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召喚士編
episode650
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(さっきから誰のことを言ってるの? 写真の女の子……?)
次の瞬間、キュッリッキは叩きつけられるようにベッドに押し倒され、アルカネットにのしかかられて動きを封じられてしまった。
狂気のような光を宿すアルカネットの瞳が間近に迫り、ふいに足の先から恐怖が這い上ってきて、喉の奥で掠れるような悲鳴を上げた。
「やだ、怖いの……」
キュッリッキは必死に身をもがいたが、アルカネットは全身の体重を乗せて押さえつけてくるので、抜け出すことができない。恐怖のために大きく見開いた目から、自然と涙が溢れ出す。
「やだ……やだ、やだああっ!」
堰を切ったように必死に泣き叫ぶが、アルカネットは力を緩めようとはしない。むしろ力が増していく。
「絶対に逃しません。もう二度と、私の手から逃しはしない!」
アルカネットは強引にキュッリッキの口をキスで塞ぐと、貪るようにして悲鳴も何もかも喰らい尽くした。
(助けてメルヴィン、怖いよ…助けてっ)
キュッリッキは心の中で泣き叫んだ。
アルカネットのキスは少しも優しさがなく、激情を押し付けてくるだけの荒々しいものだった。そのせいで、キュッリッキは口の端を噛まれて血を出し、口内に血の臭いが充満する。
自由になる足を必死にばたつかせるが、身体は自由にならない。
アルカネットは一旦口を離すと、何度も息を荒く吐き出し、左手でキュッリッキのワンピースの裾を掴んでまくりあげた。そして下着の中に手を入れると、花弁をまさぐり、濡れていないそこへ指をねじ込んだ。
ビックリしたキュッリッキは、更に目を大きく見開き、半狂乱になって泣き喚いた。
「ヤメて気持ち悪いの! いやああっ!!」
不愉快な感触と恐怖で、涙が後から後から溢れ出した。涙で滲む目に映るアルカネットの顔は、狂気に歪んだ知らない男の顔をしている。
指が蠢いて痛くて気持ち悪く、怖くて怖くてたまらない。
「よすんだアルカネット!!」
その時ベルトルドの怒鳴る声が耳をついて、アルカネットが身体から離れた。
「放せベルトルド! リューディアが私から離れると言うんだ! そんなことを言わせないようにしなくてはならないんだ!!」
「落ち着けアルカネット、彼女はリューディアじゃない! キュッリッキだ」
「何を言っている! リューディアが、私のリューディアが帰ってきてくれたんだ! もう二度と手放さない、けっしてもう、手放したりはしない!!」
「リューディアはとっくに死んでいるだろう」
「バカを言うな!! 彼女は死んでない! こうして目の前にいるじゃないか」
「アルカネット!」
(ベルトルド……さん? たすか…った)
キュッリッキは恐る恐る身を起こし、怯えたように2人を見つめた。
ベルトルドはアルカネットを押さえ付けるように床に座り、アルカネットはベルトルドの腕の中で吠えるように叫んでいた。その、狂気じみた形相が恐ろしいほどに。
(どうして? どうしてこんなことに…)
「リッキー、帰りなさい」
「……え」
ベルトルドの声にビクッとなりながらも、キュッリッキは涙に濡れた顔を向ける。
「エルダー街の、メルヴィンのところへ帰りなさい」
「ベルトルドさん…」
そのあまりにも悲痛に歪む顔で、ベルトルドは必死に微笑もうとしていた。キュッリッキを少しでも安心させようとしている、それが痛いほど伝わる表情だ。それとは対照的に、アルカネットの表情は狂人のようである。
怯えて動けないキュッリッキに、ベルトルドは声を荒らげた。
「帰りなさい!!」
一喝されるように言われ、キュッリッキは再びビクッと身体を震わせると、力の入らない足で必死に立ち上がり、よろめきつつ部屋を飛び出した。
「待って、リューディア!」
「よせ、アルカネット!」
手を伸ばし反射的に飛びつこうとするアルカネットを、ベルトルドは必死に押さえつけた。
「行ってしまう、彼女が……リューディアが行ってしまう! 放せベルトルド、リューディアが――」
「彼女はリューディアじゃないんだ。アルカネット、違うんだ…」
「うぅ……うわあああああああっ!!」
両手で顔を押さえて泣き崩れるアルカネットを、ベルトルドはしっかりと抱きしめた。
「アルカネット……」
(アルカネットは、もう限界だ)
キュッリッキの消えていった扉の方を見つめ、ベルトルドは泣きそうな表情になった。
(何がトリガーになった? 何が…)
ヒーヒー振り絞るかのように泣くアルカネットを見つめ、ベルトルドは観念したように俯いた。
(もう、限界だ)
次の瞬間、キュッリッキは叩きつけられるようにベッドに押し倒され、アルカネットにのしかかられて動きを封じられてしまった。
狂気のような光を宿すアルカネットの瞳が間近に迫り、ふいに足の先から恐怖が這い上ってきて、喉の奥で掠れるような悲鳴を上げた。
「やだ、怖いの……」
キュッリッキは必死に身をもがいたが、アルカネットは全身の体重を乗せて押さえつけてくるので、抜け出すことができない。恐怖のために大きく見開いた目から、自然と涙が溢れ出す。
「やだ……やだ、やだああっ!」
堰を切ったように必死に泣き叫ぶが、アルカネットは力を緩めようとはしない。むしろ力が増していく。
「絶対に逃しません。もう二度と、私の手から逃しはしない!」
アルカネットは強引にキュッリッキの口をキスで塞ぐと、貪るようにして悲鳴も何もかも喰らい尽くした。
(助けてメルヴィン、怖いよ…助けてっ)
キュッリッキは心の中で泣き叫んだ。
アルカネットのキスは少しも優しさがなく、激情を押し付けてくるだけの荒々しいものだった。そのせいで、キュッリッキは口の端を噛まれて血を出し、口内に血の臭いが充満する。
自由になる足を必死にばたつかせるが、身体は自由にならない。
アルカネットは一旦口を離すと、何度も息を荒く吐き出し、左手でキュッリッキのワンピースの裾を掴んでまくりあげた。そして下着の中に手を入れると、花弁をまさぐり、濡れていないそこへ指をねじ込んだ。
ビックリしたキュッリッキは、更に目を大きく見開き、半狂乱になって泣き喚いた。
「ヤメて気持ち悪いの! いやああっ!!」
不愉快な感触と恐怖で、涙が後から後から溢れ出した。涙で滲む目に映るアルカネットの顔は、狂気に歪んだ知らない男の顔をしている。
指が蠢いて痛くて気持ち悪く、怖くて怖くてたまらない。
「よすんだアルカネット!!」
その時ベルトルドの怒鳴る声が耳をついて、アルカネットが身体から離れた。
「放せベルトルド! リューディアが私から離れると言うんだ! そんなことを言わせないようにしなくてはならないんだ!!」
「落ち着けアルカネット、彼女はリューディアじゃない! キュッリッキだ」
「何を言っている! リューディアが、私のリューディアが帰ってきてくれたんだ! もう二度と手放さない、けっしてもう、手放したりはしない!!」
「リューディアはとっくに死んでいるだろう」
「バカを言うな!! 彼女は死んでない! こうして目の前にいるじゃないか」
「アルカネット!」
(ベルトルド……さん? たすか…った)
キュッリッキは恐る恐る身を起こし、怯えたように2人を見つめた。
ベルトルドはアルカネットを押さえ付けるように床に座り、アルカネットはベルトルドの腕の中で吠えるように叫んでいた。その、狂気じみた形相が恐ろしいほどに。
(どうして? どうしてこんなことに…)
「リッキー、帰りなさい」
「……え」
ベルトルドの声にビクッとなりながらも、キュッリッキは涙に濡れた顔を向ける。
「エルダー街の、メルヴィンのところへ帰りなさい」
「ベルトルドさん…」
そのあまりにも悲痛に歪む顔で、ベルトルドは必死に微笑もうとしていた。キュッリッキを少しでも安心させようとしている、それが痛いほど伝わる表情だ。それとは対照的に、アルカネットの表情は狂人のようである。
怯えて動けないキュッリッキに、ベルトルドは声を荒らげた。
「帰りなさい!!」
一喝されるように言われ、キュッリッキは再びビクッと身体を震わせると、力の入らない足で必死に立ち上がり、よろめきつつ部屋を飛び出した。
「待って、リューディア!」
「よせ、アルカネット!」
手を伸ばし反射的に飛びつこうとするアルカネットを、ベルトルドは必死に押さえつけた。
「行ってしまう、彼女が……リューディアが行ってしまう! 放せベルトルド、リューディアが――」
「彼女はリューディアじゃないんだ。アルカネット、違うんだ…」
「うぅ……うわあああああああっ!!」
両手で顔を押さえて泣き崩れるアルカネットを、ベルトルドはしっかりと抱きしめた。
「アルカネット……」
(アルカネットは、もう限界だ)
キュッリッキの消えていった扉の方を見つめ、ベルトルドは泣きそうな表情になった。
(何がトリガーになった? 何が…)
ヒーヒー振り絞るかのように泣くアルカネットを見つめ、ベルトルドは観念したように俯いた。
(もう、限界だ)
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