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ライオン傭兵団編
episode24
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ヴィープリ峡谷から首都ルヤラまでは、来た時と同じように途中の村で馬を変えて、今度は休まず馬車を走らせた。夜通し走り続け、明け方には首都ルヤラに到着し、5人は眠い目を擦りながら、皇都イララクスに帰還した。
「では、今夜あなたの歓迎会をします。迎えを行かせるので、アパートで待っててください」
「うん、判った」
「お腹すかせてくるんだよ。歓迎会やるとこのお店の料理、美味しいからね」
真顔で告げるカーティスの横で、ルーファスが屈託のない笑顔で言った。
クーシネン街のエグザイル・システムのある建物の前で、キュッリッキはカーティスたちと別れて、ハーツイーズ方面へ行く乗合馬車に乗った。明け方という時間帯のせいか、乗客はキュッリッキ一人だった。
乗合馬車は停留所をクネクネ回って進むので、ハーツイーズへは1時間ほどかかるだろう。
(馬車に乗ってるだけだったけど、休みなしの乗りっぱなしは腰が痛いなあ。疲れちゃった)
ひっそりと溜め息をこぼし、眠い目をコシコシ擦った。シャワーも早く浴びたい。
「合格……かあ。――アタシ、ちゃんとやっていけるかな…」
囁きに近いほど小さな声で呟く。
キュッリッキは人見知り体質だった。先程は入団テストということもあって、緊張やらなにやらで、人見知りどころではなかった。しかし、これからは傭兵団という中で、新しい仲間たちと暮らしていくことになる。
「不安だなあ…」
両膝を抱え、膝に顔を埋めた。
いつも新しい所で、すぐ問題を起こした。それはほんの些細なことで、普通なら誰も気にしないことだが、キュッリッキはその些細な事に触れられると、異常なほど感情を爆発させて、周りに壁を作ってしまう。そんなことを繰り返して、居場所をなくして抜けるのだ。そして傷つく。
新しい受け入れ先が見つかると、キュッリッキは必死に自分に言い聞かせた。
――今度こそ、頑張ろう。感情を抑えよう、堪えよう!
それなのに、失敗ばかり。こんなことでは、せっかくの受け入れ先も、すぐ失うだけなのに。頭では判っているはずなのに、感情面がコントロール出来ない。
傭兵なら誰もが憧れるライオン傭兵団に、ちゃんとテストに合格して、正式に入団できたのだ。この先仕事もしっかりこなせる自信もある。でも、コミュニケーションは、果たして円満に出来るだろうか。
それを思うと、合格した喜びすら、シワシワと萎んでしまう。気が重くなる。
「はぁ…」
ずっしりとした重みの感じる溜め息を吐き出し、キュッリッキは目を閉じた。
「お嬢様、着きましたよ」
「うん…?」
いつの間にか椅子に横たわって眠っていたキュッリッキは、御者に起こされて跳ね起きた。
「あっ、あれ? アタシ寝ちゃってたのね」
キュッリッキは慌ててポシェットから財布を取り出し、銅貨3枚を御者に渡す。
「ありがとうございます。では、お気をつけてお帰りください」
「ありがとー」
ぴょんっと馬車から飛び降りる。御者以外はガラ空きの、ゆっくり走り出す乗合馬車を見て、キュッリッキは軽く首をかしげた。
「なんで”お嬢様”なのかな? 普通は”お客さん”て言うのに。ヘンなの」
「では、今夜あなたの歓迎会をします。迎えを行かせるので、アパートで待っててください」
「うん、判った」
「お腹すかせてくるんだよ。歓迎会やるとこのお店の料理、美味しいからね」
真顔で告げるカーティスの横で、ルーファスが屈託のない笑顔で言った。
クーシネン街のエグザイル・システムのある建物の前で、キュッリッキはカーティスたちと別れて、ハーツイーズ方面へ行く乗合馬車に乗った。明け方という時間帯のせいか、乗客はキュッリッキ一人だった。
乗合馬車は停留所をクネクネ回って進むので、ハーツイーズへは1時間ほどかかるだろう。
(馬車に乗ってるだけだったけど、休みなしの乗りっぱなしは腰が痛いなあ。疲れちゃった)
ひっそりと溜め息をこぼし、眠い目をコシコシ擦った。シャワーも早く浴びたい。
「合格……かあ。――アタシ、ちゃんとやっていけるかな…」
囁きに近いほど小さな声で呟く。
キュッリッキは人見知り体質だった。先程は入団テストということもあって、緊張やらなにやらで、人見知りどころではなかった。しかし、これからは傭兵団という中で、新しい仲間たちと暮らしていくことになる。
「不安だなあ…」
両膝を抱え、膝に顔を埋めた。
いつも新しい所で、すぐ問題を起こした。それはほんの些細なことで、普通なら誰も気にしないことだが、キュッリッキはその些細な事に触れられると、異常なほど感情を爆発させて、周りに壁を作ってしまう。そんなことを繰り返して、居場所をなくして抜けるのだ。そして傷つく。
新しい受け入れ先が見つかると、キュッリッキは必死に自分に言い聞かせた。
――今度こそ、頑張ろう。感情を抑えよう、堪えよう!
それなのに、失敗ばかり。こんなことでは、せっかくの受け入れ先も、すぐ失うだけなのに。頭では判っているはずなのに、感情面がコントロール出来ない。
傭兵なら誰もが憧れるライオン傭兵団に、ちゃんとテストに合格して、正式に入団できたのだ。この先仕事もしっかりこなせる自信もある。でも、コミュニケーションは、果たして円満に出来るだろうか。
それを思うと、合格した喜びすら、シワシワと萎んでしまう。気が重くなる。
「はぁ…」
ずっしりとした重みの感じる溜め息を吐き出し、キュッリッキは目を閉じた。
「お嬢様、着きましたよ」
「うん…?」
いつの間にか椅子に横たわって眠っていたキュッリッキは、御者に起こされて跳ね起きた。
「あっ、あれ? アタシ寝ちゃってたのね」
キュッリッキは慌ててポシェットから財布を取り出し、銅貨3枚を御者に渡す。
「ありがとうございます。では、お気をつけてお帰りください」
「ありがとー」
ぴょんっと馬車から飛び降りる。御者以外はガラ空きの、ゆっくり走り出す乗合馬車を見て、キュッリッキは軽く首をかしげた。
「なんで”お嬢様”なのかな? 普通は”お客さん”て言うのに。ヘンなの」
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