22 / 882
ライオン傭兵団編
episode19
しおりを挟む
「えっ!? オッサン?」
思わず声に出して言ってしまい、怪訝そうな視線がチラホラ投げかけられる。ザカリーはヘラリと笑って、ドサッと座り込んであぐらをかいた。
(誰がオッサンだ、無礼者)
(す、すんませン…)
遠く離れたハワドウレ皇国から、念話を飛ばしてきたのはベルトルドだった。
(えっと…、オレになんか用っすか?)
ヘラリと応じ、愛想笑いを念に込める。
(これからキュッリッキの入団テストだろう、その中継にお前の目を借りる)
(あー、なるほど)
(どうせルーファスは、その場にいない他の連中に見せるために、中継をするんだろうからな。それに、お前の目を通した方が確実だ)
(ういっす)
ザカリーは戦闘の遠隔スキル〈才能〉を持つ。このスキル〈才能〉を持つ者は、非常識なほど視力が良い。1km先の小さなものも、鮮明に捉えることができるのだ。もちろん常にそんな状態では疲れてしまうので、望遠鏡のように視力はコントロール出来る。
現在地とソープワート軍の距離は、おおよそ400mほどになる。ザカリーにとって、造作もない距離だ。
(それと、テスト相手の様子を説明しろ)
(了解っす。――えーっと、戦力は1個大隊、率いるのはチャイヴズ将軍です)
(ぬ? 大隊程度にチャイヴズ将軍が出張っているのか)
(そうなんっすよ。弓隊のキャッツフット隊長もいるんで、まあ、あの二人は常にセットのようなもんですしね)
(確かにな。仲良し老人コンビ)
老人コンビなどと言うと、可愛らしいイメージを浮かべてしまいそうだが、戦場では絶対相手にしたくないコンビだと、ザカリーは内心ゲッソリとした。
(全体の戦力は600人あまりっすね。前衛には騎馬兵を置いてますが、イノシシ軍隊の異名を持つサントリナ軍が相手ですから、恐らく中央突破してくるサントリナ軍を、騎馬隊は左右に分かれて誘い込み、魔法隊と弓隊で屠る作戦を取りそうっすね)
(読まれていても、実行してしまうのがサントリナ軍のイイところでもある)
(いや、全然よくねえっす…)
(冗談に決まっている)
(へぃ…)
(あの様子だと、ソープワート軍はいつでも戦闘開始出来そうだな。サントリナ軍が突っ込んでくるのを、待ち構えているのかな?)
(おそらくは。こちらで奇襲を仕掛けるんで、突っ込まないよう、カーティスがサントリナ軍の陣営に行って、話をつけていると思いやす)
(そうか。なら、キュッリッキのお手なみ拝見だな)
ククッと笑うベルトルドの念話の声を聞きながら、ザカリーはキュッリッキを見る。
愛らしい顔をソープワート軍に向け、キッと睨みつけている。細っそりとした小さな手をしっかりと握りしめ、攻撃開始の合図を待っていた。
レア中のレアと呼ばれる召喚スキル〈才能〉。果たしてどのような力なのか、それがもうすぐ披露されようとしていた。
思わず声に出して言ってしまい、怪訝そうな視線がチラホラ投げかけられる。ザカリーはヘラリと笑って、ドサッと座り込んであぐらをかいた。
(誰がオッサンだ、無礼者)
(す、すんませン…)
遠く離れたハワドウレ皇国から、念話を飛ばしてきたのはベルトルドだった。
(えっと…、オレになんか用っすか?)
ヘラリと応じ、愛想笑いを念に込める。
(これからキュッリッキの入団テストだろう、その中継にお前の目を借りる)
(あー、なるほど)
(どうせルーファスは、その場にいない他の連中に見せるために、中継をするんだろうからな。それに、お前の目を通した方が確実だ)
(ういっす)
ザカリーは戦闘の遠隔スキル〈才能〉を持つ。このスキル〈才能〉を持つ者は、非常識なほど視力が良い。1km先の小さなものも、鮮明に捉えることができるのだ。もちろん常にそんな状態では疲れてしまうので、望遠鏡のように視力はコントロール出来る。
現在地とソープワート軍の距離は、おおよそ400mほどになる。ザカリーにとって、造作もない距離だ。
(それと、テスト相手の様子を説明しろ)
(了解っす。――えーっと、戦力は1個大隊、率いるのはチャイヴズ将軍です)
(ぬ? 大隊程度にチャイヴズ将軍が出張っているのか)
(そうなんっすよ。弓隊のキャッツフット隊長もいるんで、まあ、あの二人は常にセットのようなもんですしね)
(確かにな。仲良し老人コンビ)
老人コンビなどと言うと、可愛らしいイメージを浮かべてしまいそうだが、戦場では絶対相手にしたくないコンビだと、ザカリーは内心ゲッソリとした。
(全体の戦力は600人あまりっすね。前衛には騎馬兵を置いてますが、イノシシ軍隊の異名を持つサントリナ軍が相手ですから、恐らく中央突破してくるサントリナ軍を、騎馬隊は左右に分かれて誘い込み、魔法隊と弓隊で屠る作戦を取りそうっすね)
(読まれていても、実行してしまうのがサントリナ軍のイイところでもある)
(いや、全然よくねえっす…)
(冗談に決まっている)
(へぃ…)
(あの様子だと、ソープワート軍はいつでも戦闘開始出来そうだな。サントリナ軍が突っ込んでくるのを、待ち構えているのかな?)
(おそらくは。こちらで奇襲を仕掛けるんで、突っ込まないよう、カーティスがサントリナ軍の陣営に行って、話をつけていると思いやす)
(そうか。なら、キュッリッキのお手なみ拝見だな)
ククッと笑うベルトルドの念話の声を聞きながら、ザカリーはキュッリッキを見る。
愛らしい顔をソープワート軍に向け、キッと睨みつけている。細っそりとした小さな手をしっかりと握りしめ、攻撃開始の合図を待っていた。
レア中のレアと呼ばれる召喚スキル〈才能〉。果たしてどのような力なのか、それがもうすぐ披露されようとしていた。
1
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】
小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。
これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。
失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。
無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。
『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。
そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる