片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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美人コンテスト編

episode602

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(おやじ衆――ベルトルド、アルカネット、リュリュ、シ・アティウスは、どうせ相手にならねーレベルだろうな)

(運動神経とは無縁そうだしね)

 特殊スキル〈才能〉持ちだらけなので、スキル〈才能〉使用禁止がルールに設けられる。

 ライオン傭兵団念話ネットワークでは、ベルトルドらおやじ衆は眼中になく、更にキュッリッキや魔法使い組も眼中になく、勝敗の行方はノーキン組みを中心に盛り上がっていた。

 女将のシグネに頼んで大きな白い紙を用意してもらい、くじ引きで各自好きなところに名前を書いていく。

「トーナメント方式ですか。とても楽しそうでございますね」

 シグネは使用人たちにボードを用意させると、トーナメント表を貼り付けて、見えやすいようにしてくれた。

 宿の一角に設けられたテーブルテニス室は広々として、立派な台が3つ並んでいる。

 見学出来る休憩スペースには、宿のほうで飲み物や菓子などが用意された。

「では、僭越ながらわたくしが、進行をつとめさせていただきますね!」

 意気揚々とアリサがトーナメント表の前に立つ。

「まず1組目、お嬢様とタルコット様、2組目はルーファス様とシ・アティウス様、3組目はランドン様とマーゴット様。各組で台についてくださいませ」

「頑張ってください、リッキー」

「えへへっ、任せて!」

 メルヴィンに励まされ、キュッリッキは輝くような笑顔を向けた。その笑顔を見た瞬間、

「頑張るんだぞ俺のリッキー!!」

「頑張ってください私のリッキーさん!」

 ベルトルドとアルカネットがメルヴィンを撥ね退け、キュッリッキに左右から飛びついた。

「……ンもぉ」

 ここぞとばかりに頬にキスの雨を降らしてくる2人に、げっそりとしたため息をこぼすキュッリッキだった。



 いつもの光景を呆れながら眺めつつ、のーきん組は勝負の行方などを語り合っていた。

「速攻終わりそうなのはキューリ、めんどくさそうなのはランドンとこ、そこそこ勝負になりそうなのはルーか」

 組み合わせを見ただけでザカリーが勝敗を予想すると、ギャリーもヴァルトも同意の頷きをした。

「キューリのあの細腕じゃあ、ちっこい玉の打ち合いでもタルコット相手じゃ無理だろうしよ」

「でもお、実は凄いんですよね~」

「だなあ」

 ファニーとハドリーが、意味深な笑顔をする。

「なぬ」



(キューリが相手か…。どうせマトモなレシーブもできないだろうし、数回ラリーしたらすぐ決めちゃうか)

 負けてキュッリッキがガン泣きするのはイヤなので、タルコットは優しく勝つ算段を考えていた。

 別に恋心はわかないし、メルヴィンと恋人同士になって嫉妬もない。美人の妹が出来たみたいで、可愛く思っているくらいだ。

 そうは思っても試合は試合、勝負はきっちりつける。しかし、試合が開始されると、その考えは甘かったことを早々に思い知ることになった。

「……え?」

 打ち返されたボールに反応できず、タルコットはパチクリと瞬いた。思わず後ろを振り返り、床に転がるボールを見つめる。そして前を向くと、にんまりとした表情をするキュッリッキがいた。

「アタシのこと甘く見てたでしょ! テーブルテニスは得意なんだからっ!」

 浴衣の袖をまくり、二の腕で力瘤を作ってみせる。生憎瘤はよく見えなかったが。

「リッキーのやつ、相性がいいのかどうか、テーブルテニスがめっちゃ強いんっすよ」

「そうなのよね~。それに、集中しているときだと、やたら怪力出すんだから吃驚よ。普段非力なくせに」

 ハドリーとファニーはニヤニヤと、キュッリッキとタルコットの試合を見ていた。

 ルーファスたちも思わず手を止めてしまう。

 タルコットのサービスで開始された2人の試合は、軽いラリーからいくと思いきや、レシーブしたキュッリッキのボールは、スピードドライブで即決まったのだ。
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