片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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ライオン傭兵団編

episode13

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「御大帰ったのか?」

 ベルトルドが消えて少しすると、荷物を抱えた3人の男が、ガヤガヤと階段を降りてきた。

「ええ、今しがた。お土産を一人置いて」

「土産?」

 タバコを咥えた無精ひげの男が、ぬっと顔を突き出しキュッリッキを見おろす。

「こりゃまた美少女だな、新規採用のメイドか?」

「違いますよ」

「おっ! スゲー美少女じゃんか。名前なんて言うんだい?」

 赤毛の男が横から顔を突き出してきた。

「……キュッリッキよ」

 身をすくめながら、キュッリッキは困ったように顎を引いて上目遣いになる。

「彼女はベルトルド卿がスカウトしてきた、召喚スキル〈才能〉を持つ傭兵です」

「召喚スキル〈才能〉だとぅ!?」

「マジかよ」

 改めてマジマジと見つめられて、キュッリッキは肩をすくめた。

「私も仕事着に着替えてきます。ルーファス、彼女を空いてる部屋に案内してあげてください」

「おっけーい」

「そこで、仕事着に着替えてきちゃってください。今から仕事に行きますよ」

「あ、はい」

 一瞬、仕事着なんてない、と言いそうになって、慌てて返事のみをする。仕事着に使ってと、ひと揃の服をもらっていたことを思い出したのだ。

 カーティスが廊下の奥へ消えると、金髪の男が柔らかな笑顔でキュッリッキの前に出た。

「キュッリッキちゃん、かな。キミの使う部屋に案内するね」

「はい」

「オレはルーファス。こっちのむさっ苦しいのがギャリー、こっちの赤毛はザカリーって言うんだ。さっきのカーティスとキミと合わせて5人で仕事に向かうから、ヨロシク」

 恐る恐るといった様子で、キュッリッキはギャリーとザカリーに、ぺこっと会釈をした。

「こっちだよ、おいで」

「う、うん」

 ルーファスは小さなリュックをザカリーに預けると、スタスタと階段へ向かう。その後ろをキュッリッキは小走りに追いかけた。



「ウチのアジトは元は宿屋だったのを買い取って、改装して使ってるんだ。だから、各自個室がちゃんとあるんだよ、ちょっと狭いけど」

「へえ…」

「他所の傭兵団とかだと、個室なんてナイのがアタリマエで、雑魚寝が普通とかなんとからしいでしょ。少数精鋭だから出来る贅沢ってやつだね~」

「うん」

「まあ、心配しなくても大丈夫だよ」

 ルーファスは立ち止まると、後ろを歩くキュッリッキを肩ごしに振り向いて、にっこりと笑った。

「ベルトルド様が入れろ、と言ったんだったら、もうキミは入団決定だから」

「そう、なんだ…」

「ウチの後ろ盾の命令だから、カーティスでも逆らえないし。でも、オレたちの仲間になるためには、入団テスト頑張らないとね」

 己の腕一つで身を立てる、それが傭兵だ。どんなスキル〈才能〉を持っていようと、戦力になるのだと、示さなくてはならない。

「うん、判ってる」
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