片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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美人コンテスト編

episode581

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 グランバリ公国首都シェルテーレから、御一行様は汽車で6時間かけて港街ラーヘへ到着した。木の椅子に座りっぱなしで、腰が痛い、背中がなどと、皆口々に文句の合唱である。

 皆で夕食をとり、各自酒やつまみやらを買い込んで、コケマキ・カウプンキ行きの船が停泊する港に集合した。

 部屋割り担当を押し付けられていたリュリュが、同室になる2人組みを言って、印付きの案内用紙とカギを手渡していく。

 客用船室は全てツインルームしかない。

 リュリュが決めた組み合わせでどんどん船に乗り込んでいき、気が付けばそこにはリュリュとベルトルドの2人だけ。

 荷物と一緒にぽつーんと取り残されたベルトルドは、猛烈に嫌な予感がして、笑みを深めるリュリュの横顔を凝視した。

「やっと、今夜は2人っきりね、ベル」

 ンふっと甘い吐息を漏らすと、リュリュはねっとりとした視線をベルトルドに注ぐ。

「今夜のことを思うと、身体の疼きが止まらないのよ、アタシ」

 ベルトルドの顔が瞬時に青ざめた。

「ベルの熱ぅ~い暴れん棒を、アタシのアソコへ注ぎ込んで、激しく突いて突いて突いて突きまくって、アタシを天国までイカせてちょーだい」

 あの特極太な暴れん棒が、ついにナマでアタシの中に、と、リュリュの瞳はキラキラと輝いた。背後から逞しく尻の穴を突かれるシーンを妄想し、リュリュの頬は薔薇色に染まる。

 一方ベルトルドの魂は、すでに天国へ召される寸前である。しかしグッと耐えると、怖気と吐き気に襲われそうになる感覚を必死で振り払い、船に乗り込もうとするアルカネットのもとへスーパーダッシュで駆けつけた。

「アルカネットかセヴェリと同室にしてくれ!!」

 タックルで背後から抱きつかれたアルカネットは、均衡を崩して前を歩くセヴェリの背中に顔面ストライクした。

「………」

「アルカネット、俺を見捨てないでくれ! 貞操の危機だ!!」

 子供のようなベソ顔を向けてくるベルトルドを、絶対零度の冷ややかな視線で見つめると、アルカネットはリュリュの方へ顔を向けた。

「コレは私と一緒の部屋にしますから、あなたはセヴェリと一緒の部屋にしなさい」

「えええっ、嫌よぅ~~!」

 冗談じゃないわよっとリュリュは喚いたが、辺りに冷やりと霜が降り始めたため、リュリュはングっと口を噤んで首を縦に振った。



「リューのやつ、俺と同室とか冗談じゃないぞ全く!」

 あの時のことを思い出し、難を逃れたベルトルドはプンプン怒っていた。

「職場でもところかまわず食らいついてくるのだから、今更いいじゃありませんか」

「よかないわっ!!」

 ベルトルドは服を脱ぎ散らかしながら、憤然と怒鳴る。その脱ぎ散らかされた服をアルカネットが拾い、丁寧にシワを伸ばしながら、丁寧に折りたたむ。

 パンツ一枚だけになると、ベルトルドはベッドにドカリと座った。

「お前もいっぺんしゃぶりつかれてみろ! 恐ろしい口だぞ、あいつは!」

「せっかくですが遠慮しておきます。私にそんな趣味はありませんから」

「俺だってナイっ!」

 ジタバタ暴れるベルトルドにため息をつき、アルカネットは自分の旅行用鞄からパンフレットを取り出す。

「忙しくてあまりゆっくり見ていなかったでしょう、ユリハルシラの施設案内です」

 相手にする気ナシ、と顔に書いたアルカネットからパンフレットを受け取ると、ベルトルドは拗ねた顔でパンフレットを開いた。

 世界中の観光案内施設に配布されている、ケウルーレの温泉宿ユリハルシラのパンフレットだ。美麗な写真でアピールポイントを沢山載せている。

「良い宿だなあ~、変わった建築様式だ」

「ええ、建物の中では靴を脱いで、裸足で歩き回るそうですよ」

「ほほう」

 写真の中のモデルたちは、確かに裸足だ。

「岩風呂なんてものがあるぞ、ホラこれこれ、バスタブじゃなくて岩に穴掘ってるのかな? 丸っこい岩で囲んであるな、変わっている」

 ようやく機嫌を直し始めたベルトルドに、アルカネットは心底疲れた顔で苦笑した。
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