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最終章 永遠の翼
episode785
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太陽が西に沈みかけている頃、焼け野原と化したイララクスの街中で指揮を執っていたリュリュは、パウリ少佐から念話で連絡を受けると、馬車に飛び乗ってハーメンリンナにとって戻り、ケレヴィル本部へ駆け込んだ。
「無事戻ってきたのね!?」
バアンッと応接室の扉を蹴飛ばすようにして開けながら、リュリュは勢い込んで叫んだ。
室内に飛び込むと、疲労感を漂わせるライオン傭兵団が出迎えてくれた。
「ああ、良かったわぁ。あーたたち、生きて戻ってくれたのね」
「はい、ええ……はあ、まあ…」
椅子に座っていたカーティスが、立ち上がりながら戸惑ったように返事をする。
「なぁーによ、歯切れ悪すぎるわよカーティス」
「いえ、その……」
「リュリュ」
開けっ放しの扉を更に開いて、シ・アティウスが入ってきた。
「ベルたちは、どこなの?」
落ち着いた様子のリュリュに問われ、シ・アティウスはメガネを押し上げながら顎をしゃくる。
「別室に安置してある。こっちだ」
「ンもう、何満足そうな顔しちゃって、ベルったら」
遺体を保存する専用のビニール袋のファスナーを引き下げ、物言わぬ姿となったベルトルドを見おろし、リュリュは苦笑いを浮かべる。
「オフィスにいる」
「判ったわ」
部屋を出ていくシ・アティウスを見送らず、リュリュはベルトルドの顔をじっと見つめていた。
ベルトルドとアルカネットの遺体を安置しているこの部屋は、ケレヴィル本部へくると、彼らと休憩に使っていた部屋だ。
感傷に浸るほど使用していたわけではないが、ここで過ごしたちょっとした思い出が、何故だかいくつも胸をよぎっていく。
「あのエロメガネ、柄にもない気を回してくれちゃって…」
リュリュはもうひとつの、ビニール袋のファスナーを下ろす。
「アルは無様な死に方をしたようね…。こんな表情で死ぬなんて、ご両親が見たらガッカリするわよ」
二人の遺体の間のスペースに椅子を持ってくると、リュリュはすとんっと腰を下ろした。
「さあ、お説教の時間よ」
そう言って、深々とため息をついた。
「復讐なんて止めなさいって、アタシ何度も言ったのに、言うこと聞かないあーた達が悪いのよ」
31年も言ってきたのに、と、リュリュは肩をすくめる。
胸の奥から、様々な記憶と想いが、ゆっくりと波のように打ち上げられていく。貝殻を拾うように、リュリュは思い出を一つ、一つ、掌に拾い上げる。
「おねえちゃんが生きてた頃は、アタシたち小さなガキんちょだった。でも今は、すっかりオッサンになっちゃって。あーた達はアイオン族だから老化が遅くっていいだろうけど、ヴィプネン族のアタシは、毎日毎日厚化粧がタイヘンなのよ」
もう、これ以上老いることがなくなってしまった二人。美しいままを保っている。
「まあ、昔からナントナク、あーた達には老いるっていうイメージがわかなかったのよね。ヨボヨボになるのはアタシだけってね……。それが現実のものになっちゃって、ずるいわ」
リュリュは肩を落とし、うなだれた。
「化粧ポーチ忘れてきちゃったから、泣くに泣けないンダケド、でも、我慢できそうもないから泣いちゃう。泣いたあとのケアもできないんて、オカマ廃業かしらネ」
そう言って、リュリュは肩を震わせると、両手で顔を覆った。
「無事戻ってきたのね!?」
バアンッと応接室の扉を蹴飛ばすようにして開けながら、リュリュは勢い込んで叫んだ。
室内に飛び込むと、疲労感を漂わせるライオン傭兵団が出迎えてくれた。
「ああ、良かったわぁ。あーたたち、生きて戻ってくれたのね」
「はい、ええ……はあ、まあ…」
椅子に座っていたカーティスが、立ち上がりながら戸惑ったように返事をする。
「なぁーによ、歯切れ悪すぎるわよカーティス」
「いえ、その……」
「リュリュ」
開けっ放しの扉を更に開いて、シ・アティウスが入ってきた。
「ベルたちは、どこなの?」
落ち着いた様子のリュリュに問われ、シ・アティウスはメガネを押し上げながら顎をしゃくる。
「別室に安置してある。こっちだ」
「ンもう、何満足そうな顔しちゃって、ベルったら」
遺体を保存する専用のビニール袋のファスナーを引き下げ、物言わぬ姿となったベルトルドを見おろし、リュリュは苦笑いを浮かべる。
「オフィスにいる」
「判ったわ」
部屋を出ていくシ・アティウスを見送らず、リュリュはベルトルドの顔をじっと見つめていた。
ベルトルドとアルカネットの遺体を安置しているこの部屋は、ケレヴィル本部へくると、彼らと休憩に使っていた部屋だ。
感傷に浸るほど使用していたわけではないが、ここで過ごしたちょっとした思い出が、何故だかいくつも胸をよぎっていく。
「あのエロメガネ、柄にもない気を回してくれちゃって…」
リュリュはもうひとつの、ビニール袋のファスナーを下ろす。
「アルは無様な死に方をしたようね…。こんな表情で死ぬなんて、ご両親が見たらガッカリするわよ」
二人の遺体の間のスペースに椅子を持ってくると、リュリュはすとんっと腰を下ろした。
「さあ、お説教の時間よ」
そう言って、深々とため息をついた。
「復讐なんて止めなさいって、アタシ何度も言ったのに、言うこと聞かないあーた達が悪いのよ」
31年も言ってきたのに、と、リュリュは肩をすくめる。
胸の奥から、様々な記憶と想いが、ゆっくりと波のように打ち上げられていく。貝殻を拾うように、リュリュは思い出を一つ、一つ、掌に拾い上げる。
「おねえちゃんが生きてた頃は、アタシたち小さなガキんちょだった。でも今は、すっかりオッサンになっちゃって。あーた達はアイオン族だから老化が遅くっていいだろうけど、ヴィプネン族のアタシは、毎日毎日厚化粧がタイヘンなのよ」
もう、これ以上老いることがなくなってしまった二人。美しいままを保っている。
「まあ、昔からナントナク、あーた達には老いるっていうイメージがわかなかったのよね。ヨボヨボになるのはアタシだけってね……。それが現実のものになっちゃって、ずるいわ」
リュリュは肩を落とし、うなだれた。
「化粧ポーチ忘れてきちゃったから、泣くに泣けないンダケド、でも、我慢できそうもないから泣いちゃう。泣いたあとのケアもできないんて、オカマ廃業かしらネ」
そう言って、リュリュは肩を震わせると、両手で顔を覆った。
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