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フリングホルニ編
episode758
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(おや…)
何やら口にしているようなと、彼らの様子を見ていたアルカネットは、半死状態のライオン傭兵団が、急に蘇ったのを感じて目を見開く。
(ドーピングでもしたのでしょうか。まあ、いいでしょう)
アルカネットは近くに倒れるガエルを、思い切りカーティス目掛けて蹴り飛ばした。
不意をつかれてカーティスは慌てたが、ギャリーがすぐさまガエルをキャッチする。
(ペルラ、ガエルにも薬飲ませろ)
(うん、判った)
ギャリーからガエルを受け取り、ペルラは薬を3粒ガエルの口に含ませた。そして、すぐさまカーティスはガエルの止血をするために、回復魔法をかける。
「乱暴に扱ってくれるじゃねえか、え? オイ」
「何やらあなた方が回復してきたようなので、そこの野獣もついでに、回復してあげなさい。もっと闘いを楽しみましょう」
嘲笑を含んだアルカネットの顔を睨みつけ、ギャリーはシラーを担ぎ直した。
「オレはな、御大もテメーも大嫌いだがよ、それでも多少は、御大のほうがマシだと思ってる。いい歳こいて、愛嬌だけはあったからな。あの胸糞悪い尊大さの中にも」
「直接本人に言っておあげなさい。喜ぶと思いますよ、本当に」
「気色悪いっ! てぇ、一蹴されるだけだな」
「同感です」
(ガエルが復活するまで、オレが相手する。ルー、ハーマン、行くぜ!)
(おっけー!)
(ぶっ殺ーす!!)
ギャリーは魔剣シラーを担いだまま、前に走り出した。
転移でかわされるのを覚悟で、アルカネット目掛けて大きく振りかぶる。
黄金で作られている刀身は、室内の明るさに煌きを放ちながら、アルカネットに襲いかかった。
ブンッという唸りを上げたシラーは、アルカネットの繰り出す漆黒の翼で動きを止められた。
「チッ、なんて硬さだオイ」
柄を両手で握り締め、体重を乗せて押し込むが、翼はピクリとも動かない。
「無駄ですよ。私の強化魔法がかけられていますから」
「うっせ」
空間転移で攻撃をかわされなかっただけマシだと思い、ギャリーは更に腕に力を込める。
「シラー、形状変化!」
ギャリーの命令を受け、シラーの黄金の刀身が、強い金色の光を放ちだした。
「!?」
「へへっ、こいつも魔剣の一つだってこと、忘れてんじゃねえってえの!」
刀身を包んでいた光は膨れ上がり、弾けるようにして爆発した。
「なにっ!」
金色の光の粒子が辺りを煌めかせ、突如そこから7匹の黄金の蛇が躍り出ると、アルカネットを包囲するように広がり食らいつき始めた。
黄金の蛇は、それぞれが別の意思を持っているかのように、バラバラに襲い始めた。
アルカネットは翼で払いながら、防御魔法で全身を包み込むように展開しつつ、雷属性の魔力を放って蛇を打ち消そうとするが、魔力は全て弾かれていく。
ギャリーはアルカネットから3歩離れた位置で、グッとシラーの柄を握り締めていた。
縦横無尽に荒れ狂うシラーは、手を離すともっと一大事になる。
敵味方の識別がつかなくなるのだ。
「全く、リヴヤーターン・モードまで使わされる羽目になるたぁな…」
魔剣シラーの、奥の手だった。
黄金の蛇たちは、漆黒の翼が一番の障壁だと認識したのか、7匹全てが翼に食らいつき始めた。
その身から放たれる黄金の光で、翼に張られた強化魔法を打ち消しながら、黒い羽根をむしり取る。
「忌々しいっ…!」
アルカネットは舌打ちすると、片手を頭上に振り上げた。
「イラアルータ・トニトルス!!」
「げっ」
室内が真っ白に発光するほどの巨大な雷が、アルカネットの全身に降り注いだ。
「なんちゅーことをっ!」
「無茶苦茶だあ~~~」
ルーファスとハーマンが、慌ててギャリーを守る強力な防御結界を張り巡らせた。
イラアルータ・トニトルスが落ちた衝撃で吹っ飛ばされたギャリーは、二重の防御結界で無傷だったが、仰向けに倒れて、些か背中を強く打ち付けた。
「いってぇ……」
シラーの黄金の刀身は、元の一つの刀に戻っていた。イラアルータ・トニトルスの衝撃で、元に戻されてしまったようだ。
やがて発光と白煙がおさまってくると、肩で荒い息をつくアルカネットが立っていた。
「リヴヤーターン・モードですか…。私の知らない隠し芸が、まだ残っていたとは。巫山戯た真似をしてくれたものです」
眉間にシワを寄せ、アルカネットはギャリーを睨みつけた。
何やら口にしているようなと、彼らの様子を見ていたアルカネットは、半死状態のライオン傭兵団が、急に蘇ったのを感じて目を見開く。
(ドーピングでもしたのでしょうか。まあ、いいでしょう)
アルカネットは近くに倒れるガエルを、思い切りカーティス目掛けて蹴り飛ばした。
不意をつかれてカーティスは慌てたが、ギャリーがすぐさまガエルをキャッチする。
(ペルラ、ガエルにも薬飲ませろ)
(うん、判った)
ギャリーからガエルを受け取り、ペルラは薬を3粒ガエルの口に含ませた。そして、すぐさまカーティスはガエルの止血をするために、回復魔法をかける。
「乱暴に扱ってくれるじゃねえか、え? オイ」
「何やらあなた方が回復してきたようなので、そこの野獣もついでに、回復してあげなさい。もっと闘いを楽しみましょう」
嘲笑を含んだアルカネットの顔を睨みつけ、ギャリーはシラーを担ぎ直した。
「オレはな、御大もテメーも大嫌いだがよ、それでも多少は、御大のほうがマシだと思ってる。いい歳こいて、愛嬌だけはあったからな。あの胸糞悪い尊大さの中にも」
「直接本人に言っておあげなさい。喜ぶと思いますよ、本当に」
「気色悪いっ! てぇ、一蹴されるだけだな」
「同感です」
(ガエルが復活するまで、オレが相手する。ルー、ハーマン、行くぜ!)
(おっけー!)
(ぶっ殺ーす!!)
ギャリーは魔剣シラーを担いだまま、前に走り出した。
転移でかわされるのを覚悟で、アルカネット目掛けて大きく振りかぶる。
黄金で作られている刀身は、室内の明るさに煌きを放ちながら、アルカネットに襲いかかった。
ブンッという唸りを上げたシラーは、アルカネットの繰り出す漆黒の翼で動きを止められた。
「チッ、なんて硬さだオイ」
柄を両手で握り締め、体重を乗せて押し込むが、翼はピクリとも動かない。
「無駄ですよ。私の強化魔法がかけられていますから」
「うっせ」
空間転移で攻撃をかわされなかっただけマシだと思い、ギャリーは更に腕に力を込める。
「シラー、形状変化!」
ギャリーの命令を受け、シラーの黄金の刀身が、強い金色の光を放ちだした。
「!?」
「へへっ、こいつも魔剣の一つだってこと、忘れてんじゃねえってえの!」
刀身を包んでいた光は膨れ上がり、弾けるようにして爆発した。
「なにっ!」
金色の光の粒子が辺りを煌めかせ、突如そこから7匹の黄金の蛇が躍り出ると、アルカネットを包囲するように広がり食らいつき始めた。
黄金の蛇は、それぞれが別の意思を持っているかのように、バラバラに襲い始めた。
アルカネットは翼で払いながら、防御魔法で全身を包み込むように展開しつつ、雷属性の魔力を放って蛇を打ち消そうとするが、魔力は全て弾かれていく。
ギャリーはアルカネットから3歩離れた位置で、グッとシラーの柄を握り締めていた。
縦横無尽に荒れ狂うシラーは、手を離すともっと一大事になる。
敵味方の識別がつかなくなるのだ。
「全く、リヴヤーターン・モードまで使わされる羽目になるたぁな…」
魔剣シラーの、奥の手だった。
黄金の蛇たちは、漆黒の翼が一番の障壁だと認識したのか、7匹全てが翼に食らいつき始めた。
その身から放たれる黄金の光で、翼に張られた強化魔法を打ち消しながら、黒い羽根をむしり取る。
「忌々しいっ…!」
アルカネットは舌打ちすると、片手を頭上に振り上げた。
「イラアルータ・トニトルス!!」
「げっ」
室内が真っ白に発光するほどの巨大な雷が、アルカネットの全身に降り注いだ。
「なんちゅーことをっ!」
「無茶苦茶だあ~~~」
ルーファスとハーマンが、慌ててギャリーを守る強力な防御結界を張り巡らせた。
イラアルータ・トニトルスが落ちた衝撃で吹っ飛ばされたギャリーは、二重の防御結界で無傷だったが、仰向けに倒れて、些か背中を強く打ち付けた。
「いってぇ……」
シラーの黄金の刀身は、元の一つの刀に戻っていた。イラアルータ・トニトルスの衝撃で、元に戻されてしまったようだ。
やがて発光と白煙がおさまってくると、肩で荒い息をつくアルカネットが立っていた。
「リヴヤーターン・モードですか…。私の知らない隠し芸が、まだ残っていたとは。巫山戯た真似をしてくれたものです」
眉間にシワを寄せ、アルカネットはギャリーを睨みつけた。
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