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ライオン傭兵団編
episode22
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一言で表せば、”ぽかーん”である。その”ぽかーん”な表情を貼り付けたザカリー、ギャリー、ルーファスを見て、キュッリッキは両手を後ろで組み、もじもじと身体を揺すった。
入団テストをどう攻略するか。それを考えたとき、「5分以内に全てを片付け終える」だった。そうすれば、自分が如何に凄い力を備えていて、傭兵団にとって強力な戦力になると判らせられる。それをしっかり見せつけたら、終わったあとには賞賛の嵐に違いない。そう思っていたのに、3人の表情は”ぽかーん”である。
勿論キュッリッキの攻略は、大成功だ。
(失敗…だったのかなあ……でも、ちゃんとソープワートの軍隊は片付けられたし)
ウンともスンとも言わない3人に、キュッリッキはどうしていいか判らず、ちょっぴり拗ねてしまった。
拗ねだしたキュッリッキを放置したまま、ライオン傭兵団の仲間たちは、念話で色々な発言が飛び交い中だ。
サイ《超能力》使いのルーファスによって、仲間たちの意思が繋げられ、遠く離れていても念話が可能になっていた。
(参ったな、オレらの知る『スゲー』の領域をはるかに超越しすぎて、どう反応していいか判らねえ)
顎の無精ひげをザリザリ摩りながら、ギャリーは眉間を寄せて唸る。
(まさに言い得て妙だねえ。凄いンだけど、なんだろうね、この圧倒された感じ?っていうのかな)
表現に困りながら、受けた感じをなんとか言い表そうとするルーファスに、頷きがいくつか返された。
(オレは…)
苦虫を噛み潰したような顔で、ザカリーが言いごもる。
(あれじゃタダの)
(それ以上言うな馬鹿者が!)
そこへ、落雷のような迫力で、ベルトルドの一声が念話に割り込んできた。吃驚したザカリーは、思わず目を見張る。
(貴様らがやらせたんだ、キュッリッキに)
グッと喉をつまらせたような反応が、一斉に念話の中に交じり合う。
(あの子は入団テストのために、必死に考え、アレだけの力を見せつけたんだ。それを今更貴様らは、非難でもするつもりか?)
露骨に責めるベルトルドに、ザカリーは噛み付いた。
(別にオレら、大量虐殺しろなんて言ってねえ!)
そう、テストのためとは言え、あっさりと大量虐殺をやってのけたキュッリッキに、心底驚いたのである。
はぁ、っと疲れたような、ベルトルドのため息が続く。
(キュッリッキが来なかったら、貴様らはどうアレを切り抜けるつもりだった? カーティスの魔法で焼き殺すか、ギャリーのシラーで斬殺しまくるか、ザカリーの魔弾で吹っ飛ばすか、ルーのサイ《超能力》で叩き殺すか。どのみち殺すんだろうが)
(そうだけどよ…)
(他人の行為は常識人ぶって非難するくせに、貴様らの行いは正当化するのか。つくづく最低なクズどもだな)
怒りも顕に軽蔑されて、皆押し黙る。
(貴様らと違ってな、キュッリッキはちゃんと判っている。アレが虐殺行為であることも、あそこまでやらないと認めてもらえないということも。つまらんプライド意識が、あの子にやらせたということを、貴様ら自覚するのだな!)
入団テストをどう攻略するか。それを考えたとき、「5分以内に全てを片付け終える」だった。そうすれば、自分が如何に凄い力を備えていて、傭兵団にとって強力な戦力になると判らせられる。それをしっかり見せつけたら、終わったあとには賞賛の嵐に違いない。そう思っていたのに、3人の表情は”ぽかーん”である。
勿論キュッリッキの攻略は、大成功だ。
(失敗…だったのかなあ……でも、ちゃんとソープワートの軍隊は片付けられたし)
ウンともスンとも言わない3人に、キュッリッキはどうしていいか判らず、ちょっぴり拗ねてしまった。
拗ねだしたキュッリッキを放置したまま、ライオン傭兵団の仲間たちは、念話で色々な発言が飛び交い中だ。
サイ《超能力》使いのルーファスによって、仲間たちの意思が繋げられ、遠く離れていても念話が可能になっていた。
(参ったな、オレらの知る『スゲー』の領域をはるかに超越しすぎて、どう反応していいか判らねえ)
顎の無精ひげをザリザリ摩りながら、ギャリーは眉間を寄せて唸る。
(まさに言い得て妙だねえ。凄いンだけど、なんだろうね、この圧倒された感じ?っていうのかな)
表現に困りながら、受けた感じをなんとか言い表そうとするルーファスに、頷きがいくつか返された。
(オレは…)
苦虫を噛み潰したような顔で、ザカリーが言いごもる。
(あれじゃタダの)
(それ以上言うな馬鹿者が!)
そこへ、落雷のような迫力で、ベルトルドの一声が念話に割り込んできた。吃驚したザカリーは、思わず目を見張る。
(貴様らがやらせたんだ、キュッリッキに)
グッと喉をつまらせたような反応が、一斉に念話の中に交じり合う。
(あの子は入団テストのために、必死に考え、アレだけの力を見せつけたんだ。それを今更貴様らは、非難でもするつもりか?)
露骨に責めるベルトルドに、ザカリーは噛み付いた。
(別にオレら、大量虐殺しろなんて言ってねえ!)
そう、テストのためとは言え、あっさりと大量虐殺をやってのけたキュッリッキに、心底驚いたのである。
はぁ、っと疲れたような、ベルトルドのため息が続く。
(キュッリッキが来なかったら、貴様らはどうアレを切り抜けるつもりだった? カーティスの魔法で焼き殺すか、ギャリーのシラーで斬殺しまくるか、ザカリーの魔弾で吹っ飛ばすか、ルーのサイ《超能力》で叩き殺すか。どのみち殺すんだろうが)
(そうだけどよ…)
(他人の行為は常識人ぶって非難するくせに、貴様らの行いは正当化するのか。つくづく最低なクズどもだな)
怒りも顕に軽蔑されて、皆押し黙る。
(貴様らと違ってな、キュッリッキはちゃんと判っている。アレが虐殺行為であることも、あそこまでやらないと認めてもらえないということも。つまらんプライド意識が、あの子にやらせたということを、貴様ら自覚するのだな!)
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