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召喚士編
episode646
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「リッキー、今日は泊まっていけるんだろう?」
金糸のようなキュッリッキの柔らかな髪を指でいじりながら、ベルトルドはテレビに見入っているキュッリッキの顔を覗き込む。
「うん。外暗いし、めんどいから泊まっていく」
画面から目を離さずキュッリッキが言うと、ベルトルドとアルカネットの顔がパッと明るく輝いた。
「なら、一緒に寝ような」
にっこりとベルトルドに言われて、キュッリッキは「えー」と不満そうに眉を顰めた。
「私と寝ましょうね」
優しく微笑むアルカネットにも、キュッリッキは「えー」と不満そうな顔を向けた。
「最近ずっとリッキーと寝られないから、欲求不…いや、寝不足が溜まってて、身体の調子が悪いんだ……」
「え!? ベルトルドさんどっか悪いの?」
キュッリッキはびっくりして飛び上がった。
以前自分のせいで、過労で倒されさせてしまったことを思い出したのだ。あのことは今でも罪悪を感じている。
「何を言っているんですかしらじらしい。毎朝起こす苦労を強いられる、私の身にもなっていただきたいものですね、ぐっすり爆睡しておいて」
シラーっとアルカネットに言われて、ベルトルドは口をへの字に曲げた。
「まあ、たまにはいっか」
「!」
「!」
ベルトルドとアルカネットは、思わずびっくりしてキュッリッキを見る。メルヴィンとくっついてからというもの、何を言っても拝み倒しても、Yesとは言ってもらえなかったのだ。
「だけど、2人とも、もうちょっと離れて寝てよ。せっかく広いベッドなのに、狭くなっちゃう」
「もちろんだリッキー!!」
「もちろんですよリッキーさん!!」
2人同時に抱きつかれ、キュッリッキは疲れたように小さく笑った。
(やっぱ、後悔したかも……)
夕食を終えたあと、キュッリッキはフェンリルとフローズヴィトニルと一緒にお風呂に入った。
フェンリルはバスタブのへりに顎と前脚でつかまって、目を閉じ気持ちよさそうに湯船に浸かっている。フローズヴィトニルは犬かきで泳ぎながら、時折キュッリッキにじゃれついていた。
アジトのお風呂は5人一緒に入れるほど広いが、いつも誰かと一緒なので、こうしてのんびりと浸かることはない。フェンリルはオスだからという理由でマリオンに追い出され、最近ではガエルたちと一緒に入っている。フローズヴィトニルはちゃっかりキュッリッキと一緒だ。
「さて、そろそろ出よっか。のぼせちゃう」
2匹を腕で掬うようにして湯から上げると、バスタブを出て床に下ろしてやる。2匹は身体を勢いよく振るって、水気を飛ばした。
キュッリッキは身体を拭いてナイティドレスに着替えると、ドライヤーで髪を乾かす。そして、洗面台の上で待機する2匹の毛も乾かしてやった。とくにフェンリルはドライヤーがお気に入りである。熱風を浴びながら、気持ちよさそうに目を細めていた。その表情を見ていると、
(なんだか疲れたオッサンみたい…)
とキュッリッキは思っていたが、口には出していない。言えば絶対怒る。
身奇麗になって部屋に戻ると、フェンリルとフローズヴィトニルは、長椅子のクッションへ駆けていって丸くなった。以前はフェンリルが独り占めしていたクッションも、今ではフローズヴィトニルが加わって狭くなってしまっている。それでもフローズヴィトニルはフェンリルにピッタリと身を寄せて丸くなっていた。
キュッリッキがベッドの上に乗っかって座り込んだとき、寝巻きに着替えたベルトルドとアルカネットが部屋へ入ってきた。そしてベッドに腰を掛けると、手にしていた書類に目を通し始める。
「お仕事終わってからくればいいのに」
金糸のようなキュッリッキの柔らかな髪を指でいじりながら、ベルトルドはテレビに見入っているキュッリッキの顔を覗き込む。
「うん。外暗いし、めんどいから泊まっていく」
画面から目を離さずキュッリッキが言うと、ベルトルドとアルカネットの顔がパッと明るく輝いた。
「なら、一緒に寝ような」
にっこりとベルトルドに言われて、キュッリッキは「えー」と不満そうに眉を顰めた。
「私と寝ましょうね」
優しく微笑むアルカネットにも、キュッリッキは「えー」と不満そうな顔を向けた。
「最近ずっとリッキーと寝られないから、欲求不…いや、寝不足が溜まってて、身体の調子が悪いんだ……」
「え!? ベルトルドさんどっか悪いの?」
キュッリッキはびっくりして飛び上がった。
以前自分のせいで、過労で倒されさせてしまったことを思い出したのだ。あのことは今でも罪悪を感じている。
「何を言っているんですかしらじらしい。毎朝起こす苦労を強いられる、私の身にもなっていただきたいものですね、ぐっすり爆睡しておいて」
シラーっとアルカネットに言われて、ベルトルドは口をへの字に曲げた。
「まあ、たまにはいっか」
「!」
「!」
ベルトルドとアルカネットは、思わずびっくりしてキュッリッキを見る。メルヴィンとくっついてからというもの、何を言っても拝み倒しても、Yesとは言ってもらえなかったのだ。
「だけど、2人とも、もうちょっと離れて寝てよ。せっかく広いベッドなのに、狭くなっちゃう」
「もちろんだリッキー!!」
「もちろんですよリッキーさん!!」
2人同時に抱きつかれ、キュッリッキは疲れたように小さく笑った。
(やっぱ、後悔したかも……)
夕食を終えたあと、キュッリッキはフェンリルとフローズヴィトニルと一緒にお風呂に入った。
フェンリルはバスタブのへりに顎と前脚でつかまって、目を閉じ気持ちよさそうに湯船に浸かっている。フローズヴィトニルは犬かきで泳ぎながら、時折キュッリッキにじゃれついていた。
アジトのお風呂は5人一緒に入れるほど広いが、いつも誰かと一緒なので、こうしてのんびりと浸かることはない。フェンリルはオスだからという理由でマリオンに追い出され、最近ではガエルたちと一緒に入っている。フローズヴィトニルはちゃっかりキュッリッキと一緒だ。
「さて、そろそろ出よっか。のぼせちゃう」
2匹を腕で掬うようにして湯から上げると、バスタブを出て床に下ろしてやる。2匹は身体を勢いよく振るって、水気を飛ばした。
キュッリッキは身体を拭いてナイティドレスに着替えると、ドライヤーで髪を乾かす。そして、洗面台の上で待機する2匹の毛も乾かしてやった。とくにフェンリルはドライヤーがお気に入りである。熱風を浴びながら、気持ちよさそうに目を細めていた。その表情を見ていると、
(なんだか疲れたオッサンみたい…)
とキュッリッキは思っていたが、口には出していない。言えば絶対怒る。
身奇麗になって部屋に戻ると、フェンリルとフローズヴィトニルは、長椅子のクッションへ駆けていって丸くなった。以前はフェンリルが独り占めしていたクッションも、今ではフローズヴィトニルが加わって狭くなってしまっている。それでもフローズヴィトニルはフェンリルにピッタリと身を寄せて丸くなっていた。
キュッリッキがベッドの上に乗っかって座り込んだとき、寝巻きに着替えたベルトルドとアルカネットが部屋へ入ってきた。そしてベッドに腰を掛けると、手にしていた書類に目を通し始める。
「お仕事終わってからくればいいのに」
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