片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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召喚士編

episode647

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 やや呆れ気味にキュッリッキが言うと、

「1秒でもリッキーのそばにいたいんだ!」

「そうです。たかが仕事ごときに邪魔されませんよ!」

 書類から顔を上げず、2人はきっぱりと言い切った。

「ぶー」

 せっかく一緒に寝るのだから、少しは楽しい話でもしたかった。しかし2人共書類に見入って、すっかり仕事モードである。

 暫く背中を見つめていたが、焦れて2人の間に移動して、交互に顔を覗き込む。でも少しも振り向いてくれない。

「もお、つまんなーーーーい!」

 キュッリッキは2人の手にしている書類をワシャッと掴むと、ひったくるように奪い取り、ポイッと宙に放り投げた。

「リ、リッキ~~~」

「あわわ……」

 ベルトルドとアルカネットは、ヒラヒラと宙を舞って落ちる書類を慌てて拾い始めた。

「これ、アルカネットのだな」

「ベルトルド様のはこっちのですね」

 拾った書類の中身を確認しながら、交換しつつ再度確認する。

「この、イタズラっ子め!」

 ベルトルドはキュッリッキに飛びかかると、そのままベッドへ押し倒した。

「キャッ」

「悪い子はオシオキだぞ~」

「えへへ、だって2人共かまってくれないから、つまんないんだもーん」

「しょがないですね、リッキーさん」

 アルカネットは苦笑しながら、ベルトルドのぶんの書類もテーブルの上に乗せに行く。

「さて、どうしてくれよう、この小悪魔」

 ベルトルドが芝居がかった口調で言うと、キュッリッキはくすくすと笑った。

「今すぐ子持ちの父親になれますね」

 2人の様子を見て、アルカネットが嫌味な笑顔を浮かべてベルトルドに言う。

「たわけ、愛し合う恋人同士のようじゃないか。なあ、リッキー」

「いえいえ、どう見ても仲のいい親娘(おやこ)のようです」

「がるるる」

「アタシとベルトルドさん、親娘(おやこ)みたいに見えるんだ~」

 妙に感心したようにキュッリッキが言うと、

「ええ、とっても親娘のように見えますよ」

 アルカネットが畳み掛けに出る。

「私とは恋人同士にしか見えませんが」

 いつまでも抱きしめているベルトルドの腕から、キュッリッキを強引に奪い取ると、アルカネットは自分の腕に抱き抱えなおす。

「リッキーさんは、永遠に私のものです」

 心の底からアルカネットは言うと、キュッリッキの頬に優しくキスをした。

「寝言は寝てから言え。もう寝るぞ寝るぞ!」

 キュッリッキを奪われて面白くないベルトルドは、声を荒らげてシーツをめくった。

 ベッドに戻されたキュッリッキは、横になりながら、ベルトルドと親娘(おやこ)のように見えると言われたことが、嬉しいと思っていた。

 いつも優しく包みこでくれるベルトルド。メルヴィンとのことで怖い態度を見せはしたが、それ以外はいつだって優しい。そのうち、メルヴィンとのことも心から認めて祝福してくれると、キュッリッキは信じていた。

 ベルトルドに対しては、そう思えた。しかしアルカネットはそうじゃない。きっと、一生認めてはくれないと思っている。それでもアルカネットのことも大好きだ。過剰なまでに自分を愛してくれ、いつだって優しい。

 血は繋がっていなくても、キュッリッキにとって、2人は大切な父親たちなのだ。

 3人が横になると、キュッリッキは2人の手をとって、ギュッと握った。大好きと感謝の気持ちを込めて。

「おやすみなさーい」

 ベルトルドとアルカネットは顔を見合わせ、そして苦笑した。2人は同時にキュッリッキの頬にキスをすると、ぴったりとキュッリッキに身を寄せて目を閉じた。
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