19 / 882
ライオン傭兵団編
episode16
しおりを挟む
「ふーん…。で、アタシはどうすればいいの?」
戦争の経緯や依頼国の状況など、正直どうでもいいので、キュッリッキは先を促した。知ったところでやることは変わらないからだ。
「両軍とも国境沿いの谷間に移動して、明日の正午辺りに戦端が開かれる予定だそうです。それまでに移動して、私たち4人で奇襲をかける計画でした。でも、この奇襲を、あなた一人でやってもらいます」
「はぁああ~~?」
それまで黙って話を聞いていたザカリーが、素っ頓狂な声を上げた。
「おいカーティス、それは流石にナイだろ。恐らく一個大隊くらいの戦力を投入してくるぞ、チャイヴズのじーさんなら」
「だなあ。召喚スキル〈才能〉?ってぇもんが、どんなものか知らねえしな、一人でやらせんのは危ないだろう。オレらと一緒に攻撃なり支援なりをさせたほうがイイんじゃねえのか?」
「オレもそー思う。失敗したらシャレになんないよ?」
ザカリー、ギャリー、ルーファスの3人から反対されても、カーティスは顔色一つ変えず、キュッリッキをジッと見つめた。
「あのベルトルド卿が自信を持ってスカウトしてきた子です。どんな戦局でも、悠然と勝利を導くことが出来る力を持っているんでしょう」
カーティスの言葉を受けて、キュッリッキは内心呆れたように溜め息をついた。
これまで聞かされた話から推察するに、カーティスは単純にベルトルドに介入されるのが嫌なのだろう。それで、入団テストを意地になって実行しようとしている。キュッリッキを通り越して、背後のベルトルドに挑戦を叩きつけているようなものだ。
ちょうど仕事もなくなり、有名どころの傭兵団に入るチャンス。入団テストを蹴ってもライオン傭兵団にいることは出来るだろうが、仕事も与えられず、タダ飯喰らいの居候となり下がり、自然と居づらくなり出ていくことになりそうだ。
ならば、受けて立つまで。
確かな実力を備えるという老将軍率いる一個大隊を相手に、さて、どう仕掛けようかと、キュッリッキは思考を切り替えて、考え始めた。
キュッリッキの表情から察して、4人は顔を見合わせながら、にやりと笑んだ。
長蛇の列に並ぶこと1時間あまり、ようやく自分たちの番が来て、5人は台座に乗った。
エグザイル・システムとは、物質転送装置のことである。
半径1メートルほどの黒い石造りの台座に、短い銀の支柱のようなものが3本立っている。台座の中心には世界地図が彫り込まれていて、エグザイル・システムが置かれている各地を示す、突起のようなスイッチがある。行きたい場所のスイッチを踏めば、装置は起動して、目的地へ一瞬にして飛ばしてくれるのだ。
「サントリナ国の首都ルヤラへ、行きますよ」
カーティスはルヤラのスイッチを、つま先で踏んだ。
戦争の経緯や依頼国の状況など、正直どうでもいいので、キュッリッキは先を促した。知ったところでやることは変わらないからだ。
「両軍とも国境沿いの谷間に移動して、明日の正午辺りに戦端が開かれる予定だそうです。それまでに移動して、私たち4人で奇襲をかける計画でした。でも、この奇襲を、あなた一人でやってもらいます」
「はぁああ~~?」
それまで黙って話を聞いていたザカリーが、素っ頓狂な声を上げた。
「おいカーティス、それは流石にナイだろ。恐らく一個大隊くらいの戦力を投入してくるぞ、チャイヴズのじーさんなら」
「だなあ。召喚スキル〈才能〉?ってぇもんが、どんなものか知らねえしな、一人でやらせんのは危ないだろう。オレらと一緒に攻撃なり支援なりをさせたほうがイイんじゃねえのか?」
「オレもそー思う。失敗したらシャレになんないよ?」
ザカリー、ギャリー、ルーファスの3人から反対されても、カーティスは顔色一つ変えず、キュッリッキをジッと見つめた。
「あのベルトルド卿が自信を持ってスカウトしてきた子です。どんな戦局でも、悠然と勝利を導くことが出来る力を持っているんでしょう」
カーティスの言葉を受けて、キュッリッキは内心呆れたように溜め息をついた。
これまで聞かされた話から推察するに、カーティスは単純にベルトルドに介入されるのが嫌なのだろう。それで、入団テストを意地になって実行しようとしている。キュッリッキを通り越して、背後のベルトルドに挑戦を叩きつけているようなものだ。
ちょうど仕事もなくなり、有名どころの傭兵団に入るチャンス。入団テストを蹴ってもライオン傭兵団にいることは出来るだろうが、仕事も与えられず、タダ飯喰らいの居候となり下がり、自然と居づらくなり出ていくことになりそうだ。
ならば、受けて立つまで。
確かな実力を備えるという老将軍率いる一個大隊を相手に、さて、どう仕掛けようかと、キュッリッキは思考を切り替えて、考え始めた。
キュッリッキの表情から察して、4人は顔を見合わせながら、にやりと笑んだ。
長蛇の列に並ぶこと1時間あまり、ようやく自分たちの番が来て、5人は台座に乗った。
エグザイル・システムとは、物質転送装置のことである。
半径1メートルほどの黒い石造りの台座に、短い銀の支柱のようなものが3本立っている。台座の中心には世界地図が彫り込まれていて、エグザイル・システムが置かれている各地を示す、突起のようなスイッチがある。行きたい場所のスイッチを踏めば、装置は起動して、目的地へ一瞬にして飛ばしてくれるのだ。
「サントリナ国の首都ルヤラへ、行きますよ」
カーティスはルヤラのスイッチを、つま先で踏んだ。
1
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様の許嫁
衣更月
ファンタジー
信仰心の篤い町で育った久瀬一花は、思いがけずに神様の許嫁(仮)となった。
神様の名前は須久奈様と言い、古くから久瀬家に住んでいるお酒の神様だ。ただ、神様と聞いてイメージする神々しさは欠片もない。根暗で引きこもり。コミュニケーションが不得手ながらに、一花には無償の愛を注いでいる。
一花も須久奈様の愛情を重いと感じながら享受しつつ、畏敬の念を抱く。
ただ、1つだけ須久奈様の「目を見て話すな」という忠告に従えずにいる。どんなに頑張っても、長年染み付いた癖が直らないのだ。
神様を見る目を持つ一花は、その危うさを軽視し、トラブルばかりを引き当てて来る。
***
1部完結
2部より「幽世の理」とリンクします。
※「幽世の理」と同じ世界観です。

はじまりは初恋の終わりから~
秋吉美寿
ファンタジー
主人公イリューリアは、十二歳の誕生日に大好きだった初恋の人に「わたしに近づくな!おまえなんか、大嫌いだ!」と心無い事を言われ、すっかり自分に自信を無くしてしまう。
心に深い傷を負ったイリューリアはそれ以来、王子の顔もまともに見れなくなってしまった。
生まれながらに王家と公爵家のあいだ、内々に交わされていた婚約もその後のイリューリアの王子に怯える様子に心を痛めた王や公爵は、正式な婚約発表がなされる前に婚約をなかった事とした。
三年後、イリューリアは、見違えるほどに美しく成長し、本人の目立ちたくないという意思とは裏腹に、たちまち社交界の花として名を馳せてしまう。
そして、自分を振ったはずの王子や王弟の将軍がイリューリアを取りあい、イリューリアは戸惑いを隠せない。
「王子殿下は私の事が嫌いな筈なのに…」
「王弟殿下も、私のような冴えない娘にどうして?」
三年もの間、あらゆる努力で自分を磨いてきたにも関わらず自信を持てないイリューリアは自分の想いにすら自信をもてなくて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる