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召喚士編
episode621
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「ふんふんふ~ん」
鼻歌を奏でながら、キュッリッキはご機嫌で服を選んでいた。ちなみに、声を上げて歌うことは禁じられている。
先日の美人コンテストで、ウルトラ級の破壊力を見せた音痴により、ベルトルドを含めたライオン全員からダメ出しを食らっていた。愛するメルヴィンすら合意したのだ。なので、鼻歌で我慢中である。
今日はメルヴィンと2人っきりでランチを食べに行こうとなって、オシャレのための服を選んでいた。
「なに着ていこうかな~。メルヴィンがドキドキしちゃうようなの選ばなきゃ」
ハンガーにかかったままの服をとって、身体にあてて姿見の鏡を覗き込む。
ベルトルドとアルカネットによって、ライオン傭兵団のアジトに持ち込まれたキュッリッキの衣類は、アジトの中には到底収めきれなかった。そのためベルトルドは隣の家を強引に買収し――住んでいた住人を即日追い出した――速攻改修させ、アジトの壁をぶち抜いて建物内から移動できるようにしてしまった。そして、そこに衣装やらなにやら運び込み、衣服類と家の管理人も別に雇っている。
たかが服のためにそこまでやるのか、とカーティスは呆れ果てたが、アジトに入りきらないんだからしょうがない。そう、自らを気合で納得させた。メンバーたちも2人の親バカぶりに呆れかえり、なにも言わなかった。
10分ほど悩み、アランチョ・マンダリーノ色のカシュクールタイプのワンピースを選んだ。これにセーフカラーのベルトとパンプスを合わせる。自身の髪の毛の色が金色なので、どうかなと思いつつも、今日のラッキカラーが黄色系だったのでこれに決めた。
衣装部屋の隣には、着替えやメイクをするための部屋も設置されている。そこで、この衣装などの管理を任されているメイドのヨンナに、髪の毛のセットや化粧を手伝ってもらった。
「よくお似合いですよ、お嬢様」
「えへへ、ありがと」
こうしていると、ベルトルド邸にいた頃と変わらないかも、とキュッリッキは思った。
「キューリちゃーん、アルカネットさんがきたわよぉ~」
「え?」
マリオンがヌッと顔を出し、アルカネットが会いに来たと報せてくれた。
「うーん、なんでアルカネットさんがきたの?」
「さぁ…? まぁ、とにかくキューリちゃん呼んできてってぇ言われたわあ」
「ふーん…」
アタシ用事ないのになあ、などと薄情なことを呟く。
首をかしげつつキュッリッキは急いで髪をまとめてもらうと、マリオンと共にアジトの建物に戻った。
「アルカネットさーん」
玄関ホールに佇むアルカネットを、階段を駆け下りながら呼ぶ。すぐに優しい笑顔が出迎えてくれた。
「リッキーさん」
眩しげに目を細め、アルカネットは駆け下りてきた少女を優しく抱きとめた。
「綺麗にオシャレしていますね。どこかへ行く予定だったのですか?」
「メルヴィンとランチを食べにくの」
嬉しそうに言うキュッリッキに、アルカネットはどことなく寂しげな笑みを向ける。
「そうでしたか。申し訳ありませんが、ランチはまた後日にしていただけませんか?」
「え? どうして?」
鼻歌を奏でながら、キュッリッキはご機嫌で服を選んでいた。ちなみに、声を上げて歌うことは禁じられている。
先日の美人コンテストで、ウルトラ級の破壊力を見せた音痴により、ベルトルドを含めたライオン全員からダメ出しを食らっていた。愛するメルヴィンすら合意したのだ。なので、鼻歌で我慢中である。
今日はメルヴィンと2人っきりでランチを食べに行こうとなって、オシャレのための服を選んでいた。
「なに着ていこうかな~。メルヴィンがドキドキしちゃうようなの選ばなきゃ」
ハンガーにかかったままの服をとって、身体にあてて姿見の鏡を覗き込む。
ベルトルドとアルカネットによって、ライオン傭兵団のアジトに持ち込まれたキュッリッキの衣類は、アジトの中には到底収めきれなかった。そのためベルトルドは隣の家を強引に買収し――住んでいた住人を即日追い出した――速攻改修させ、アジトの壁をぶち抜いて建物内から移動できるようにしてしまった。そして、そこに衣装やらなにやら運び込み、衣服類と家の管理人も別に雇っている。
たかが服のためにそこまでやるのか、とカーティスは呆れ果てたが、アジトに入りきらないんだからしょうがない。そう、自らを気合で納得させた。メンバーたちも2人の親バカぶりに呆れかえり、なにも言わなかった。
10分ほど悩み、アランチョ・マンダリーノ色のカシュクールタイプのワンピースを選んだ。これにセーフカラーのベルトとパンプスを合わせる。自身の髪の毛の色が金色なので、どうかなと思いつつも、今日のラッキカラーが黄色系だったのでこれに決めた。
衣装部屋の隣には、着替えやメイクをするための部屋も設置されている。そこで、この衣装などの管理を任されているメイドのヨンナに、髪の毛のセットや化粧を手伝ってもらった。
「よくお似合いですよ、お嬢様」
「えへへ、ありがと」
こうしていると、ベルトルド邸にいた頃と変わらないかも、とキュッリッキは思った。
「キューリちゃーん、アルカネットさんがきたわよぉ~」
「え?」
マリオンがヌッと顔を出し、アルカネットが会いに来たと報せてくれた。
「うーん、なんでアルカネットさんがきたの?」
「さぁ…? まぁ、とにかくキューリちゃん呼んできてってぇ言われたわあ」
「ふーん…」
アタシ用事ないのになあ、などと薄情なことを呟く。
首をかしげつつキュッリッキは急いで髪をまとめてもらうと、マリオンと共にアジトの建物に戻った。
「アルカネットさーん」
玄関ホールに佇むアルカネットを、階段を駆け下りながら呼ぶ。すぐに優しい笑顔が出迎えてくれた。
「リッキーさん」
眩しげに目を細め、アルカネットは駆け下りてきた少女を優しく抱きとめた。
「綺麗にオシャレしていますね。どこかへ行く予定だったのですか?」
「メルヴィンとランチを食べにくの」
嬉しそうに言うキュッリッキに、アルカネットはどことなく寂しげな笑みを向ける。
「そうでしたか。申し訳ありませんが、ランチはまた後日にしていただけませんか?」
「え? どうして?」
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