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フリングホルニ編
episode767
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空間転移を応用して、剣を召喚してきているわけではなく、魔力で生み出されていた無数の剣。サイ《超能力》で新たな物質を生み出すことはできないが、魔力ではそれが可能だ。
「つまり、アレか? 二人共魔法とサイ《超能力》のダブルスキル〈才能〉保持者だった、てことか…?」
「そういうことですね」
ギャリーに深く頷き、シ・アティウスはドラゴンに目を向け、アルカネットの遺体にも目を向ける。
「二人のあの翼、漆黒の色をしているでしょう。あれは紛れもなく、アウリスの血によるものです」
アイオン族の始祖の名を、アウリス・ラッセ・フルメヴァーラという。
イルマタル帝国を治めるフルメヴァーラ家は、アイオン族の始祖アウリス皇帝の直径の血筋らしい。現在ヴィプネン族の統一国家を治めるハワドウレ家と違い、フルメヴァーラ家は1万年以上の遥か昔から続くと言われている。
「アイオン族の始祖アウリスは、神と人間の混血により誕生したと言われています。アイオン族は白い翼を基本としますが、アウリスに流れる神の血の影響により、アウリス自身は漆黒の翼だったそうです。そのため、暫くはフルメヴァーラ家でも稀に、漆黒の翼を授かる者も生まれてきました。アウリスの血が濃く継がれたと、尊ばれる象徴でもあったと」
「御大とアルカネットは、そのフルメヴァーラ家の血を引いてる、てことか?」
リュリュから聞かされた話では、思いっきり庶民の家の出だった気が、とギャリーは首をひねる。
「アウリスは末永く、イルマタル帝国が自らの血を引く者で治められることを願い、フルメヴァーラ家に、ある儀式を義務付けました。今後、帝位に就く者は、必ず自分の裁定を受けなければならない、というものでした」
新たに帝位に就くとき、必ずアウリスを死後の世界から呼び戻し、その者が正しくアウリスの血を継いでいるかを、アウリス自身が見定める。帝位交代の度に、その儀式は行われていく。
「しかしその儀式を疎ましく思う者が現れ、アウリスを蘇らせる儀式に邪魔が入りました。それでもどうにかクーデターをおさめ、正しき血を継ぐ者が帝位に就きましたが、その時をもって儀式はなくなり、蘇ったアウリスはイルマタル帝国から消え、惑星ヒイシに降り立ったといいます。そこでアイオン族の女との間に子を成し、その血がベルトルドとアルカネットに受け継がれたわけです」
「……よく、そんなに詳しいことを知っているんですね……」
カーティスにぽつりと言われ、シ・アティウスは僅かに得意げな笑みを浮かべた。
「あの二人の化物じみた力のルーツを、ずっと探っていたんです。かなり遠いご先祖が、共通なのですよ、あの二人の母親は。隔世遺伝というやつですね。ベルトルドもアルカネットも、元はそれぞれサイ《超能力》と魔法スキル〈才能〉のみだったのでしょうが、リューディアの死をきっかけに、潜在的に眠っていたもう一つのスキル〈才能〉が覚醒したのかもしれません。本来スキル〈才能〉は遺伝しないものですがね」
シ・アティウスの話を聞いて、キュッリッキは小さなため息をつく。
もしも、二人が人外の力を持って生まれてこなければ、そんな先祖を持たなければ、リューディアを目の前で失ったとしても、今のような状況には、ならなかったかもしれない。あれほど強力な力を持ってしまったばっかりに、神へ復讐するなどと、決意させてしまったのだ。
そんなことを今更思っても、詮無いことだが。
ドラゴンとなったベルトルドは、ずっと咆哮を続けていた。
苦しみ悲しんでいる、とキュッリッキには伝わっている。アルカネットを失い、激しい悲しみの中、ああして咆えるしか術がないのだと言わんばかりに。
神々と幻想の住人たちの住む世界アルケラには、ドラゴンは当たり前に存在している。しかしこちらの人間世界では、伝説上の化物だ。
ユリディスの呪いを解いて、元の姿に戻さなければ。いつまでも、あんな姿のままにしておくわけにはいかない。
悲しみの連鎖を終わらせる。
キュッリッキは厳しい眼差しを、ベルトルドにひたと向けた。
「つまり、アレか? 二人共魔法とサイ《超能力》のダブルスキル〈才能〉保持者だった、てことか…?」
「そういうことですね」
ギャリーに深く頷き、シ・アティウスはドラゴンに目を向け、アルカネットの遺体にも目を向ける。
「二人のあの翼、漆黒の色をしているでしょう。あれは紛れもなく、アウリスの血によるものです」
アイオン族の始祖の名を、アウリス・ラッセ・フルメヴァーラという。
イルマタル帝国を治めるフルメヴァーラ家は、アイオン族の始祖アウリス皇帝の直径の血筋らしい。現在ヴィプネン族の統一国家を治めるハワドウレ家と違い、フルメヴァーラ家は1万年以上の遥か昔から続くと言われている。
「アイオン族の始祖アウリスは、神と人間の混血により誕生したと言われています。アイオン族は白い翼を基本としますが、アウリスに流れる神の血の影響により、アウリス自身は漆黒の翼だったそうです。そのため、暫くはフルメヴァーラ家でも稀に、漆黒の翼を授かる者も生まれてきました。アウリスの血が濃く継がれたと、尊ばれる象徴でもあったと」
「御大とアルカネットは、そのフルメヴァーラ家の血を引いてる、てことか?」
リュリュから聞かされた話では、思いっきり庶民の家の出だった気が、とギャリーは首をひねる。
「アウリスは末永く、イルマタル帝国が自らの血を引く者で治められることを願い、フルメヴァーラ家に、ある儀式を義務付けました。今後、帝位に就く者は、必ず自分の裁定を受けなければならない、というものでした」
新たに帝位に就くとき、必ずアウリスを死後の世界から呼び戻し、その者が正しくアウリスの血を継いでいるかを、アウリス自身が見定める。帝位交代の度に、その儀式は行われていく。
「しかしその儀式を疎ましく思う者が現れ、アウリスを蘇らせる儀式に邪魔が入りました。それでもどうにかクーデターをおさめ、正しき血を継ぐ者が帝位に就きましたが、その時をもって儀式はなくなり、蘇ったアウリスはイルマタル帝国から消え、惑星ヒイシに降り立ったといいます。そこでアイオン族の女との間に子を成し、その血がベルトルドとアルカネットに受け継がれたわけです」
「……よく、そんなに詳しいことを知っているんですね……」
カーティスにぽつりと言われ、シ・アティウスは僅かに得意げな笑みを浮かべた。
「あの二人の化物じみた力のルーツを、ずっと探っていたんです。かなり遠いご先祖が、共通なのですよ、あの二人の母親は。隔世遺伝というやつですね。ベルトルドもアルカネットも、元はそれぞれサイ《超能力》と魔法スキル〈才能〉のみだったのでしょうが、リューディアの死をきっかけに、潜在的に眠っていたもう一つのスキル〈才能〉が覚醒したのかもしれません。本来スキル〈才能〉は遺伝しないものですがね」
シ・アティウスの話を聞いて、キュッリッキは小さなため息をつく。
もしも、二人が人外の力を持って生まれてこなければ、そんな先祖を持たなければ、リューディアを目の前で失ったとしても、今のような状況には、ならなかったかもしれない。あれほど強力な力を持ってしまったばっかりに、神へ復讐するなどと、決意させてしまったのだ。
そんなことを今更思っても、詮無いことだが。
ドラゴンとなったベルトルドは、ずっと咆哮を続けていた。
苦しみ悲しんでいる、とキュッリッキには伝わっている。アルカネットを失い、激しい悲しみの中、ああして咆えるしか術がないのだと言わんばかりに。
神々と幻想の住人たちの住む世界アルケラには、ドラゴンは当たり前に存在している。しかしこちらの人間世界では、伝説上の化物だ。
ユリディスの呪いを解いて、元の姿に戻さなければ。いつまでも、あんな姿のままにしておくわけにはいかない。
悲しみの連鎖を終わらせる。
キュッリッキは厳しい眼差しを、ベルトルドにひたと向けた。
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