片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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美人コンテスト編

episode607

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「そういえば、こんな風にみんなで旅行に来たのは初めてですね」

「そういえばそうだねえ」

「オレたちは仕事であちこちへ行くから、改まって旅をするっていう話は、自然とでないですし」

「アジトでのんびりゴロゴロしてるほうがイイしネ~」

「ですね」

 メルヴィンは後ろを振り向いて、柔らかい陽射しを受ける庭園を見つめる。ここは故郷の風景によく似ているせいか、ホッとする気持ちになった。

「もう明日には、帰らないといけないんですね。楽しいと、時間はあっという間です」

「ホント、そうだね」

 ルーファスは穏やかな表情で頷いた。

「今度旅をするときは、キューリちゃんと2人っきりで行かないと」

 ウィンクするルーファスを見て、メルヴィンは顔を赤らめる。

「そ、そうですねっ」

(メルヴィン純朴だなあ)

 共に30歳になるが、自分にはもうナイものだなあ、などとルーファスは思ってしまう。この純粋さは、恋愛初体験のキュッリッキにとって好ましいものであり、この先2人のペースで愛を育んでいくのだろう。

「保護者付きだと、ラブラブさせてくれなくて、お邪魔虫すぎ」

 これでもかとキュッリッキにキスし放題のベルトルドを見て、ルーファスは肩をすくめた。



 昼食休憩を挟んで、テーブルテニス大会は続いた。

 準決勝に残ったのは、キュッリッキ、リュリュ、ベルトルド、アルカネットの4人で、ライオン傭兵団の予想を大きく外すメンツだった。

 このままなら、キュッリッキが優勝する確率が上がるとギャリーたちは予想した。ベルトルドかアルカネットと当たれば、あの2人は絶対手を抜く。いや、わざと負ける。

 ところがまたまた予想を覆し、相手はリュリュとなり、サックリと敗れ去ったのだ。

「あーんもお、リュリュさん強いんだもーん!」

 2セット取られて負けたキュッリッキは、悔しがって悔しがって、ギャリーの頭をぽかすか叩いた。

「オレの頭に八つ当たりすんなや…」

 マッサージレベルの威力なので、ギャリーはゲッソリしながらされるがままでいた。

「人は見掛けによらないよなあ」

「オカマは何をしても恐るべし、って目の当たりにした気分だぜ…」

 おやじ衆に惨敗したライオン傭兵団は、見学スペースに集まって愚痴と決勝戦の予想を言い合っていた。

「ベルトルド様とアルカネットさんが、準決勝で当たったのはモッタイなかったよねえ~」

「どうせなら、決勝戦で観たかったよね」

「でもキューリがどっちかと準決勝であたってたら、間違いなく片方敗退してただろうしよお」

「やる前から棄権してそーダヨネ」

「アルカネットさんが負けたのは、ナンカ納得」

「おっさんの、あの執念はフツーじゃねえし」

「愛の差とか言って、勝ち誇り方も尋常じゃなかったしな…」

「まあでも、決勝戦はオカマパワー炸裂して、リュリュさんが勝つと思うな~」

「尻の穴を死守する、とか喚いてたし、御大が勝つんじゃね」

「今日は賭けに全然なってなかったしな、御大たちの試合で賭けしなおすか」

「サンセー、オレはリュリュさんに」

「あたしぃは~、ベルトルド様にしよっかなぁ」

「ボクはリュリュさん」

「ちょいマテ、メモする」

 取りまとめ役のザカリーが、手帳に急いで書き込んでいった。

「リッキーはどちらに賭けますか?」

「アタシ興味ないから、温泉入ってくる~。汗かいちゃったし」

「あたしも行くわ、リッキー」

 ファニーと連れたって、キュッリッキは出て行ってしまった。
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