片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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召喚士編

episode624

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「まあ、アルカネット様よ」

「アルカネット様がいらしたわ」

 急にキャッキャとかしましい少女たちの上ずった声が、一気に室内に満ちる。

「アルカネット様自らおいでになるなんて」

「嬉しゅうございます」

「今日はツイてるわ」

「お静かに。――今日は君たちに会っていただきたい方を、お連れしてもらった」

 さざめく少女たちに手振りで静まるよう促し、シ・アティウスはキュッリッキに顔を向けた。

「召喚士の、キュッリッキ嬢だ」

 アルカネットはキュッリッキを前に押し出すようにして、少女たちの前に立たせる。

 何やら状況がつかめないキュッリッキは、酷く困惑したような表情で目の前の少女たちを見た。

 室内の視線が、ぐわっとキュッリッキに集中する。

 容姿は様々だが、皆同い年くらいだろうか。よく見たら、先日のトゥルーク王国のイリニア王女までいる。そして皆、召喚スキル〈才能〉を持っていることを立証する、その特殊な目もしていた。

 虹色の光彩が瞳にまといつく、その異質で神聖な目。

 アルケラを覗き視ることができる、まごう事なき召喚スキル〈才能〉を持つ者の証。

(アタシと同じ目をした女の子達がいっぱいだぁ……)

 ちょっと気圧されたように、キュッリッキはアルカネットの手をきゅっと握る。

 召喚スキル〈才能〉を持った人たちに、これまで会ったことはない。つい先日イリニア王女に会っているが、メルヴィンのことでいっぱいいっぱいで、実は王女の目に気づいていなかった。

「その方、先月の中継の時に広場で見ましたわ」

 亜麻色の髪をした少女が最初に声を上げる。

「わたくしも、この間の皇王様の舞踏会で見ました」

 黒髪の少女が同意するように首を振る。

 それを発端にして、再び室内は騒然と盛り上がり始めた。

 シ・アティウスはアルカネットと顔を見合わせ苦笑し合う。何故こうも女子というものは、騒がしいのだろうかと。

「では、我々は少し席を外そう。積もる話もありそうだしな」

「え? シ・アティウスさん?」

「私たちは席を外しています。リッキーさんはこちらのご婦人方と、おしゃべりを楽しんでいてくださいね」

「アルカネットさんまで!?」

 その場にキュッリッキを残し、シ・アティウスとアルカネットはササッと部屋を出て行ってしまった。

(えっと……一体どゆこと!?)

 ここへ連れてこられた理由は聞いていない。

 ベルトルドが命じたということだから、仕方なくデートをキャンセルして着いてきたのだ。とくにアルカネットは何も言わなかったし、いきなりおしゃべりを楽しめと言われても困る。

 キュッリッキは訳も判らず、一人残され――足元に隠れてフェンリルとフローズヴィトニルはいる――詰め寄ってくる少女たちに、タジタジとなってしまっていた。
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