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ライオン傭兵団編
episode15
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エルダー街から歩くこと20分ほどの距離に、行政街との異名を持つクーシネン街がある。役所関係の建物が多く並び、図書館や公共病院、公共関連施設などが建つ。それでイララクスっ子はここを『行政街』と呼んでいた。
そしてクーシネン街には、もう一つ重要な施設がある。
「はあ~、今日も賑わってるな、エグザイル・システム」
「皇都唯一のエグザイル・システムですからねえ」
うんざりするようなザカリーの呟きに、カーティスが負けじとうんざり返した。
「順番を待ちながら、仕事についての説明をしましょうか」
広く方形に仕切られた敷地には、豪奢な宮殿のような建物が建っている。ここが、皇都イララクスにあるエグザイル・システムの建物だ。
ファサードは大きなアーチ状の入口があり、大理石の壁面を繊細な彫刻が彩り、所々黄金細工でより絢爛に飾られていた。
人々が多く出入りする中を突っ切るように建物の中に入ると、フロア正面には圧倒されるような大階段がずっと続いている。天井はドーム状に高く吹き抜け、ステンドグラスや壁画が描かれ内装も豪華だ。
三階建てになっていて、玄関フロアに面した各通路の端々には、休憩できるよう長椅子が置かれている。椅子に座り、談笑を楽しむ人々、疲れを癒す人々など、フロアはたくさんの人々で溢れかえっていた。
「いつきても、大賑わいだね」
「皇都の玄関口だしね。24時間大混雑さ」
キュッリッキの呟きを受けて、ルーファスが微苦笑気味に言った。器用に人を避けて歩いていても、誰かに当たってしまうほどの混みようなのだ。
5人は出入国手続きのカウンターに行き、各自傭兵ギルド発行の身分証明証を提示する。
傭兵ギルドに登録している傭兵たちには、ギルドから必ず発行されるものだ。掌サイズの小さなカードで、これがあると面倒な手続きが免除されたり、各支部で援助を受けることができる。また、仕事上のトラブルで国の機関に容疑をかけられたり、逮捕されたりすると、ギルドが仲裁に入ってくれるなど、傭兵たちにはなくてはならないものだった。無論、犯罪を犯せば取り上げられる。
「今回の仕事は、サントリナ国の軍上層部からの依頼です」
手続きを済ませた5人は、エグザイル・システム前に長蛇の列を作る最後尾に並んだ。
「サントリナ国のお隣には、ソープワートという国がありますが、長年ご近所トラブルが絶えず、今度もまた、しょーもない理由で戦端が開かれようとしています」
サントリナ国とソープワート国の仲の悪さは、キュッリッキもよく知っている。以前ちょっとした小競り合いに鉢合わせたことがあるのだ。
「互の国境沿いの一部で、ドンパチやらかすようで、我々には両軍が動く前に、ソープワートの軍隊を殲滅して欲しいというんです」
「うーん、なんで?」
キュッリッキは小さく首をひねった。互いにドンパチやりたいから、小さな喧嘩にもいちいち軍を投入するだろうに。そこへ、傭兵を雇って相手の軍を倒す意図が、いまいち見えてこない。
「理由は二つ。一つは不作による国庫への深刻な打撃。二つ目は、チャイヴズ将軍が出撃していることです」
「チャイヴズ将軍?」
「ソープワート国唯一の聡明な軍人と言われています。この方が出撃すると、サントリナ国は必ず負けるでしょう。そのくらい作戦も指揮も完璧なご老体です」
「そうなんだ…。でも、だったら戦争なんてやらなきゃいいのに。国が危ない時なんでしょ」
「そこはホラ、頑固ジジイたちの、ミヂンコみたいなプライドの成せる技ってやつさ」
肩をすくませながら、ルーファスが苦笑した。
そしてクーシネン街には、もう一つ重要な施設がある。
「はあ~、今日も賑わってるな、エグザイル・システム」
「皇都唯一のエグザイル・システムですからねえ」
うんざりするようなザカリーの呟きに、カーティスが負けじとうんざり返した。
「順番を待ちながら、仕事についての説明をしましょうか」
広く方形に仕切られた敷地には、豪奢な宮殿のような建物が建っている。ここが、皇都イララクスにあるエグザイル・システムの建物だ。
ファサードは大きなアーチ状の入口があり、大理石の壁面を繊細な彫刻が彩り、所々黄金細工でより絢爛に飾られていた。
人々が多く出入りする中を突っ切るように建物の中に入ると、フロア正面には圧倒されるような大階段がずっと続いている。天井はドーム状に高く吹き抜け、ステンドグラスや壁画が描かれ内装も豪華だ。
三階建てになっていて、玄関フロアに面した各通路の端々には、休憩できるよう長椅子が置かれている。椅子に座り、談笑を楽しむ人々、疲れを癒す人々など、フロアはたくさんの人々で溢れかえっていた。
「いつきても、大賑わいだね」
「皇都の玄関口だしね。24時間大混雑さ」
キュッリッキの呟きを受けて、ルーファスが微苦笑気味に言った。器用に人を避けて歩いていても、誰かに当たってしまうほどの混みようなのだ。
5人は出入国手続きのカウンターに行き、各自傭兵ギルド発行の身分証明証を提示する。
傭兵ギルドに登録している傭兵たちには、ギルドから必ず発行されるものだ。掌サイズの小さなカードで、これがあると面倒な手続きが免除されたり、各支部で援助を受けることができる。また、仕事上のトラブルで国の機関に容疑をかけられたり、逮捕されたりすると、ギルドが仲裁に入ってくれるなど、傭兵たちにはなくてはならないものだった。無論、犯罪を犯せば取り上げられる。
「今回の仕事は、サントリナ国の軍上層部からの依頼です」
手続きを済ませた5人は、エグザイル・システム前に長蛇の列を作る最後尾に並んだ。
「サントリナ国のお隣には、ソープワートという国がありますが、長年ご近所トラブルが絶えず、今度もまた、しょーもない理由で戦端が開かれようとしています」
サントリナ国とソープワート国の仲の悪さは、キュッリッキもよく知っている。以前ちょっとした小競り合いに鉢合わせたことがあるのだ。
「互の国境沿いの一部で、ドンパチやらかすようで、我々には両軍が動く前に、ソープワートの軍隊を殲滅して欲しいというんです」
「うーん、なんで?」
キュッリッキは小さく首をひねった。互いにドンパチやりたいから、小さな喧嘩にもいちいち軍を投入するだろうに。そこへ、傭兵を雇って相手の軍を倒す意図が、いまいち見えてこない。
「理由は二つ。一つは不作による国庫への深刻な打撃。二つ目は、チャイヴズ将軍が出撃していることです」
「チャイヴズ将軍?」
「ソープワート国唯一の聡明な軍人と言われています。この方が出撃すると、サントリナ国は必ず負けるでしょう。そのくらい作戦も指揮も完璧なご老体です」
「そうなんだ…。でも、だったら戦争なんてやらなきゃいいのに。国が危ない時なんでしょ」
「そこはホラ、頑固ジジイたちの、ミヂンコみたいなプライドの成せる技ってやつさ」
肩をすくませながら、ルーファスが苦笑した。
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