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奪われしもの編 彼女が遺した空への想い
episode689
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白い頬を、涙が流れていった。
(あの雷は……トールさまの雷(ミョルニル)だわ…)
無残にも少女に降り落ちた、あの強大な雷の正体を、キュッリッキは正確に見抜いていた。しかし、何故リューディアに落とされたのかまでは判らない。
「泣いてくれるのだな、リューディアの為に」
隣に立つベルトルドが、自らの記憶を見つめながら、苦笑とも自嘲ともとれる表情で言った。
ベルトルドの意識の中に招かれたキュッリッキの意識は、共にベルトルドの過去を映像として視ている。意識同士がつながっているから、だから感じる。
言葉には出さない、ベルトルドの心の痛み、そして、悲しみが。
恋をした今のキュッリッキには、ベルトルドの心が何となく理解出来る気がしていた。
判る、と言うのはおこがましい。しかし、自分が同じようにメルヴィンを突然奪われ、失う羽目になったらと考えたら、きっと同じような気持ちに包まれてしまうのだろう。
「アタシと顔は本当によく似ているけど、でも、アタシなんかと違って、リューディアはとっても素敵。頭がよくって、明るくて、女の子らしくて…」
みんなのお姉さんで、そして、同じように恋をしていた。
「それに、リッキーよりおっぱいも大きかったぞ」
チラッと横目で胸のところを見られて、キュッリッキはムカッとすると、拳を振り上げてベルトルドをぶとうとした。
そこで急にハッとなって、キュッリッキは前に倒れそうになり、のべられたベルトルドの腕に倒れこむ。
「あれ?」
目をぱちくりさせると、青い部屋の中だと気づいて首をかしげた。
「意識をもとに戻したんだ。じゃないと、リッキーのグーで俺の意識を殴られそうになったからな。直接意識に攻撃が加えられると、さすがの俺でもダメージを受ける」
ニヤニヤとするベルトルドを、キュッリッキは拗ねた表情で睨みつけた。ライオン傭兵団の仲間たちに胸の大きさをからかわれるのには慣れている――当然反論している――が、ベルトルドにまで言われるとムカッとくる。
「ベルトルドさんがヘンなこと言うからなんだよ!」
「おっぱいの大きさは関係なく、俺はリッキーが大好きだぞ」
ベルトルドはキュッリッキを素早く抱きしめると、ご機嫌な様子でキュッリッキの頭に頬を摺り寄せた。
「アイオン族だから、そんなに大きくないだけなんだもん……」
ちゃんと膨らんでるもん、と唇を尖らせた。
抱きしめられながら、キュッリッキは先ほどのベルトルドの記憶に思いを馳せる。
リューディアが何をしたのか判らなかったが、彼女の命を奪ったあの雷の正体は、紛れもなくアルケラの神のひと柱トールだ。あの雷はトールの武器ミョルニルの一撃。いつも遊びに行っていたアルケラで、キュッリッキはトールのミョルニルから振り落とされる雷を何度も見たことがあった。だから、見間違いではない。
何故アルケラと無関係だろうリューディアが、トールの一撃を食らう羽目になったのか、キュッリッキには判らない。ベルトルドの知らぬところで、神の怒りに触れる、なにかがあったのだろうか。
ベルトルドの記憶だけでは、よく判らなかった。
「そう、俺も何故あんな雷を、リューディアが受けることになったのか判らなかった」
(あの雷は……トールさまの雷(ミョルニル)だわ…)
無残にも少女に降り落ちた、あの強大な雷の正体を、キュッリッキは正確に見抜いていた。しかし、何故リューディアに落とされたのかまでは判らない。
「泣いてくれるのだな、リューディアの為に」
隣に立つベルトルドが、自らの記憶を見つめながら、苦笑とも自嘲ともとれる表情で言った。
ベルトルドの意識の中に招かれたキュッリッキの意識は、共にベルトルドの過去を映像として視ている。意識同士がつながっているから、だから感じる。
言葉には出さない、ベルトルドの心の痛み、そして、悲しみが。
恋をした今のキュッリッキには、ベルトルドの心が何となく理解出来る気がしていた。
判る、と言うのはおこがましい。しかし、自分が同じようにメルヴィンを突然奪われ、失う羽目になったらと考えたら、きっと同じような気持ちに包まれてしまうのだろう。
「アタシと顔は本当によく似ているけど、でも、アタシなんかと違って、リューディアはとっても素敵。頭がよくって、明るくて、女の子らしくて…」
みんなのお姉さんで、そして、同じように恋をしていた。
「それに、リッキーよりおっぱいも大きかったぞ」
チラッと横目で胸のところを見られて、キュッリッキはムカッとすると、拳を振り上げてベルトルドをぶとうとした。
そこで急にハッとなって、キュッリッキは前に倒れそうになり、のべられたベルトルドの腕に倒れこむ。
「あれ?」
目をぱちくりさせると、青い部屋の中だと気づいて首をかしげた。
「意識をもとに戻したんだ。じゃないと、リッキーのグーで俺の意識を殴られそうになったからな。直接意識に攻撃が加えられると、さすがの俺でもダメージを受ける」
ニヤニヤとするベルトルドを、キュッリッキは拗ねた表情で睨みつけた。ライオン傭兵団の仲間たちに胸の大きさをからかわれるのには慣れている――当然反論している――が、ベルトルドにまで言われるとムカッとくる。
「ベルトルドさんがヘンなこと言うからなんだよ!」
「おっぱいの大きさは関係なく、俺はリッキーが大好きだぞ」
ベルトルドはキュッリッキを素早く抱きしめると、ご機嫌な様子でキュッリッキの頭に頬を摺り寄せた。
「アイオン族だから、そんなに大きくないだけなんだもん……」
ちゃんと膨らんでるもん、と唇を尖らせた。
抱きしめられながら、キュッリッキは先ほどのベルトルドの記憶に思いを馳せる。
リューディアが何をしたのか判らなかったが、彼女の命を奪ったあの雷の正体は、紛れもなくアルケラの神のひと柱トールだ。あの雷はトールの武器ミョルニルの一撃。いつも遊びに行っていたアルケラで、キュッリッキはトールのミョルニルから振り落とされる雷を何度も見たことがあった。だから、見間違いではない。
何故アルケラと無関係だろうリューディアが、トールの一撃を食らう羽目になったのか、キュッリッキには判らない。ベルトルドの知らぬところで、神の怒りに触れる、なにかがあったのだろうか。
ベルトルドの記憶だけでは、よく判らなかった。
「そう、俺も何故あんな雷を、リューディアが受けることになったのか判らなかった」
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