドリー」

「やっと起きたか」

 髭面を呆れさせていた男――ハドリーは、やれやれと苦笑した。

「朝方帰ってきてたが、仕事だったのか」

「うん」

「じゃあ何も食ってないだろ? 今から昼飯食べに行くんだが、一緒に行くか?」

「行く行く! 顔洗って着替えるから、下で待ってて」

「オッケイ」

 ドアを閉めると、キュッリッキは寝間着かわりのシャツを脱いで、ベッドに放り投げた。



「お待たせー」

 10分ほどで身支度を整え下に降りると、ハドリーが待っていた。

「港んとこの《うみぶた亭》へ行こうぜ」

「うん、そうしよう」

 魚介類をメインにした、シーフード料理の専門店だ。港から直接素材を買い付けているので、安くて新鮮で、二人のお気に入りの店でもある。

「何の仕事だったんだ? えらく半端な時間に帰ってきて」

「うーんと、仕事兼入団テストだったの」

「へ?」

「最初から話すと、アタシね、ライオン傭兵団にスカウトされちゃった」

 暫し間を置いたあと、

「はあああああああああああああっ!?」

 周囲に轟くほどの大声を上げて、ハドリーはキュッリッキを凝視した。

「ライオン傭兵団からお声がかかったのかよ、すっげー」

「うんむ」

 ハドリーはキュッリッキより5つ年上で、同じくフリーの傭兵だ。傭兵ギルドに登録はしているが、傭兵団などには属さず、気楽にフリーを続けている。それでも、入りたい、もしくは共闘したい筆頭に、ライオン傭兵団を挙げるほど憧れていた。

 羨望の眼差しを注ぎつつ、ハドリーは納得したように深く頷いた。

「やっぱ召喚スキル〈才能〉に目をつけられたんだろうな。あれだけの凄腕集団なら、リッキーの力を欲しがるはずだ」

「アタシの召喚を見て、ぽかーんとしてたよ」

「そりゃそうだべ。魔法やサイ《超能力》とも比較できない、最早、次元が違うモンだからなあ」

 キュッリッキの召喚を、ハドリーは何度か見ている。圧倒的な力というものがあるとすれば、召喚によるものだと断言できるほど、それは凄まじい力であるとハドリーは思っていた。

「ギルドから仕事の依頼だって連絡もらったけど、依頼主に会ったらスカウトだったの。ベルトルドさんっていってね、すっごくハンサムで、優しい人だった。怖い雰囲気は滲み出てたけど」

「……リッキー、今、誰と言った?」

「ん? ベルトルドさん?」

 ハドリーは男らしい眉を寄せて、抑えるように声を絞り出した。

「落ち着いてよく聞けよ。その名前は、ハワドウレ皇国副宰相の名だ」

「…………………にゃ?」
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