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奪われしもの編 彼女が遺した空への想い
episode685
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リューディアの遺体は大人たちによって、リューディアの家の地下室に安置された。
アルカネットは精神の均衡を崩して、危険と診断したサーラが、安定剤を投与した。そしてレンミッキに付き添われ、自宅で眠っている。
ベルトルドも自分の部屋で、一人膝を抱えて床に座り込んでいた。
リュリュは悲しみのあまり、両親に泣きつこうとしたが、
「寄るな気持ちの悪いオカマが!」
そう、父クスタヴィに激しく突き倒され、そのショックも加わって床に突っ伏して泣き喚いた。
「なんてことを!!」
クスタヴィの家族が心配で、家に詰めていたイスモ、リクハルド、サーラは、クスタヴィの態度に仰天し、サーラは慌ててリュリュを抱き起こした。
「リュリュちゃん」
サーラはしっかりリュリュを抱きしめると、腕に抱き上げた。
「しばらく、おばちゃんの家に行きましょうね。ベルトルドもいるわよ」
そう言って、リュリュを連れて、憤然とサーラは帰っていった。
クスタヴィも妻のカーリナも、リュリュには目もくれず、止めもせずうなだれていた。
「クスタヴィ、カーリナ、リュリュちゃんは暫くウチで預かるよ。着替えとか宿題とか、色々もらっていくね」
「好きにしろ…」
リクハルドの顔も見ずに、クスタヴィは投げやり気味に呟いた。
その場はイスモに任せて、リュリュの部屋へ向かいながら、リクハルドは重苦しくため息をつく。
無理もない、と思う。
自慢の娘だったのだ。
機械工学という特殊なスキル〈才能〉に恵まれ、将来を嘱望されていた。明るく利発で、天使のような少女が、突然あんな無残な遺体となってしまって。
サーラの診断では、落雷による感電死だという。
それも、見たこともないほどの質量の雷に打たれた状態だと、サーラは信じられないと驚いていた。
身体の表面が炭化するほどの落雷による感電死など、見たことがない。
リューディアの遺体は、本当に真っ黒に焼け焦げていた。言われるまでそれがリューディアであると、絶対に判らないほどなのだ。
リュリュの荷物をまとめながら、何度目か判らないほど、リクハルドはため息をつき続けた。
「ベルトルド、入るわよ」
リュリュを抱っこしたサーラが、部屋に入ってきた。
「暫くウチでリュリュちゃんを預かることにしたから。面倒見てあげてね」
サーラはじっとベルトルドを見つめた。
口に出して言いたくないことがあるときは、サーラは必ずそういう表情をする。そして、その表情をしたときは、透視で探れ、という合図でもあった。
ベルトルドは透視で経緯を視ると、肩を落として頷いた。
「今日は、おばちゃんと一緒に寝ましょうね」
ぐすぐすと泣き続けるリュリュは、小さく頷いた。
いつもなら、ベルと一緒がいい! と言い出すところだが、今日ばかりは”母親”に甘えたいのだろう。サーラにしっかり抱きついて泣いていた。
サーラとリュリュが部屋を出ていくと、ベルトルドはベッドに倒れこむようにして突っ伏した。
今でも脳裏に焼き付いて離れない、真っ黒になったリューディア。遠目に見たときは、眩い金髪を風になびかせ、真っ白いノースリーブのワンピースをまとっていた。
それなのに、何故あんなことになってしまったのか。
空には雲ひとつなかった。あの恐ろしい程の巨大な雷は、一体どこから降って沸いたのだろうか。
「天罰じゃあるまいし……」
リューディアが一体何をした?
考えても考えても、ベルトルドには判らない。
ぼんやりと薄暗い部屋を眺めながら、やがてベルトルドは起き上がる。
「判らないなら、探ればいいんだ…」
熱に浮かされたようなおぼつかない足取りで、ベルトルドは部屋を出て行った。
アルカネットは精神の均衡を崩して、危険と診断したサーラが、安定剤を投与した。そしてレンミッキに付き添われ、自宅で眠っている。
ベルトルドも自分の部屋で、一人膝を抱えて床に座り込んでいた。
リュリュは悲しみのあまり、両親に泣きつこうとしたが、
「寄るな気持ちの悪いオカマが!」
そう、父クスタヴィに激しく突き倒され、そのショックも加わって床に突っ伏して泣き喚いた。
「なんてことを!!」
クスタヴィの家族が心配で、家に詰めていたイスモ、リクハルド、サーラは、クスタヴィの態度に仰天し、サーラは慌ててリュリュを抱き起こした。
「リュリュちゃん」
サーラはしっかりリュリュを抱きしめると、腕に抱き上げた。
「しばらく、おばちゃんの家に行きましょうね。ベルトルドもいるわよ」
そう言って、リュリュを連れて、憤然とサーラは帰っていった。
クスタヴィも妻のカーリナも、リュリュには目もくれず、止めもせずうなだれていた。
「クスタヴィ、カーリナ、リュリュちゃんは暫くウチで預かるよ。着替えとか宿題とか、色々もらっていくね」
「好きにしろ…」
リクハルドの顔も見ずに、クスタヴィは投げやり気味に呟いた。
その場はイスモに任せて、リュリュの部屋へ向かいながら、リクハルドは重苦しくため息をつく。
無理もない、と思う。
自慢の娘だったのだ。
機械工学という特殊なスキル〈才能〉に恵まれ、将来を嘱望されていた。明るく利発で、天使のような少女が、突然あんな無残な遺体となってしまって。
サーラの診断では、落雷による感電死だという。
それも、見たこともないほどの質量の雷に打たれた状態だと、サーラは信じられないと驚いていた。
身体の表面が炭化するほどの落雷による感電死など、見たことがない。
リューディアの遺体は、本当に真っ黒に焼け焦げていた。言われるまでそれがリューディアであると、絶対に判らないほどなのだ。
リュリュの荷物をまとめながら、何度目か判らないほど、リクハルドはため息をつき続けた。
「ベルトルド、入るわよ」
リュリュを抱っこしたサーラが、部屋に入ってきた。
「暫くウチでリュリュちゃんを預かることにしたから。面倒見てあげてね」
サーラはじっとベルトルドを見つめた。
口に出して言いたくないことがあるときは、サーラは必ずそういう表情をする。そして、その表情をしたときは、透視で探れ、という合図でもあった。
ベルトルドは透視で経緯を視ると、肩を落として頷いた。
「今日は、おばちゃんと一緒に寝ましょうね」
ぐすぐすと泣き続けるリュリュは、小さく頷いた。
いつもなら、ベルと一緒がいい! と言い出すところだが、今日ばかりは”母親”に甘えたいのだろう。サーラにしっかり抱きついて泣いていた。
サーラとリュリュが部屋を出ていくと、ベルトルドはベッドに倒れこむようにして突っ伏した。
今でも脳裏に焼き付いて離れない、真っ黒になったリューディア。遠目に見たときは、眩い金髪を風になびかせ、真っ白いノースリーブのワンピースをまとっていた。
それなのに、何故あんなことになってしまったのか。
空には雲ひとつなかった。あの恐ろしい程の巨大な雷は、一体どこから降って沸いたのだろうか。
「天罰じゃあるまいし……」
リューディアが一体何をした?
考えても考えても、ベルトルドには判らない。
ぼんやりと薄暗い部屋を眺めながら、やがてベルトルドは起き上がる。
「判らないなら、探ればいいんだ…」
熱に浮かされたようなおぼつかない足取りで、ベルトルドは部屋を出て行った。
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