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フリングホルニ編
episode770
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――アルケラの巫女を殺しなさい。
何度も何度も、繰り返し頭の中に木霊するその声に突き動かされるように、ドラゴンはゆっくりとした動作で前に脚を踏み込んだ。
ありえないほど広い部屋の中に、激しい振動が響き渡る。
ドラゴンの瞳には、金髪の少女の姿しか映し出されていなかった。
あの少女が、殺すべきターゲット。
ドラゴンは深く息を吸い込むと、少女めがけて息を吹きだした。
「防御張れ!!」
ギャリーが怒鳴る前に、ルーファス、マリオン、カーティス、シビルの4人が、仲間たちの前に防御結界を展開する。
室内に飛び散るほどのドラゴンの息は、雷そのものだった。
「サラマブレスか…」
生唾を飲み込みながら、ランドンが呟いた。
「御大らしいな……ったく」
ブレス攻撃が止むと、ギャリーたちは身構えた。
「いくぜみん…」
叫ぶように号令をかけようとした瞬間、ギャリーは一瞬硬直し、そして片膝をついた。
「ギャリー?」
驚いたキュッリッキは、ギャリーのそばに駆け寄ってしゃがみこむ。
「ねえ、どうしたの」
覗き込んだギャリーの顔には、大量の汗が噴き出し、見るからに青ざめていた。そしてそれは、ガエル、ルーファス、カーティス、ハーマンも一緒だった。
「くっ…そっ……こりゃ薬がきれたな……」
荒く息を吐き出しながら、ギャリーは堪りかねて前に倒れ込んでしまった。
「ヤダ、ギャリー、ギャリー!」
キュッリッキは半泣き状態で、ギャリーの背中を揺さぶった。しかし、その手をメルヴィンが優しく掴んで止めると、見上げてくるキュッリッキに、首を横に振った。
「大丈夫だよキューリ、ヴィヒトリの薬の副作用が出ただけだから」
「薬?」
ランドンは反対側にしゃがみこむと、ギャリーの顔を自分の方へと向けなおす。
「戦う相手があの二人だから、ちょっと強烈なドーピング薬をヴィヒトリに作ってもらったんだ。薬の効果がきれたらこうなるって、あらかじめ言われてたしね。死にはしないけど、無理した反動が一気にくるから、こんな状態になっちゃうんだ。――ほらギャリー、これ飲んで」
ランドンは一粒の小さな丸薬を、ギャリーの口の中に含ませた。
「即効性の中和剤。歩けるくらいには回復できるらしいから、暫く床ペロしといて」
「ほい……」
全身で溜息を吐き出すと、ギャリーは目を閉じた。
「なんだおめーら、ナサケねーな!!」
ヴァルトに居丈高に言われても、ギャリーたちには、もはやツッコミ返す気力はなかった。
「死なないんだったら、安心してこれ飲めるな。中和剤もあるっていうし」
「そうですね。薬の効果が効いている間に倒せば、問題ありません」
タルコットとメルヴィンが薬を掌に広げたとき、キュッリッキはメルヴィンの掌を、力いっぱい叩きつけた。その拍子に、薬は手から飛んで、床に転々と転がっていく。
「リッキー、なにをするんですか!?」
メルヴィンはびっくりして、キュッリッキの顔を見つめた。タルコットもギョッとして目を見張る。
キュッリッキはこれでもかと両方の頬を膨らませ、目に涙を浮かべて、床を凝視していた。
「リッキー……?」
ただならぬキュッリッキの様子に、メルヴィンは困惑の表情を浮かべる。
ドレスをギュッと掴み、キュッリッキは大きくしゃくり上げた。
「こんなこ…ヒッ…と…されても嬉しヒッ…くないもん!!」
しゃくりながら怒鳴る。それにはみんな、ポカンと口を開けて見つめた。ドラゴンのほうも、ブレス攻撃が阻止されたことで、様子を伺うように動きを止めている。
「なんでアタシなんかのために、みんな辛い思いをしてまで頑張っちゃうのか判んないんだもん…ヒッ…く……そんなことしてたら死んじゃうんだから…」
何度も何度も、繰り返し頭の中に木霊するその声に突き動かされるように、ドラゴンはゆっくりとした動作で前に脚を踏み込んだ。
ありえないほど広い部屋の中に、激しい振動が響き渡る。
ドラゴンの瞳には、金髪の少女の姿しか映し出されていなかった。
あの少女が、殺すべきターゲット。
ドラゴンは深く息を吸い込むと、少女めがけて息を吹きだした。
「防御張れ!!」
ギャリーが怒鳴る前に、ルーファス、マリオン、カーティス、シビルの4人が、仲間たちの前に防御結界を展開する。
室内に飛び散るほどのドラゴンの息は、雷そのものだった。
「サラマブレスか…」
生唾を飲み込みながら、ランドンが呟いた。
「御大らしいな……ったく」
ブレス攻撃が止むと、ギャリーたちは身構えた。
「いくぜみん…」
叫ぶように号令をかけようとした瞬間、ギャリーは一瞬硬直し、そして片膝をついた。
「ギャリー?」
驚いたキュッリッキは、ギャリーのそばに駆け寄ってしゃがみこむ。
「ねえ、どうしたの」
覗き込んだギャリーの顔には、大量の汗が噴き出し、見るからに青ざめていた。そしてそれは、ガエル、ルーファス、カーティス、ハーマンも一緒だった。
「くっ…そっ……こりゃ薬がきれたな……」
荒く息を吐き出しながら、ギャリーは堪りかねて前に倒れ込んでしまった。
「ヤダ、ギャリー、ギャリー!」
キュッリッキは半泣き状態で、ギャリーの背中を揺さぶった。しかし、その手をメルヴィンが優しく掴んで止めると、見上げてくるキュッリッキに、首を横に振った。
「大丈夫だよキューリ、ヴィヒトリの薬の副作用が出ただけだから」
「薬?」
ランドンは反対側にしゃがみこむと、ギャリーの顔を自分の方へと向けなおす。
「戦う相手があの二人だから、ちょっと強烈なドーピング薬をヴィヒトリに作ってもらったんだ。薬の効果がきれたらこうなるって、あらかじめ言われてたしね。死にはしないけど、無理した反動が一気にくるから、こんな状態になっちゃうんだ。――ほらギャリー、これ飲んで」
ランドンは一粒の小さな丸薬を、ギャリーの口の中に含ませた。
「即効性の中和剤。歩けるくらいには回復できるらしいから、暫く床ペロしといて」
「ほい……」
全身で溜息を吐き出すと、ギャリーは目を閉じた。
「なんだおめーら、ナサケねーな!!」
ヴァルトに居丈高に言われても、ギャリーたちには、もはやツッコミ返す気力はなかった。
「死なないんだったら、安心してこれ飲めるな。中和剤もあるっていうし」
「そうですね。薬の効果が効いている間に倒せば、問題ありません」
タルコットとメルヴィンが薬を掌に広げたとき、キュッリッキはメルヴィンの掌を、力いっぱい叩きつけた。その拍子に、薬は手から飛んで、床に転々と転がっていく。
「リッキー、なにをするんですか!?」
メルヴィンはびっくりして、キュッリッキの顔を見つめた。タルコットもギョッとして目を見張る。
キュッリッキはこれでもかと両方の頬を膨らませ、目に涙を浮かべて、床を凝視していた。
「リッキー……?」
ただならぬキュッリッキの様子に、メルヴィンは困惑の表情を浮かべる。
ドレスをギュッと掴み、キュッリッキは大きくしゃくり上げた。
「こんなこ…ヒッ…と…されても嬉しヒッ…くないもん!!」
しゃくりながら怒鳴る。それにはみんな、ポカンと口を開けて見つめた。ドラゴンのほうも、ブレス攻撃が阻止されたことで、様子を伺うように動きを止めている。
「なんでアタシなんかのために、みんな辛い思いをしてまで頑張っちゃうのか判んないんだもん…ヒッ…く……そんなことしてたら死んじゃうんだから…」
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