片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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美人コンテスト編

episode594

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(どっ、どうしよう……、メルヴィンと2人っきり!…なの)

 普段2人っきりでいても、こんな風に心臓がドクンドクンッと早鐘のように鳴ることはない。それは、服を着ているからだ。今はお互い裸でいる。それで余計に恥ずかしいのだ。

 メルヴィンはこちらを向いて座っている。

 空はすでに濃紺色に落ちていて、月明かりと星明かりのみが地上に降り注いでいる。そして、露天風呂の周りには、細長い紙のシェイドをかぶせられた明かりだけが、柔らかにベダンダを灯していた。

 その程度の明るさしかないので、湯の中のメルヴィンの裸は見えづらい。キュッリッキの身体も、湯から出ている部分しか見えないはずだ。

「リッキー?」

 声をかけられ、キュッリッキはビクッと身体を震わせる。

(メルヴィンのほうを向いたら、み、見えちゃう……かも…)

 胸の前で腕を交差させているが、小さなおっぱいが――悔しいが小さいと自身も認めている――見えてしまうかもしれない。

 それは、猛烈に恥ずかしいのだ。しかしこうしてずっと、メルヴィンに顔を背けたままでいるのはマズイ。

 散々迷った挙句、キュッリッキはのろのろとした動きで、メルヴィンのほうへ身体の向きを変えた。

 おずおずと上目遣いでメルヴィンを見ると、優しく微笑むメルヴィンと目があう。

「すみません、いきなり押し掛けてきたりして。びっくりさせちゃいましたね」

「ううん、別に大丈夫、なの」

 すごく驚いたが、メルヴィンだから嬉しいのは本当だ。その喜びを素直に表したいのに、裸じゃなければ、すぐにでもメルヴィンの胸に飛び込んで、ウンと甘えられるのに。もっとおっぱいが大きければ、堂々と。

 こんな身体で生まれてきたことを、心底憎々しく思う。

「混浴風呂もあるらしいんだけど、そこだと2人っきりになるのは絶対無理だから……。こうして2人で温泉に入れて良かったです」

 絶対無理な理由、それはベルトルドとアルカネットのことだ。それを暗に言っていて、キュッリッキも深く納得する。100%邪魔しに来るのは目に見えているからだ。

 同じ人物たちを思い浮かべていて、2人は同時に吹き出した。



 屈託なく笑うキュッリッキの顔を見て、メルヴィンはホッとした思いだ。

 いくら恋人同士だからといって、いきなり入浴中に訪れては、泣き喚かれても反論できないところである。

 恥ずかしがりながらも、こうして受け入れてくれたことに、メルヴィンは心底感謝した。

(今夜は、色っぽいな、リッキー…)

 うなじから肩にかけ、白い肌は蒸気してほんのり薔薇色に染まっている。

(ああ、そっか)

 普段長い髪が背中を覆っているが、今はアップにしてまとめている。そのせいか、匂い立つような大人の色香をまとっているのだ。

 もとより美しい顔立ちだ。恥ずかしさに伏せ目がちになる表情も、驚く程婀娜めいて見える。

 メルヴィンはたまらず右腕を伸ばし、キュッリッキの腰に手を回すと、いっきに自分のほうへ抱き寄せた。

「キャッ」

 キュッリッキはいきなりのことに、慌てて両手をメルヴィンの胸にあてる。湯が大きくバシャリと跳ねた。

「メッ、メルヴィン…」

 驚いて見上げてくるキュッリッキに、メルヴィンは照れくさそうに笑った。

「今日は一段と綺麗です、とっても」

「メルヴィン」

 2人はうっとりと見つめ合い、そして唇を重ねた。
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