片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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美人コンテスト編

episode605

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「オッサンとメルヴィンの試合、ハジマッタナ」

 2人の試合以外にも、カーティス対マリオン、ハドリー対シビルの試合もやっている。しかしギャラリー達は、ベルトルド対メルヴィンの台しか見ていない。

 悲しいくらい地味に始まったサービスも、2人のフットワークの軽さや、何時止むか判らないほどのラリーで白熱している。

 点を取ろうと仕掛けているが、お互いそれをやり返してキリがない。小さな弾のぽこぽこと打ち合う音が、リズムカルにホールの中に響きあう。

 ベルトルドもメルヴィンもマジ顔で打ち合っているので、外野はツッコむ暇がない。

「なんか、2人とも凄いんだあ~」

「オトナ気ありませんね」

 試合を見つめるキュッリッキを膝の上に抱きかかえ、アルカネットは嘲笑うように言う。

「アルカネットさんは、ベルトルドさんの応援してあげないの?」

「私はリッキーさんの応援しかしませんよ」

 にっこり言われて、キュッリッキは「ふにゅ~」と困り顔で肩をすくめた。



「いい加減くたばれ青二才っ!」

「負けるわけにはいきませんっ!」

 ラリーは止まらず、お互い一点すら取れていない。

(何がなんでも負けんぞおおおお)

 かつてないほど意地になりまくるベルトルドは、嫉妬の炎をメラメラ燃やし、心の中でメルヴィンに吠えまくる。

(中々キメられないなあ。――うーん、そろそろ腕が疲れてきた…)

 一方メルヴィンも手を緩めないが、粘りまくるベルトルドに辟易してきていた。

(俺だけの愛しいリッキーを、リッキーを……奪ったコイツだけは、絶対に許さん!)

 ライオン傭兵団に入れるために迎えに行って、そしてひと目で惚れた。本気で愛してしまった。以来女遊びも辞め、キュッリッキだけに愛の全てを捧げている。

 愛していると最初に告白したのは自分だし、キュッリッキの全てを受け入れているのも自分だ。

 溢れんばかりに可愛がり、慈しみ、大事に大切にしているのも自分なのだ。

 それなのにキュッリッキはメルヴィンに恋をしてしまい、自分のことは父親としてしか見てくれない。

 悔しい、心のなかに寒風が吹き荒れるほど、心底悔しすぎる。

 そして、メルヴィンが憎い、憎たらしすぎる。

「貴様なんぞに絶対に負けんわああああっ!」

 嫉妬と憎しみのこもったベルトルドのスマッシュが、ラリー開始から6分後、炸裂して華麗にキマった。
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