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召喚士編
episode649
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部屋の入り口に、アルカネットが立っていた。
「アルカネットさん」
キュッリッキはアルカネットに気づいて、にっこりと声をかける。しかしアルカネットは無言だった。
その表情は、怒っているわけでもない。にこりと微笑んでいるわけでもない。かといって、無表情というわけでもないのだ。穏やかな風貌には 、しかしどれにも当てはまらない、何とも表現しがたい表情が浮かんでいた。
返事が返ってこないので、勝手に部屋へ入ったことを怒っているのかもしれない。そう思ったキュッリッキは、写真立てをサイドテーブルに戻して、小さな声で「ごめんなさい」と言った。それでもアルカネットは無言で、じっとキュッリッキを見つめているだけだ。
(何も言ってくれないと、なんか、気まずい……)
部屋へ勝手に入っただけなので、言い訳もなにも思いつかない。でも、ああして無言を通されると、なにか気に障ったことでもしたのではないか? そう思えて身の置き所に迷う。
(あ、そうだ!)
「あのね、アルカネットさん玄関へ手袋忘れたでしょ、持ってきたの。テーブルの上に置いといたからね」
部屋へきた目的を言えば、きっと反応があるだろう。と思いつくも、やはりアルカネットは無言だった。
他に話題はないだろうかと、キュッリッキは必死に考えた。
「そ、そいえば、ベルトルドさんも起きてるんだね! 毎日ちゃんと早く起きるといいのにね」
無反応。
(これもダメか…)
さらりと黙殺されている気がする。
(うーん、うーん……)
困り果てて、ふとキュッリッキはサイドテーブルに戻した写真立てを手にとった。
「この写真に写ってるのって、アタシじゃないよね? ものすごくアタシに似てるから、勘違いしちゃった」
自分の顔の横に、写真立てを並べるように持つ。
少し古ぼけた感じの写真には、青い空と海を背景に、金髪の少女が笑顔で写っていた。愛くるしいまでの無邪気なその表情、あどけなさを残した美しい顔立ち。瞳の色は違うが、キュッリッキに瓜二つなのだ。
「アタシのそっくりさんなんだね」
すると、アルカネットの表情に悲しい色が浮かび、よろけるように歩き出した。まっすぐキュッリッキを目指して。
アルカネットは歩きながらキュッリッキに向けて手を伸ばすと、細い手首を掴んで自分の方へ、グイっと強引に引き寄せた。
「ア、アルカネットさん!?」
いきなりのことに驚いて、キュッリッキは身を固くしてアルカネットを見上げた。
「リューディア…」
そう言って、キュッリッキを強く抱きしめた。全身全霊を込めるように、その細い身体をしっかりと抱きしめ、アルカネットは身を震わせた。
「もう二度と、私を一人にしないでください」
「ア、アタシ、ち、違うよっ! キュッリッキだよアルカネットさん」
まるで身動きがとれず、キツく抱きしめられる腕の中で、キュッリッキはアルカネットに呼びかけた。
いつもと違って、物凄く強く抱きしめてくる。
「あのね、すごく苦しいの。お願いだから、力を緩めて」
しかしアルカネットの腕の力は緩まない。
「息が苦しいの、アルカネットさん離して…」
「私から離れるというのですか?」
突然アルカネットはビクッと身体を震わせ、険しい表情になってキュッリッキを見おろした。まるで信じられない言葉を聞いたかのように、怒りがじわりと滲み出している。
「許しませんよ、私から離れるなど、絶対に許しません!」
「い、痛い」
身体を更にキツく抱きしめられ、キュッリッキは苦悶の表情を浮かべた。
(一体どうしちゃったんだろう、アルカネットさん!? なんだかすごく怖い。今日はもう、さっさとエルダー街へ帰っちゃおう…)
「アルカネットさん…アタシ、もう、エルダー街へ帰る、離してアルカネットさん!」
「帰る? あなたが帰るべき場所は、私の腕の中ですよ。それ以外の一体どこへ帰ろうというのですか、リューディア!!」
「アルカネットさん」
キュッリッキはアルカネットに気づいて、にっこりと声をかける。しかしアルカネットは無言だった。
その表情は、怒っているわけでもない。にこりと微笑んでいるわけでもない。かといって、無表情というわけでもないのだ。穏やかな風貌には 、しかしどれにも当てはまらない、何とも表現しがたい表情が浮かんでいた。
返事が返ってこないので、勝手に部屋へ入ったことを怒っているのかもしれない。そう思ったキュッリッキは、写真立てをサイドテーブルに戻して、小さな声で「ごめんなさい」と言った。それでもアルカネットは無言で、じっとキュッリッキを見つめているだけだ。
(何も言ってくれないと、なんか、気まずい……)
部屋へ勝手に入っただけなので、言い訳もなにも思いつかない。でも、ああして無言を通されると、なにか気に障ったことでもしたのではないか? そう思えて身の置き所に迷う。
(あ、そうだ!)
「あのね、アルカネットさん玄関へ手袋忘れたでしょ、持ってきたの。テーブルの上に置いといたからね」
部屋へきた目的を言えば、きっと反応があるだろう。と思いつくも、やはりアルカネットは無言だった。
他に話題はないだろうかと、キュッリッキは必死に考えた。
「そ、そいえば、ベルトルドさんも起きてるんだね! 毎日ちゃんと早く起きるといいのにね」
無反応。
(これもダメか…)
さらりと黙殺されている気がする。
(うーん、うーん……)
困り果てて、ふとキュッリッキはサイドテーブルに戻した写真立てを手にとった。
「この写真に写ってるのって、アタシじゃないよね? ものすごくアタシに似てるから、勘違いしちゃった」
自分の顔の横に、写真立てを並べるように持つ。
少し古ぼけた感じの写真には、青い空と海を背景に、金髪の少女が笑顔で写っていた。愛くるしいまでの無邪気なその表情、あどけなさを残した美しい顔立ち。瞳の色は違うが、キュッリッキに瓜二つなのだ。
「アタシのそっくりさんなんだね」
すると、アルカネットの表情に悲しい色が浮かび、よろけるように歩き出した。まっすぐキュッリッキを目指して。
アルカネットは歩きながらキュッリッキに向けて手を伸ばすと、細い手首を掴んで自分の方へ、グイっと強引に引き寄せた。
「ア、アルカネットさん!?」
いきなりのことに驚いて、キュッリッキは身を固くしてアルカネットを見上げた。
「リューディア…」
そう言って、キュッリッキを強く抱きしめた。全身全霊を込めるように、その細い身体をしっかりと抱きしめ、アルカネットは身を震わせた。
「もう二度と、私を一人にしないでください」
「ア、アタシ、ち、違うよっ! キュッリッキだよアルカネットさん」
まるで身動きがとれず、キツく抱きしめられる腕の中で、キュッリッキはアルカネットに呼びかけた。
いつもと違って、物凄く強く抱きしめてくる。
「あのね、すごく苦しいの。お願いだから、力を緩めて」
しかしアルカネットの腕の力は緩まない。
「息が苦しいの、アルカネットさん離して…」
「私から離れるというのですか?」
突然アルカネットはビクッと身体を震わせ、険しい表情になってキュッリッキを見おろした。まるで信じられない言葉を聞いたかのように、怒りがじわりと滲み出している。
「許しませんよ、私から離れるなど、絶対に許しません!」
「い、痛い」
身体を更にキツく抱きしめられ、キュッリッキは苦悶の表情を浮かべた。
(一体どうしちゃったんだろう、アルカネットさん!? なんだかすごく怖い。今日はもう、さっさとエルダー街へ帰っちゃおう…)
「アルカネットさん…アタシ、もう、エルダー街へ帰る、離してアルカネットさん!」
「帰る? あなたが帰るべき場所は、私の腕の中ですよ。それ以外の一体どこへ帰ろうというのですか、リューディア!!」
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