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フリングホルニ編
episode718
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(あれだけ万能に近い形で防がれては、かえって俺たちの持ち味が活かせない。互を気遣いながらでは、攻撃を当てられずストレスを溜めるだけになる)
(そうですねえ)
(ギャリーはカーティスと組め。俺が不利になってきたら交代だ)
(判った)
(了解です)
(ザカリーとペルラ)
(おう)
(うん)
(付き崩せるポイントを見出したら、俺に遠慮なく撃ちまくれ)
(マカセトケ)
(任せて)
(ハーマンも俺に遠慮せず、得意な攻撃魔法をどんどん撃て。防御はルーがするから)
(うん! ガンガンいくよー!!)
(宣言した1分はとっくに過ぎた。いくぞ)
普段寡黙なガエルだが、こと戦闘のことになると饒舌になる。更に現場も仕切り出す。とは言っても、現場を仕切るときは相手次第で、アルカネットのような相手になれば本気になる。
ガエルが仕切り出したときは、皆黙って従う。
見栄を張ったり見せつけるためといった、下卑たことは一切しないからだ。的確に戦いのポイントを抑え、作戦を考え、提案する。
篭手をカシャカシャと直しながら、ガエルが皆の前に立った。
身長はゆうに2メートルを超え、ガッシリとした筋肉質の体躯は威圧感に満ち、鋭い眼光をたたえる目が、正面のアルカネットをしっかりと見据えていた。
熊のトゥーリ族であるガエルは、トゥーリ族の種族統一国家ロフレス王国の、元親衛隊員である。しかし、戦いと、己の腕を磨いて更に高みを目指すことを望んでいたガエルは、顔見知りだったペルラに誘われてライオン傭兵団へ入った。
まだ新興の傭兵団だったが、傭兵団とは名ばかりの少ない団員たちに、ガエルは満足している。
一騎当千のツワモノ達。各々が得意な分野を極め、自信と実力を兼ね備えていた。もちろん完璧ではないが、そこはガエルも同じだ。互いに切磋琢磨し、高め合っていける仲間たち。
色々と性格的問題はあるにしろ、実力は確かな後ろ盾だったベルトルドとアルカネット。かつて旧コッコラ王国では痛い思いを味わわされたが、いつかもう一度戦ってみたいと願っていた。
大事な仲間であるキュッリッキが捕らわれて、こんな形で対決する羽目になったが、またとない機会だ。
魔法と格闘技、異なるタイプだが、相手はアルカネットだ。不足もないし、遠慮する必要もない。
否、遠慮している余裕などないだろう。
「まずは、あなたが相手ですか、ガエル。あなたが相手では、少々本気を出さないといけませんね」
憎々しいまでの、優美な笑みを浮かべるアルカネットを見据え、ガエルは鼻で笑う。
「少々と言わず、全力でかかってくるがいい。手を抜かれて勝ったとなれば、俺の経歴に傷が付く」
「相変わらず負ける気はないのですね。いいでしょう、あなたのプライドが傷つかない程度には、力を出して戦ってあげましょう」
アルカネットの右掌から、太縄ほどの光が伸びた。そしてそれを掴むと、鞭のようにしならせ床を勢いよく叩いた。
「獣を躾けるには、鞭が一番です。さあ、いらっしゃい」
「やはりアイオン族は、度し難いな」
口の端をニヤリと歪め、ガエルは床を蹴ってアルカネットに飛びかかった。
(そうですねえ)
(ギャリーはカーティスと組め。俺が不利になってきたら交代だ)
(判った)
(了解です)
(ザカリーとペルラ)
(おう)
(うん)
(付き崩せるポイントを見出したら、俺に遠慮なく撃ちまくれ)
(マカセトケ)
(任せて)
(ハーマンも俺に遠慮せず、得意な攻撃魔法をどんどん撃て。防御はルーがするから)
(うん! ガンガンいくよー!!)
(宣言した1分はとっくに過ぎた。いくぞ)
普段寡黙なガエルだが、こと戦闘のことになると饒舌になる。更に現場も仕切り出す。とは言っても、現場を仕切るときは相手次第で、アルカネットのような相手になれば本気になる。
ガエルが仕切り出したときは、皆黙って従う。
見栄を張ったり見せつけるためといった、下卑たことは一切しないからだ。的確に戦いのポイントを抑え、作戦を考え、提案する。
篭手をカシャカシャと直しながら、ガエルが皆の前に立った。
身長はゆうに2メートルを超え、ガッシリとした筋肉質の体躯は威圧感に満ち、鋭い眼光をたたえる目が、正面のアルカネットをしっかりと見据えていた。
熊のトゥーリ族であるガエルは、トゥーリ族の種族統一国家ロフレス王国の、元親衛隊員である。しかし、戦いと、己の腕を磨いて更に高みを目指すことを望んでいたガエルは、顔見知りだったペルラに誘われてライオン傭兵団へ入った。
まだ新興の傭兵団だったが、傭兵団とは名ばかりの少ない団員たちに、ガエルは満足している。
一騎当千のツワモノ達。各々が得意な分野を極め、自信と実力を兼ね備えていた。もちろん完璧ではないが、そこはガエルも同じだ。互いに切磋琢磨し、高め合っていける仲間たち。
色々と性格的問題はあるにしろ、実力は確かな後ろ盾だったベルトルドとアルカネット。かつて旧コッコラ王国では痛い思いを味わわされたが、いつかもう一度戦ってみたいと願っていた。
大事な仲間であるキュッリッキが捕らわれて、こんな形で対決する羽目になったが、またとない機会だ。
魔法と格闘技、異なるタイプだが、相手はアルカネットだ。不足もないし、遠慮する必要もない。
否、遠慮している余裕などないだろう。
「まずは、あなたが相手ですか、ガエル。あなたが相手では、少々本気を出さないといけませんね」
憎々しいまでの、優美な笑みを浮かべるアルカネットを見据え、ガエルは鼻で笑う。
「少々と言わず、全力でかかってくるがいい。手を抜かれて勝ったとなれば、俺の経歴に傷が付く」
「相変わらず負ける気はないのですね。いいでしょう、あなたのプライドが傷つかない程度には、力を出して戦ってあげましょう」
アルカネットの右掌から、太縄ほどの光が伸びた。そしてそれを掴むと、鞭のようにしならせ床を勢いよく叩いた。
「獣を躾けるには、鞭が一番です。さあ、いらっしゃい」
「やはりアイオン族は、度し難いな」
口の端をニヤリと歪め、ガエルは床を蹴ってアルカネットに飛びかかった。
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