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ライオン傭兵団編
episode21
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(さて、どんな戦い方をするのかな、このちっぱい娘は)
どっかりと地面に座り込み、タバコをふかしているギャリーは、傍らに立つキュッリッキをのっそりと見上げた。
キュッリッキはただジッと、ソープワート軍を睨みつけている。その場から動かず、手足すら動かさない。
やがてキュッリッキの双眸が、不思議な輝きを放ち始めた。その様子に、ギャリーとザカリーが気づいて見つめる。
「ルー」
ギャリーに小声で促され、ルーファスもキュッリッキを見た。
黄緑色の瞳にまといつく虹色の光彩が、煌きを放ちながらどんどん輝きを増していく。そして、キュッリッキはどこか遠くに向けるように言い放った。
「来い、ゲートキーパー!」
すると、ソープワート軍の周囲の空間に、奇妙な歪みが肉眼でも見えるほどはっきりと浮かぶ。それは、水面に浮き立つ波紋のようにも見え、いくつも浮かび上がった波紋は、重なり合いながら広がっていった。
その様子に、ソープワート軍だけでなく、サントリナ軍もざわつき始めた。
グニャリ、そう空間がたわむと、今度は地鳴りが轟き始め、地面を激しく揺らしながら、それはゆっくりと姿を現した。
「なんだありゃ!」
ギャリーとザカリーが同時に叫ぶ。
城壁のような壁がいくつも地面から生えてきて、砂埃を撒き散らしながらどんどん高さを増していく。そして隙間もなくビッシリと、ソープワート軍を取り囲んでしまった。
壁は鉄の色をしていて、うっすら蒸気が立ちのぼっている。とくに装飾もなく、ただの鉄の分厚い板のようだ。
突如現れた壁に捕らわれてしまったソープワートの軍人たちは、抜け出そうと壁を登ろうとしていた。しかし、皆悲鳴をあげて地面に倒れている。
「な…、なんなんだ…」
ザカリーは状況をよく見ようと、目を細めて視力を深める。倒れた軍人たちの掌は、酷い火傷を負っていた。その様子に、だいぶパニックに陥っているのが見て取れる。
「深き沼よ…」
囁くようなキュッリッキの声に、ザカリーはビクッとなって、チラリとキュッリッキを見た。
「全てを飲み込む飢えた闇の沼よ……こい!」
キュッリッキの双眸が、強い輝きを放った。それと同時に、ドップンッという音が峡谷に轟く。何もない空から、突如壁の内側に落ちたそれは、真っ黒なコールタールのようなものに見えた。
高いところからその様子を見ているザカリーたちは、バカデカイ鉄の桶に、黒い水が注がれたようにしか見えなかった。
コールタールのようなものは、鉄壁の中でブルルンッと何度か揺れて、やがて表面を平にした。
「ゲートキーパー、闇の沼、お疲れ様。もう帰っていいよ」
親しげな友達に話しかけるような感じでキュッリッキが言うと、鉄壁もコールタールのようなものも、光の粒子となって、天に向かって消えていった。そしてそこには、何も残っていなかった。
どっかりと地面に座り込み、タバコをふかしているギャリーは、傍らに立つキュッリッキをのっそりと見上げた。
キュッリッキはただジッと、ソープワート軍を睨みつけている。その場から動かず、手足すら動かさない。
やがてキュッリッキの双眸が、不思議な輝きを放ち始めた。その様子に、ギャリーとザカリーが気づいて見つめる。
「ルー」
ギャリーに小声で促され、ルーファスもキュッリッキを見た。
黄緑色の瞳にまといつく虹色の光彩が、煌きを放ちながらどんどん輝きを増していく。そして、キュッリッキはどこか遠くに向けるように言い放った。
「来い、ゲートキーパー!」
すると、ソープワート軍の周囲の空間に、奇妙な歪みが肉眼でも見えるほどはっきりと浮かぶ。それは、水面に浮き立つ波紋のようにも見え、いくつも浮かび上がった波紋は、重なり合いながら広がっていった。
その様子に、ソープワート軍だけでなく、サントリナ軍もざわつき始めた。
グニャリ、そう空間がたわむと、今度は地鳴りが轟き始め、地面を激しく揺らしながら、それはゆっくりと姿を現した。
「なんだありゃ!」
ギャリーとザカリーが同時に叫ぶ。
城壁のような壁がいくつも地面から生えてきて、砂埃を撒き散らしながらどんどん高さを増していく。そして隙間もなくビッシリと、ソープワート軍を取り囲んでしまった。
壁は鉄の色をしていて、うっすら蒸気が立ちのぼっている。とくに装飾もなく、ただの鉄の分厚い板のようだ。
突如現れた壁に捕らわれてしまったソープワートの軍人たちは、抜け出そうと壁を登ろうとしていた。しかし、皆悲鳴をあげて地面に倒れている。
「な…、なんなんだ…」
ザカリーは状況をよく見ようと、目を細めて視力を深める。倒れた軍人たちの掌は、酷い火傷を負っていた。その様子に、だいぶパニックに陥っているのが見て取れる。
「深き沼よ…」
囁くようなキュッリッキの声に、ザカリーはビクッとなって、チラリとキュッリッキを見た。
「全てを飲み込む飢えた闇の沼よ……こい!」
キュッリッキの双眸が、強い輝きを放った。それと同時に、ドップンッという音が峡谷に轟く。何もない空から、突如壁の内側に落ちたそれは、真っ黒なコールタールのようなものに見えた。
高いところからその様子を見ているザカリーたちは、バカデカイ鉄の桶に、黒い水が注がれたようにしか見えなかった。
コールタールのようなものは、鉄壁の中でブルルンッと何度か揺れて、やがて表面を平にした。
「ゲートキーパー、闇の沼、お疲れ様。もう帰っていいよ」
親しげな友達に話しかけるような感じでキュッリッキが言うと、鉄壁もコールタールのようなものも、光の粒子となって、天に向かって消えていった。そしてそこには、何も残っていなかった。
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