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召喚士編
episode645
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「ねえメルヴィン、アタシとエッチしたい?」
その瞬間、談話室のあちこちから大きな音がたった。そしてメルヴィンは、口にしていたビールを、盛大に吹き出していた。
「い、いきなりっ、何を言い出すんですか!?」
メルヴィンは顔を真っ赤にして、キュッリッキを振り向く。
「したくないの?」
真顔で迫る愛しい恋人に、メルヴィンは口をパクパクさせながら、ジリジリと引いていた。
「そ、それは、ですね、その……」
仲間たちのいる前で、本音をはっきり言う勇気がメルヴィンにはない。そもそもそういうキャラではないのだ。一方、キュッリッキの爆弾発言に、ライオン傭兵団の仲間たちは盛大にズッコケた。
2人がまだ肉体関係を結んでいないことは判っていた。メルヴィンが理性を総動員して、キュッリッキが精神的にも大人になって、受け入れられるようになるまで我慢していることを理解している。
「メルヴィン我慢してるから、早くヤッちゃいなさいよってファニー言ってた」
確かに我慢はしている。だが、そう軽いノリでキュッリッキを抱くのは控えたかった。何故ならキュッリッキは処女なのである。
温泉旅行の時、露天風呂に入るキュッリッキの部屋にまで押しかけて、一緒に露天風呂に入った。
キスし合うムードの勢いを借りて、最後までいけたらという下心はあったが、キュッリッキの天然が炸裂して失敗に終わっている。
「……リッキーが本気でそうしてほしいのなら、オレはいつでも構いませんよ」
それだけを言うと、メルヴィンはゲッソリと疲れた溜息を吐いた。
「んー……」
キュッリッキは顎に指を当てると、目を上に向けて考え込む。
実際どういうことをするのか、さっぱり判らないからだ。
以前ヴィヒトリに見せられたベルトルド秘蔵の超無修正ポルノ映像のことは、すでに記憶格納庫から綺麗に消去されている。内容があまりにも過激すぎたのだ。
「何をするのか判んないから、今度でいいや」
「そうですね……」
あっけらかんと言われ、メルヴィンは更に疲れて肩を落とした。はたして今度とは一体いつなのだろう、と少し思ったメルヴィンだった。
キュッリッキは壁時計を見て、「あっ」と言うと慌てて立ち上がる。
「もう18時だ! ベルトルドさんちに行ってくる」
「ハーメンリンナまで送りますか?」
「うん!」
キュッリッキは嬉しそうに、にっこりと微笑んだ。
キュッリッキがベルトルド邸につくと、すでにベルトルドとアルカネットは帰宅しており、部屋着に着替えて出迎えてくれた。
「おいでリッキー、寒くなかったか?」
ベルトルドはキュッリッキをギュッと抱きしめると、待ちかねたように額にキスの雨を降らせた。
「独り占めしないでください! 早くリッキーさんを放しなさい」
「ダガコトワル」
「いい加減に離れろや」
来ればすぐこれだ、と、キュッリッキは疲れたようにため息をついた。何のかんのと抱きついてきては、キスをしていくのは止めない。なのでもう言うのを諦めていた。
「お嬢様、早くお部屋へ行かないと、番組が始まってしまいますよ」
やんわりとハウスキーパーのリトヴァが助け舟を出してくれて、キュッリッキはベルトルドの腕からスルッと抜け出した。そして、テレビのある自分の部屋へ、一目散に駆け出す。
「早く行かないと始まっちゃう!」
「リッキー待ってくれ」
「リッキーさん」
駆けていくキュッリッキを、ベルトルドとアルカネットは慌てて追いかけた。
「全く、お嬢様も旦那様方も、お屋敷の中は走らないでくださいませっ!」
リトヴァは呆れたように肩で息をついた。
その瞬間、談話室のあちこちから大きな音がたった。そしてメルヴィンは、口にしていたビールを、盛大に吹き出していた。
「い、いきなりっ、何を言い出すんですか!?」
メルヴィンは顔を真っ赤にして、キュッリッキを振り向く。
「したくないの?」
真顔で迫る愛しい恋人に、メルヴィンは口をパクパクさせながら、ジリジリと引いていた。
「そ、それは、ですね、その……」
仲間たちのいる前で、本音をはっきり言う勇気がメルヴィンにはない。そもそもそういうキャラではないのだ。一方、キュッリッキの爆弾発言に、ライオン傭兵団の仲間たちは盛大にズッコケた。
2人がまだ肉体関係を結んでいないことは判っていた。メルヴィンが理性を総動員して、キュッリッキが精神的にも大人になって、受け入れられるようになるまで我慢していることを理解している。
「メルヴィン我慢してるから、早くヤッちゃいなさいよってファニー言ってた」
確かに我慢はしている。だが、そう軽いノリでキュッリッキを抱くのは控えたかった。何故ならキュッリッキは処女なのである。
温泉旅行の時、露天風呂に入るキュッリッキの部屋にまで押しかけて、一緒に露天風呂に入った。
キスし合うムードの勢いを借りて、最後までいけたらという下心はあったが、キュッリッキの天然が炸裂して失敗に終わっている。
「……リッキーが本気でそうしてほしいのなら、オレはいつでも構いませんよ」
それだけを言うと、メルヴィンはゲッソリと疲れた溜息を吐いた。
「んー……」
キュッリッキは顎に指を当てると、目を上に向けて考え込む。
実際どういうことをするのか、さっぱり判らないからだ。
以前ヴィヒトリに見せられたベルトルド秘蔵の超無修正ポルノ映像のことは、すでに記憶格納庫から綺麗に消去されている。内容があまりにも過激すぎたのだ。
「何をするのか判んないから、今度でいいや」
「そうですね……」
あっけらかんと言われ、メルヴィンは更に疲れて肩を落とした。はたして今度とは一体いつなのだろう、と少し思ったメルヴィンだった。
キュッリッキは壁時計を見て、「あっ」と言うと慌てて立ち上がる。
「もう18時だ! ベルトルドさんちに行ってくる」
「ハーメンリンナまで送りますか?」
「うん!」
キュッリッキは嬉しそうに、にっこりと微笑んだ。
キュッリッキがベルトルド邸につくと、すでにベルトルドとアルカネットは帰宅しており、部屋着に着替えて出迎えてくれた。
「おいでリッキー、寒くなかったか?」
ベルトルドはキュッリッキをギュッと抱きしめると、待ちかねたように額にキスの雨を降らせた。
「独り占めしないでください! 早くリッキーさんを放しなさい」
「ダガコトワル」
「いい加減に離れろや」
来ればすぐこれだ、と、キュッリッキは疲れたようにため息をついた。何のかんのと抱きついてきては、キスをしていくのは止めない。なのでもう言うのを諦めていた。
「お嬢様、早くお部屋へ行かないと、番組が始まってしまいますよ」
やんわりとハウスキーパーのリトヴァが助け舟を出してくれて、キュッリッキはベルトルドの腕からスルッと抜け出した。そして、テレビのある自分の部屋へ、一目散に駆け出す。
「早く行かないと始まっちゃう!」
「リッキー待ってくれ」
「リッキーさん」
駆けていくキュッリッキを、ベルトルドとアルカネットは慌てて追いかけた。
「全く、お嬢様も旦那様方も、お屋敷の中は走らないでくださいませっ!」
リトヴァは呆れたように肩で息をついた。
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