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美人コンテスト編
episode609
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桔梗の間に場所を移した4人は、部屋へ入ると鍵をかけ、そして。
「ちょっとあーたたち、なにしてくれてんのよっ!!」
リュリュを柱に縛り付けた。
サイ《超能力》で振りほどかれないよう、アルカネットが魔法で縄を封印する。
「真面目な話をするんでな、ベルトルド様に襲いかかって暴れないように、おとなしくしていてくれ」
無表情で言うシ・アティウスの横で、ベルトルドが子供のような表情で、にんまりと頬を緩めた。
「ふふーん、露天風呂入ろーっと」
「おのれ、縄解きなさいよっ!」
ジタバタジタバタ、足だけを暴れさせ、リュリュはしっかりと柱に固定された。
ベルトルドは浴衣とパンツをパパッと脱ぐと、ベランダに出て瓶のような形をした露天風呂に飛び込む。
「極楽、極楽」
へりに背をあずけ、ベルトルドは嬉しそうににっこりと笑う。
アルカネットは脱ぎ散らかしてある浴衣とパンツを拾い上げ、丁寧に畳んでバスタオルと一緒に窓際に置くと、籐で編まれた椅子に座る。
「さて、本題に移ります」
皆が落ち着いたのを見て、シ・アティウスは畳の上に座る。
「他国の召喚スキル〈才能〉を者たちを、ハーメンリンナに全て集めることができたと、今朝連絡が入りました」
「お、ようやくか」
ベルトルドが若干身を乗り出して頷く。
「渋る国もあったようですが、あなたの名前を出すと、すんなり差し出したようです」
「さすが俺。威厳のオーラが、名前から滲み出しているんだな」
これにはリュリュもアルカネットも、肩をすくめるにとどめた。
「一度しっかりと見極めを行い、それが出来たら行動に移せます」
「うむ」
「そしてこれは、私からの要請ですが」
「うん?」
「ケレヴィルの所長の座を譲っていただきたい」
これにはアルカネットが腰を浮かせる。
「出すぎではないですか、シ・アティウス」
「まて、アルカネット。出世欲じゃあなかろう、理由を言ってみるがいい」
ベルトルドはヘリに両腕でもたれ、面白そうにシ・アティウスを見る。
「あなたの計画を進めやすくするためですよ。今の私は一介の研究者にしか過ぎません。ほかの研究者たちや施設の使用に、いちいちあなたの承認がいる。それに、私が触れることのできない秘匿情報も自由に閲覧出来るし、解明作業も捗るからな」
「確かにそうだ」
うんうん、とベルトルドは頷く。
「まあ、用事が済めばケレヴィルの所長の座なんぞ、必要なくなるしな。それに、現状お前に全て丸投げしてるから、所長がお前でも不都合ないし」
「良いのですか?」
困惑する顔を向けるアルカネットに、ベルトルドは穏やかに微笑んだ。
「知りたいことの殆どは、レディトゥス・システムでほぼ判ったしな」
「……」
「案じるな、アルカネット。所長をシ・アティウスに任せても、ケレヴィルを自由にできる権限はそのまま行使できる」
「それは、そうですが…」
「シ・アティウス、お前に所長を譲渡する手続きは、ハーメンリンナに戻ったらすぐ行おう。リュー、書類を用意しとけよ」
「あいよ」
「ありがとうございます」
「お前のフィールドワークに、ケレヴィルは大いに役立つからな。俺の用事はほぼ済んでいる」
「そうですね」
ベルトルドは顔を空へ向ける。
薄水色に朱色を滲ませ、すでに陽も陰り始めていた。
「楽しい休暇も、これで最後だな。ハーメンリンナに戻れば、楽しくもない業務に忙殺されつつ、計画の進行が待っている」
空を見つめる青灰色の瞳に、複雑な色が挿す。
「31年か…。もうすぐ、もうすぐだ…」
ベルトルドの呟きに、アルカネットはハッとすると、表情を悲しげに歪ませ俯いた。そんな2人を見て、リュリュもやるせない顔をする。
シンッと静まり返る桔梗の間に、
「ハラヘッターーーー!」
ヴァルトの元気な声が聞こえてきて、4人は揃って深々とため息をついた。
「ちょっとあーたたち、なにしてくれてんのよっ!!」
リュリュを柱に縛り付けた。
サイ《超能力》で振りほどかれないよう、アルカネットが魔法で縄を封印する。
「真面目な話をするんでな、ベルトルド様に襲いかかって暴れないように、おとなしくしていてくれ」
無表情で言うシ・アティウスの横で、ベルトルドが子供のような表情で、にんまりと頬を緩めた。
「ふふーん、露天風呂入ろーっと」
「おのれ、縄解きなさいよっ!」
ジタバタジタバタ、足だけを暴れさせ、リュリュはしっかりと柱に固定された。
ベルトルドは浴衣とパンツをパパッと脱ぐと、ベランダに出て瓶のような形をした露天風呂に飛び込む。
「極楽、極楽」
へりに背をあずけ、ベルトルドは嬉しそうににっこりと笑う。
アルカネットは脱ぎ散らかしてある浴衣とパンツを拾い上げ、丁寧に畳んでバスタオルと一緒に窓際に置くと、籐で編まれた椅子に座る。
「さて、本題に移ります」
皆が落ち着いたのを見て、シ・アティウスは畳の上に座る。
「他国の召喚スキル〈才能〉を者たちを、ハーメンリンナに全て集めることができたと、今朝連絡が入りました」
「お、ようやくか」
ベルトルドが若干身を乗り出して頷く。
「渋る国もあったようですが、あなたの名前を出すと、すんなり差し出したようです」
「さすが俺。威厳のオーラが、名前から滲み出しているんだな」
これにはリュリュもアルカネットも、肩をすくめるにとどめた。
「一度しっかりと見極めを行い、それが出来たら行動に移せます」
「うむ」
「そしてこれは、私からの要請ですが」
「うん?」
「ケレヴィルの所長の座を譲っていただきたい」
これにはアルカネットが腰を浮かせる。
「出すぎではないですか、シ・アティウス」
「まて、アルカネット。出世欲じゃあなかろう、理由を言ってみるがいい」
ベルトルドはヘリに両腕でもたれ、面白そうにシ・アティウスを見る。
「あなたの計画を進めやすくするためですよ。今の私は一介の研究者にしか過ぎません。ほかの研究者たちや施設の使用に、いちいちあなたの承認がいる。それに、私が触れることのできない秘匿情報も自由に閲覧出来るし、解明作業も捗るからな」
「確かにそうだ」
うんうん、とベルトルドは頷く。
「まあ、用事が済めばケレヴィルの所長の座なんぞ、必要なくなるしな。それに、現状お前に全て丸投げしてるから、所長がお前でも不都合ないし」
「良いのですか?」
困惑する顔を向けるアルカネットに、ベルトルドは穏やかに微笑んだ。
「知りたいことの殆どは、レディトゥス・システムでほぼ判ったしな」
「……」
「案じるな、アルカネット。所長をシ・アティウスに任せても、ケレヴィルを自由にできる権限はそのまま行使できる」
「それは、そうですが…」
「シ・アティウス、お前に所長を譲渡する手続きは、ハーメンリンナに戻ったらすぐ行おう。リュー、書類を用意しとけよ」
「あいよ」
「ありがとうございます」
「お前のフィールドワークに、ケレヴィルは大いに役立つからな。俺の用事はほぼ済んでいる」
「そうですね」
ベルトルドは顔を空へ向ける。
薄水色に朱色を滲ませ、すでに陽も陰り始めていた。
「楽しい休暇も、これで最後だな。ハーメンリンナに戻れば、楽しくもない業務に忙殺されつつ、計画の進行が待っている」
空を見つめる青灰色の瞳に、複雑な色が挿す。
「31年か…。もうすぐ、もうすぐだ…」
ベルトルドの呟きに、アルカネットはハッとすると、表情を悲しげに歪ませ俯いた。そんな2人を見て、リュリュもやるせない顔をする。
シンッと静まり返る桔梗の間に、
「ハラヘッターーーー!」
ヴァルトの元気な声が聞こえてきて、4人は揃って深々とため息をついた。
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