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召喚士編
episode619
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温泉旅行から帰ってすぐ宰相府へ出仕したベルトルドは、デスクに落ち着く前に皇王からの呼び出しを受けた。
急いでグローイ宮殿の謁見の間に入ると、挨拶もなしに第一声が、
「ばっかもーーーーーーーん!!!」
そう謁見の間に轟く大声で、皇王から怒鳴られたのだ。一緒に来ていたリュリュは、思わず首をすくめてしまった。
「全くお前は加減というものをしないからケシカラン! 我が国に敵対していない国の首都を吹っ飛ばしてどういうつもりじゃ!!」
玉座から身を乗り出して、唾を飛ばしながら皇王は怒鳴った。めったにない剣幕である。
一瞬ベルトルドは何のことかと、不思議そうに首をかしげた。
まるで気づいていないベルトルドに、リュリュがそっと告げる。
ライオン傭兵団に舞い込んだ王女の護衛仕事の件、そして、キュッリッキが突然会議室に乗り込んできてベルトルドを連れ出した件。それによってもたらされた、ブロムストランド共和国の悲劇。
温泉旅行で留守にしていた数日の間に、余すことなく全て、皇王に報告されていたようだ。
「………んーっと、結果オーライ?」
きょとーんとした表情を浮かべ、両手を上げて降参する。
まるで反省の色なし、悪いことをしたという自覚なし、少しも謝ろうという気のないベルトルドの態度。
普段ベルトルドに、能無しボケジジイなどと面と向かって言われているが、気にもしていないので好きなように言わせていた。が、今回ばかりは本気で怒っていた。何故なら、外交問題どころではないからである。
いきなり国を飛び出し、首相ごと首都を吹っ飛ばしたというではないか。
首都にいたブロムストランド共和国の人々の証言から、たった一人のサイ《超能力》使いに攻撃されたことは、すぐに判明した。
短時間で首都を吹っ飛ばせるサイ《超能力》使いなど、そうはいない。
世界中の人々が真っ先に思い浮かべるのは、ハワドウレ皇国の副宰相だ。ベルトルドのサイ《超能力》の実力は、周知の事実である。何せ、歴史的にも類を見ないOverランクの持ち主だ。
しかし、何故ハワドウレ皇国の副宰相が、宣言もなく、単独で他国の首都を吹き飛ばすのか、激しい疑問をそこに投げかける。
また、戦争が始まるのではないかと、世界中の人々が不安に陥るのだ。先月モナルダ大陸で戦争が起きたばかりで、今度はウエケラ大陸かと。
あずかり知らなかった事とはいえ、これ以上不穏な噂を広めるわけにはいかない。
皇王の勅命で、この一件のもみ消し処理に、いま大勢の外交官やら報道官たちが脱兎の如く走り回っていた。
世界中に知れ渡る前に、水際で食い止めるのだ。
「お前みたいな大馬鹿者は、反省しながら宮殿の全トイレの掃除でもしちょれ!」
かくしてベルトルドは一週間にわたり、仕事が終わってからグローイ宮殿の全トイレ掃除を命じられたのだった。
「あの宮殿にトイレがいくつあると思っているんだ!! 自慢だが俺は掃除なんかしたこともないしトイレなんて掃除したことないんだ! それが仕事終わって一人でできるわけなかろう? 過労死させる気かっ」
「死ねばいいんですよ」
「ガルル」
急いでグローイ宮殿の謁見の間に入ると、挨拶もなしに第一声が、
「ばっかもーーーーーーーん!!!」
そう謁見の間に轟く大声で、皇王から怒鳴られたのだ。一緒に来ていたリュリュは、思わず首をすくめてしまった。
「全くお前は加減というものをしないからケシカラン! 我が国に敵対していない国の首都を吹っ飛ばしてどういうつもりじゃ!!」
玉座から身を乗り出して、唾を飛ばしながら皇王は怒鳴った。めったにない剣幕である。
一瞬ベルトルドは何のことかと、不思議そうに首をかしげた。
まるで気づいていないベルトルドに、リュリュがそっと告げる。
ライオン傭兵団に舞い込んだ王女の護衛仕事の件、そして、キュッリッキが突然会議室に乗り込んできてベルトルドを連れ出した件。それによってもたらされた、ブロムストランド共和国の悲劇。
温泉旅行で留守にしていた数日の間に、余すことなく全て、皇王に報告されていたようだ。
「………んーっと、結果オーライ?」
きょとーんとした表情を浮かべ、両手を上げて降参する。
まるで反省の色なし、悪いことをしたという自覚なし、少しも謝ろうという気のないベルトルドの態度。
普段ベルトルドに、能無しボケジジイなどと面と向かって言われているが、気にもしていないので好きなように言わせていた。が、今回ばかりは本気で怒っていた。何故なら、外交問題どころではないからである。
いきなり国を飛び出し、首相ごと首都を吹っ飛ばしたというではないか。
首都にいたブロムストランド共和国の人々の証言から、たった一人のサイ《超能力》使いに攻撃されたことは、すぐに判明した。
短時間で首都を吹っ飛ばせるサイ《超能力》使いなど、そうはいない。
世界中の人々が真っ先に思い浮かべるのは、ハワドウレ皇国の副宰相だ。ベルトルドのサイ《超能力》の実力は、周知の事実である。何せ、歴史的にも類を見ないOverランクの持ち主だ。
しかし、何故ハワドウレ皇国の副宰相が、宣言もなく、単独で他国の首都を吹き飛ばすのか、激しい疑問をそこに投げかける。
また、戦争が始まるのではないかと、世界中の人々が不安に陥るのだ。先月モナルダ大陸で戦争が起きたばかりで、今度はウエケラ大陸かと。
あずかり知らなかった事とはいえ、これ以上不穏な噂を広めるわけにはいかない。
皇王の勅命で、この一件のもみ消し処理に、いま大勢の外交官やら報道官たちが脱兎の如く走り回っていた。
世界中に知れ渡る前に、水際で食い止めるのだ。
「お前みたいな大馬鹿者は、反省しながら宮殿の全トイレの掃除でもしちょれ!」
かくしてベルトルドは一週間にわたり、仕事が終わってからグローイ宮殿の全トイレ掃除を命じられたのだった。
「あの宮殿にトイレがいくつあると思っているんだ!! 自慢だが俺は掃除なんかしたこともないしトイレなんて掃除したことないんだ! それが仕事終わって一人でできるわけなかろう? 過労死させる気かっ」
「死ねばいいんですよ」
「ガルル」
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