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ライオン傭兵団編
episode09
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どこの停車場にも停ることがなかった乗合馬車が、ゆるりと停まった。
「閣下、エルダー街に着きました」
御者が肩ごしに、恭しく告げる。
「そうか、もう着いたか」
失神するキュッリッキを左腕に抱えながら、ベルトルドは頷いた。
「お嬢様は、その……大丈夫ですか?」
困惑げに言う御者に、ベルトルドはにんまりと笑う。
「初めてのことに衝撃を受けて、ちょっと意識を失っているだけだ。問題ない」
額にキスをしただけで失神してしまったキュッリッキを愛おしく見つめながら、赤みの残る頬に、そっとキスをした。
(唇にもキスしたいなあ…)
無防備に半開きになる口を見つめ、そう思いながらも、必死に己を自制する。
さすがに額にキスをしただけで、失神するのは予想外ではあった。それだけウブで純粋なのだと思うと、いっそう愛おしさで胸が締め付けられる。
「とはいえ、失神したままの姿で、あいつらに会わせるわけにはいかないな」
このままにしておきたいと思いつつ小さく苦笑すると、サイ《超能力》を使ってキュッリッキの意識を揺さぶった。すると、ほどなくしてキュッリッキは瞼を震わせ、ゆっくりと目を開いた。
「ん……わっ、キャッ」
ベルトルドの顔がアップで飛び込んできて、吃驚したキュッリッキは悲鳴を上げた。ビクッと身体を動かした拍子に、頭がベルトルドの額とぶつかってしまう。
「いでっ」
容赦ない頭突きに、ベルトルドは思わず目を瞑った。
「ごっ、ごめんなさいっ!」
「い、いや…平気だ」
軽く頭を振って、ベルトルドはにっこりとキュッリッキに笑いかけた。
「エルダー街に着いたよ。立てるかな?」
「あ、はい」
いつの間に着いたんだろう? と表情に書き込んで、キュッリッキは立ち上がった。
「本物の御者のポケットにでも、入れておいてやれ」
ベルトルドは御者に金貨5枚を手渡す。
「御意」
御者は両手で金貨を受け取った。
「乗合馬車は銅貨3枚で良いんだよ?」
ギョッとしながら、キュッリッキはベルトルドを見上げた。金貨は銅貨1万枚ぶんに当たる。
「ははっ、良いんだよ。本物の御者には、ちょっと眠ってもらっているから」
「え?」
キュッリッキは御者を見る。初老に差し掛かったばかりの御者は、優しくキュッリッキに笑いかけた。
「お気をつけて」
「さあ、アジトへ行こうか」
再びキュッリッキの手を優しくとり、二人は馬車を降りた。
「閣下、エルダー街に着きました」
御者が肩ごしに、恭しく告げる。
「そうか、もう着いたか」
失神するキュッリッキを左腕に抱えながら、ベルトルドは頷いた。
「お嬢様は、その……大丈夫ですか?」
困惑げに言う御者に、ベルトルドはにんまりと笑う。
「初めてのことに衝撃を受けて、ちょっと意識を失っているだけだ。問題ない」
額にキスをしただけで失神してしまったキュッリッキを愛おしく見つめながら、赤みの残る頬に、そっとキスをした。
(唇にもキスしたいなあ…)
無防備に半開きになる口を見つめ、そう思いながらも、必死に己を自制する。
さすがに額にキスをしただけで、失神するのは予想外ではあった。それだけウブで純粋なのだと思うと、いっそう愛おしさで胸が締め付けられる。
「とはいえ、失神したままの姿で、あいつらに会わせるわけにはいかないな」
このままにしておきたいと思いつつ小さく苦笑すると、サイ《超能力》を使ってキュッリッキの意識を揺さぶった。すると、ほどなくしてキュッリッキは瞼を震わせ、ゆっくりと目を開いた。
「ん……わっ、キャッ」
ベルトルドの顔がアップで飛び込んできて、吃驚したキュッリッキは悲鳴を上げた。ビクッと身体を動かした拍子に、頭がベルトルドの額とぶつかってしまう。
「いでっ」
容赦ない頭突きに、ベルトルドは思わず目を瞑った。
「ごっ、ごめんなさいっ!」
「い、いや…平気だ」
軽く頭を振って、ベルトルドはにっこりとキュッリッキに笑いかけた。
「エルダー街に着いたよ。立てるかな?」
「あ、はい」
いつの間に着いたんだろう? と表情に書き込んで、キュッリッキは立ち上がった。
「本物の御者のポケットにでも、入れておいてやれ」
ベルトルドは御者に金貨5枚を手渡す。
「御意」
御者は両手で金貨を受け取った。
「乗合馬車は銅貨3枚で良いんだよ?」
ギョッとしながら、キュッリッキはベルトルドを見上げた。金貨は銅貨1万枚ぶんに当たる。
「ははっ、良いんだよ。本物の御者には、ちょっと眠ってもらっているから」
「え?」
キュッリッキは御者を見る。初老に差し掛かったばかりの御者は、優しくキュッリッキに笑いかけた。
「お気をつけて」
「さあ、アジトへ行こうか」
再びキュッリッキの手を優しくとり、二人は馬車を降りた。
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