758 / 882
奪われしもの編 彼女が遺した空への想い
episode695
しおりを挟む
1万年前、この世界には、国と呼べるものは3つしかなかった。
トゥーリ族が治める惑星タピオに、種族統一国家ロフレス王国。
アイオン族が治める惑星ペッコに、種族統一国家イルマタル帝国。
そして、ヴィプネン族が治める惑星ヒイシに、種族統一国家神王国ソレル。
太陽を中心に、3つの惑星が等間隔で囲み、遠く離れているというのに、3つの国は戦争をしていた。
発展を極めた文明は、宇宙空間へも自由自在に行くことができた。
各惑星間は途方もない距離があり、それを短時間に航行するために、空間跳躍システムも開発されていた。そのため宇宙空間を舞台に、小競り合いや大規模な戦闘まで、飽きずに繰り広げられていたのだった。
3種族は互いに、種族としての尊厳をかけて戦っていた。
その戦争のきっかけは、本当に些細な口喧嘩だった。
アイオン族の美意識過剰な偏見、トゥーリ族の種族優位性の奢り、ヴィプネン族の平凡な劣等感。それらが外交パーティーの場で論争になり、喧嘩を起こしたのが種族の代表たちだったため、戦争にまで膨れ上がってしまったのだ。
更に、ここ何代かアルケラの巫女が、ヴィプネン族の中から連続で輩出していることも、また他種族の妬みを買っている。巫女を長く擁していたことで、神王国などと称したことが、より反感を買っていた。
神々の言葉を人間たちに伝え、人間たちを正しく導くことを役目としているアルケラの巫女。アルケラとは神々の居ます世界の名称、神から選ばれた巫女を、アルケラの巫女と称している。
巫女は代々千年の時を生き、役目を終える1年前に次代の巫女を神から告げられ、手元に引き取り役目を引き継がせる。そして、新たに巫女となった少女は、初潮を迎える頃になると外見の年齢が止まり、女の身体に成長することなく長い時を生きた。
次代が他種族の少女であっても、引継ぎには関係なく巫女は少女を引き取る。そして引継ぎが終わると、祖国へ帰して、そこで新たな巫女は役目を全うした。巫女に国境は存在せず、全ての人間たちのために巫女は存在するのだ。
それなのに、神王国ソレルを治めるヤルヴィレフト王家は、何代もヴィプネン族から輩出される巫女の存在を、まるで自分たちの占有物のように思っていた。
「ヤルヴィレフト王家最後の王クレメッティは、戦争に勝って他惑星を支配下に置くために、あるものを建造させた。国民に重税を課し、苦役を強いて、必死に作り上げたものが、フリングホルニ。リッキーも仕事で訪れただろう、エルアーラ遺跡のことだ」
「フリング……ホルニ…」
聞き覚えのある名前だった。
そう、エルアーラ遺跡で、ヒューゴと名乗るユーレイから聞いたのだ。
「ヤルヴィレフト王家の歪んだ野望……ヒューゴが言ってた」
ぽつりと呟いたキュッリッキの言葉に、ベルトルドとアルカネットは視線をかわした。
トゥーリ族が治める惑星タピオに、種族統一国家ロフレス王国。
アイオン族が治める惑星ペッコに、種族統一国家イルマタル帝国。
そして、ヴィプネン族が治める惑星ヒイシに、種族統一国家神王国ソレル。
太陽を中心に、3つの惑星が等間隔で囲み、遠く離れているというのに、3つの国は戦争をしていた。
発展を極めた文明は、宇宙空間へも自由自在に行くことができた。
各惑星間は途方もない距離があり、それを短時間に航行するために、空間跳躍システムも開発されていた。そのため宇宙空間を舞台に、小競り合いや大規模な戦闘まで、飽きずに繰り広げられていたのだった。
3種族は互いに、種族としての尊厳をかけて戦っていた。
その戦争のきっかけは、本当に些細な口喧嘩だった。
アイオン族の美意識過剰な偏見、トゥーリ族の種族優位性の奢り、ヴィプネン族の平凡な劣等感。それらが外交パーティーの場で論争になり、喧嘩を起こしたのが種族の代表たちだったため、戦争にまで膨れ上がってしまったのだ。
更に、ここ何代かアルケラの巫女が、ヴィプネン族の中から連続で輩出していることも、また他種族の妬みを買っている。巫女を長く擁していたことで、神王国などと称したことが、より反感を買っていた。
神々の言葉を人間たちに伝え、人間たちを正しく導くことを役目としているアルケラの巫女。アルケラとは神々の居ます世界の名称、神から選ばれた巫女を、アルケラの巫女と称している。
巫女は代々千年の時を生き、役目を終える1年前に次代の巫女を神から告げられ、手元に引き取り役目を引き継がせる。そして、新たに巫女となった少女は、初潮を迎える頃になると外見の年齢が止まり、女の身体に成長することなく長い時を生きた。
次代が他種族の少女であっても、引継ぎには関係なく巫女は少女を引き取る。そして引継ぎが終わると、祖国へ帰して、そこで新たな巫女は役目を全うした。巫女に国境は存在せず、全ての人間たちのために巫女は存在するのだ。
それなのに、神王国ソレルを治めるヤルヴィレフト王家は、何代もヴィプネン族から輩出される巫女の存在を、まるで自分たちの占有物のように思っていた。
「ヤルヴィレフト王家最後の王クレメッティは、戦争に勝って他惑星を支配下に置くために、あるものを建造させた。国民に重税を課し、苦役を強いて、必死に作り上げたものが、フリングホルニ。リッキーも仕事で訪れただろう、エルアーラ遺跡のことだ」
「フリング……ホルニ…」
聞き覚えのある名前だった。
そう、エルアーラ遺跡で、ヒューゴと名乗るユーレイから聞いたのだ。
「ヤルヴィレフト王家の歪んだ野望……ヒューゴが言ってた」
ぽつりと呟いたキュッリッキの言葉に、ベルトルドとアルカネットは視線をかわした。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

貧乏秀才令嬢がヤサグレ天才少年と、世界の理を揺るがします。
凜
恋愛
貧乏貴族のダリアは、国一番の魔法学校の副首席。首席になりたいのに、その壁はとんでもなくぶあつく…。
ある日謎多き少年シアンと出会い、彼が首席とわかるやいなや強烈な興味を持ち粘着するようになった。
クセの多い登場人物が織りなす、身分、才能、美醜が絡み、陰謀渦巻く魔法学校でのスクールストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる