片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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美人コンテスト編

episode584

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 大陸鉄道よりも若干緩慢な速度で走る汽車は、車窓にのどかな風景を映し出しながら走る。雑談にわいていると2時間などあっという間で、気が付けばケウルーレに到着していた。

「景色がなんか、やったら田んぼばっか多かったな」

 率直な感想をザカリーが言うと、

「実は意外に知られていないが、市場を占める米の80%は、ここコケマキ・カウプンキ産のものだぞ。米大国でもあるな」

 汽車を降りながら、副宰相らしい表情でベルトルドが答える。そういう情報がスラッと出てくるあたりは、さすが国政を担っているだけのことはあるようだとザカリーは感心する。

「ほほー、そうなんっすね」

「一つ賢くなったな」

「うぃー…」

 御一行様はステーションを出ると、目の前の光景に目を真ん丸くした。

 対岸が霞んで見えるほどの巨大な穴が広がり、穴の規模からは小さく見える島が中心に浮いている。その島には一本の橋が繋がり、橋の手前には詰所と役人が立ち塞がっていた。

「うわあ…なにあれ~、凄いんだあ」

 感嘆した表情でキュッリッキは走り出し、穴の手前で柵に掴まり覗き込む。うっかり穴に落ちないように、高さ2メートルくらいの格子の柵が張り巡らされている。

 どのくらいの深さか判らないほど、穴の底は暗くて見えない。

「煙がちょっと、下からのぼってきてるかも」

 視界が遮られるほどではなかったが、うっすらとくゆるようにして、白い煙がちょこちょこ漂っていた。

「これは、噴火口かな」

 キュッリッキの横に並び穴を覗き込むと、のっそりとした口調でシ・アティウスが呟いた。

「ふんかこう?」

「火山の口だな。この底からマグマが噴き出してくる」

「噴火口の上に浮いてるんですか、ユリハルシラのあるあの島は!!」

 尻尾をピーンと立てて、シビルが仰天する。

「いきなり噴火しないでしょうね!?」

「だ、大丈夫じゃね?」

「ふーん、凄いところにあるんだね、ユリハルシラって」

「でもさ、そうするとヘンじゃね? 温泉って地中から湧き出るもんだろ。どう見てもあの島、宙に浮いてるようにしか見えねんだけど」

 ザカリーの指摘に、皆首をかしげた。

「どっかから、汲み上げてんじゃ?」

「んなモン見えねえけどなあ」

「運んでたりしてな」

「手間暇かかってますね…」

「それで入場規制してたりな」

「あんたたちー! 手続き終わったから行くわよ!」

 詰所で手続きをしていたリュリュが、柵に群がっている一同に怒鳴る。

 オカマが怒ってる、と胸中でボヤきながら、荷物を手にとり皆橋の前に駆け寄った。
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