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番外編・3
人魚姫と王子様(?)・2
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それに気づいて、マルユッカは覗き込むように身を乗り出した。
男は切れ長の目をゆっくりと瞬かせて、そして目の前のマルユッカを見る。
海のような透明な青い瞳にまっすぐ見つめられて、マルユッカは恥ずかしげに少し顔を俯かせた。
「岩の上で寝たから、背中がモーレツに痛いじゃないか!!」
いきなり男は怒鳴ると、フンッと力んで上体をガバッと起こした。
「寝るなら浜辺にしとくんだったなー! 年寄りじゃあるまいし、なんて背中が痛いんだっ!!」
長い腕を背中に回し、大きな掌でゆっくりと背中を摩る。マルユッカはその様子を唖然とみやった。
「ん?」
男はそこで初めてマルユッカの存在に気づいて首を傾げた。
「なんだオマエ?」
ふわふわとした栗毛の髪は肩にかかるくらいで、クリクリとした大きな目には、スミレ色の瞳がはめ込まれ、あどけない顔はとても愛らしかった。
見たところまだ少女のようだったが、恥ずかしげもなく白昼のもとに晒されているお椀型の小さな膨らみの乳房には、それを覆い隠す衣服も下着もつけていない。
「ピンク色の乳首!!」
マルユッカは何を言われたか一瞬ピンッとこなかったが、男の視線が胸を見つめていることに気づいて、慌てて両手で顔を隠した。
「隠すんだったらオッパイじゃないのか……」
マルユッカのズレた反応に、男のほうが逆に困ってしまった。
「なあ、ここドコなんだ? 俺様が迷子になるとは思いたくないが、きっと迷子になっちまったようだ!」
少しも困っていないような尊大な言い方に、マルユッカは覆った手の指の隙間から男を覗いて、小さな声を上げた。
「ソーダヴェッタの珊瑚礁よ」
「ソーダヴェッタ? …………ああ、魚人の国があるところか」
「魚人じゃなくて、人魚」
「どっちもおんなじだ!!」
有無を言わせない圧倒的な断言に、マルユッカは軽いめまいを覚えた。
(な、なんだろうこの人……顔は綺麗なのに、なんだかヘン)
顔はいつまでも見ていたいほど綺麗なのに、お願いだから口を開かないで! と願わずにはいられないインパクトがありすぎた。
マルユッカが頭の中をグルグルさせていると、男は岩の上にあぐらをかいて、片手を頬に添えて肘を付いた。
「俺様は魚人を見たことがないんだ~。なーなー、脚の部分が魚ってホントなのか?」
「魚人じゃなくて、人魚よ」
マルユッカは訂正しながらも、両手で岩を掴んで下肢を海面に浮き上がらせた。
「おおー! ホントに魚だあ」
なんだか嬉しそうに男は両手を叩く。だがすぐに顔から笑みが消えて、考え込むように真剣になった。
「男も女もおんなじ脚なのか?」
「ええ、そうよ」
すると、ますます眉間に皺が寄った。
何かおかしなことでも言ったかしら? そう思っていると、男は腕を組んで「ううん」と唸りだした。
「オマエたちどうやってセックスするんだ?」
男は切れ長の目をゆっくりと瞬かせて、そして目の前のマルユッカを見る。
海のような透明な青い瞳にまっすぐ見つめられて、マルユッカは恥ずかしげに少し顔を俯かせた。
「岩の上で寝たから、背中がモーレツに痛いじゃないか!!」
いきなり男は怒鳴ると、フンッと力んで上体をガバッと起こした。
「寝るなら浜辺にしとくんだったなー! 年寄りじゃあるまいし、なんて背中が痛いんだっ!!」
長い腕を背中に回し、大きな掌でゆっくりと背中を摩る。マルユッカはその様子を唖然とみやった。
「ん?」
男はそこで初めてマルユッカの存在に気づいて首を傾げた。
「なんだオマエ?」
ふわふわとした栗毛の髪は肩にかかるくらいで、クリクリとした大きな目には、スミレ色の瞳がはめ込まれ、あどけない顔はとても愛らしかった。
見たところまだ少女のようだったが、恥ずかしげもなく白昼のもとに晒されているお椀型の小さな膨らみの乳房には、それを覆い隠す衣服も下着もつけていない。
「ピンク色の乳首!!」
マルユッカは何を言われたか一瞬ピンッとこなかったが、男の視線が胸を見つめていることに気づいて、慌てて両手で顔を隠した。
「隠すんだったらオッパイじゃないのか……」
マルユッカのズレた反応に、男のほうが逆に困ってしまった。
「なあ、ここドコなんだ? 俺様が迷子になるとは思いたくないが、きっと迷子になっちまったようだ!」
少しも困っていないような尊大な言い方に、マルユッカは覆った手の指の隙間から男を覗いて、小さな声を上げた。
「ソーダヴェッタの珊瑚礁よ」
「ソーダヴェッタ? …………ああ、魚人の国があるところか」
「魚人じゃなくて、人魚」
「どっちもおんなじだ!!」
有無を言わせない圧倒的な断言に、マルユッカは軽いめまいを覚えた。
(な、なんだろうこの人……顔は綺麗なのに、なんだかヘン)
顔はいつまでも見ていたいほど綺麗なのに、お願いだから口を開かないで! と願わずにはいられないインパクトがありすぎた。
マルユッカが頭の中をグルグルさせていると、男は岩の上にあぐらをかいて、片手を頬に添えて肘を付いた。
「俺様は魚人を見たことがないんだ~。なーなー、脚の部分が魚ってホントなのか?」
「魚人じゃなくて、人魚よ」
マルユッカは訂正しながらも、両手で岩を掴んで下肢を海面に浮き上がらせた。
「おおー! ホントに魚だあ」
なんだか嬉しそうに男は両手を叩く。だがすぐに顔から笑みが消えて、考え込むように真剣になった。
「男も女もおんなじ脚なのか?」
「ええ、そうよ」
すると、ますます眉間に皺が寄った。
何かおかしなことでも言ったかしら? そう思っていると、男は腕を組んで「ううん」と唸りだした。
「オマエたちどうやってセックスするんだ?」
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