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召喚士編
episode630
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「仕方ありませんね」
苦笑気味に頷きながら、アルカネットは掌に巨大な水の球を作り出した。そしてそれを少女たちの頭上に放り投げると、ベルトルドが念力でその水の球を破壊した。
弾けた水が盛大に少女たちに降り注ぎ、
「きゃっ」
「な、なに!?」
小さな悲鳴を上げながら、少女たちは目をぱちくりさせて辺りをキョロキョロと見渡す。
「目が覚めましたか?」
パンパンっと手を打ち鳴らし、アルカネットが冷ややかな目を少女たちに向ける。
「ベルトルド様からのお話ですよ。しっかりお聴きなさい」
濡れた服が不快に身体に張り付くのを気にしつつ、次は何をされるか判らず、少女たちは口をつぐんでベルトルドを見る。
「生まれて初めてだろう? こんな野蛮で理不尽な扱いを受けるのは」
心や記憶を読まずとも、少女たちの顔にはっきりと書いてある。
なぜ自分が、こんなメにあわされるのか、と。
「召喚スキル〈才能〉を持って生まれてきた貴様たちは、当然のようにして国の保護のもと、贅沢三昧に暮らしてきた。何を生産するわけでもなく、貢献することもなく、無駄に贅沢をしていただけだ」
贅沢にくるまれて生きてきた少女たち。勉強をしなくてもいい、仕事をしなくてもいい。好きなように生きることが許されてきた。
「先日貴様たちに会ってもらったキュッリッキを、貴様たちはくだらない下心で苛めていたな。彼女を乞食呼ばわりし、あまつさえ手も上げていた」
ビクッとアンティアが身体を震わせる。――あの場にベルトルドはいなかった。では、あのキュッリッキが密告したのだろうか?
「彼女はアイオン族の生まれでな、生まれつき片方の翼が奇形なんだ。そのため生まれてすぐ両親から捨てられ、同族から疎まれ、国からも見放された。召喚スキル〈才能〉をもって生まれてきたのにな。だから、ずっと独りで生きてきた。類まれなその召喚スキル〈才能〉を活かし、傭兵として幼い頃から戦場を渡り歩き、あらゆる仕事をこなしてきた。無能な貴様たちが、召喚スキル〈才能〉を持っているという理由だけで、安全な場所でヌクヌクと贅沢を謳歌している頃、キュッリッキは弱音も吐かずに生きてきたんだ」
「そんなくだらないあなたがたが、彼女を乞食などと蔑む資格などないのですよ」
ベルトルドとアルカネットの声の冷たさに、少女たちは心底震え上がった。
自分たちが蔑んだキュッリッキの不幸な生い立ちを、哀れんでいる余裕すらない。キュッリッキへ同情し、思いを馳せる者は一人もいなかった。今はただ、憧れていた2人の冷たい態度に、恐怖して怯えきっていた。
少女たちの様子を見て、ベルトルドは不快そうに目を眇める。
「貴様たちは気づいていたか? なぜ同じ召喚スキル〈才能〉を持つ者が同い年なのか。誕生日も同じだ。7月7日に貴様たちは生まれた。ここにいないキュッリッキも同じ日に生まれている」
えっ? と少女たちは隣同士を見やった。
「そして性別も同じ女だ。どうしてなんだろうな?」
苦笑気味に頷きながら、アルカネットは掌に巨大な水の球を作り出した。そしてそれを少女たちの頭上に放り投げると、ベルトルドが念力でその水の球を破壊した。
弾けた水が盛大に少女たちに降り注ぎ、
「きゃっ」
「な、なに!?」
小さな悲鳴を上げながら、少女たちは目をぱちくりさせて辺りをキョロキョロと見渡す。
「目が覚めましたか?」
パンパンっと手を打ち鳴らし、アルカネットが冷ややかな目を少女たちに向ける。
「ベルトルド様からのお話ですよ。しっかりお聴きなさい」
濡れた服が不快に身体に張り付くのを気にしつつ、次は何をされるか判らず、少女たちは口をつぐんでベルトルドを見る。
「生まれて初めてだろう? こんな野蛮で理不尽な扱いを受けるのは」
心や記憶を読まずとも、少女たちの顔にはっきりと書いてある。
なぜ自分が、こんなメにあわされるのか、と。
「召喚スキル〈才能〉を持って生まれてきた貴様たちは、当然のようにして国の保護のもと、贅沢三昧に暮らしてきた。何を生産するわけでもなく、貢献することもなく、無駄に贅沢をしていただけだ」
贅沢にくるまれて生きてきた少女たち。勉強をしなくてもいい、仕事をしなくてもいい。好きなように生きることが許されてきた。
「先日貴様たちに会ってもらったキュッリッキを、貴様たちはくだらない下心で苛めていたな。彼女を乞食呼ばわりし、あまつさえ手も上げていた」
ビクッとアンティアが身体を震わせる。――あの場にベルトルドはいなかった。では、あのキュッリッキが密告したのだろうか?
「彼女はアイオン族の生まれでな、生まれつき片方の翼が奇形なんだ。そのため生まれてすぐ両親から捨てられ、同族から疎まれ、国からも見放された。召喚スキル〈才能〉をもって生まれてきたのにな。だから、ずっと独りで生きてきた。類まれなその召喚スキル〈才能〉を活かし、傭兵として幼い頃から戦場を渡り歩き、あらゆる仕事をこなしてきた。無能な貴様たちが、召喚スキル〈才能〉を持っているという理由だけで、安全な場所でヌクヌクと贅沢を謳歌している頃、キュッリッキは弱音も吐かずに生きてきたんだ」
「そんなくだらないあなたがたが、彼女を乞食などと蔑む資格などないのですよ」
ベルトルドとアルカネットの声の冷たさに、少女たちは心底震え上がった。
自分たちが蔑んだキュッリッキの不幸な生い立ちを、哀れんでいる余裕すらない。キュッリッキへ同情し、思いを馳せる者は一人もいなかった。今はただ、憧れていた2人の冷たい態度に、恐怖して怯えきっていた。
少女たちの様子を見て、ベルトルドは不快そうに目を眇める。
「貴様たちは気づいていたか? なぜ同じ召喚スキル〈才能〉を持つ者が同い年なのか。誕生日も同じだ。7月7日に貴様たちは生まれた。ここにいないキュッリッキも同じ日に生まれている」
えっ? と少女たちは隣同士を見やった。
「そして性別も同じ女だ。どうしてなんだろうな?」
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