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美人コンテスト編
episode580
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「やっぱ、エグザイル・システムで飛べないってのは、不便なもんだな」
よっこらせ、とベッドに腰を下ろし、ギャリーは苦笑交じりにぼやいた。長時間木の椅子に座っていると腰が痛い。
「自由都市だからしょーがねーけど」
同室になったザカリーが、ブーツの紐を解きながら同意する。
ラーヘから旅客船に乗り換え、御一行様はそれぞれ割り振られた部屋に収まった。
豪華客船ではないため特別室というものはなく、簡素なベッドが2つ入っただけのツインしかない。ラーヘとコケマキ・カウプンキを往復するだけの客船だ。
「食堂はあんのかな、この船」
「あるらしいが、不味いとかリュリュさん言ってたな」
「乗ったことあるのかね」
「いや、噂で聞いたことがあるらしい」
「ほほう。まあ、あの人のそのへんの情報は、アテにしてよさそうだな」
「んだな。――ラーヘで酒やつまみやら買い込んできたし、汽車で疲れたからこのまま部屋でダラダラすっか」
「おういえ」
ギャリーとザカリーは、それぞれ紙袋からビール瓶や肴の入った箱を取り出し、すぐさま酒盛りを始めた。夕食はラーヘで食べてきている。
「ねーねー、オレも混ぜて~」
ノックもそこそこに、笑顔のルーファスが入ってきた。
「おう、座れや」
ルーファスはギャリーの隣に座ると、持ってきた紙袋からワインやチーズを取り出した。
「オレの相部屋シ・アティウスさんだから、逃げてきちゃった」
チーズをもぐもぐしながら、ルーファスはため息をつくような顔をする。
「持ってきた資料をベッドの上に広げて、黙々と目を通し始めてさあ。シーンと室内静まり返って酒盛りしづらいし、なんか疲れちゃうンダヨネー」
「あー判るワカル。旅のまっ最中なのに仕事し始めるやつ。白けるよな」
「やっぱこういう時は、酒でも飲んで雑談だよね」
ウンウンと頷き合う2人を見て、ギャリーは笑った。
3人は同郷で幼馴染だ。ハワドウレ皇国の山間にある、宿場町で3人は生まれた。
ギャリーとザカリーがスキル〈才能〉を活かしてハワドウレ皇国軍に入ることになり、自らのスキル〈才能〉が町にとって、あまり貢献することもないと思ったルーファスも町を離れた。
幼い頃から宮殿騎士に憧れていたのだ。
しかしサイ《超能力》というレアスキル〈才能〉であり、宮殿騎士に求められるのは戦闘剣術スキル〈才能〉である。到底縁遠いものだったが、幼い頃から2人を相手に剣術は磨いていたし、サイ《超能力》を組み合わせた戦闘を自ら編み出していた。
そうした努力が実を結び、晴れて宮殿騎士となったルーファスだが、2人が軍を離れてカーティスの立ち上げる傭兵団に入ることが決まると、さっさと宮殿騎士を辞めてライオン傭兵団に入る。
憧れとは程遠い世界であったことが、未練を断ち切ったと本人は語るのだった。
「そういや、部屋割りでおっさん揉めてたろ。決着ついたんか?」
「貞操の危機とか喚いてたな」
「ああそれ、結局ベルトルド様とアルカネットさんが同室で落ち着いたみたい」
部屋割りを決めたのはリュリュで、ベルトルドとリュリュが同室になったのを、ベルトルドが半狂乱で拒否したのである。
アルカネットは連れてきたもう一人の使用人セヴェリと同室だったが、アルカネットかセヴェリと変えろとダダをこね、アルカネットは仕方なく、ベルトルドと同じ部屋で寝ることにしたのだ。
甘い夜が過ごせると張り切っていたリュリュは、不承不承セヴェリと同室に収まる。
「キューリは、まさかメルヴィンと一緒じゃねーよな…」
ザカリーは不満顔をルーファスに向ける。
「それはないみたいよ。メイドのアリサちゃんと一緒だって」
「それならイイ」
「別にキューリがメルヴィンと同室でもいいじゃねえか」
「そうそう。2人はまだ清い間柄よ?」
「よかねーよ! メルヴィンがその気になって、手を出すかもしれねーじゃん!」
「それはねーな。保証してもいいぜ」
ケタケタ笑いながら、ギャリーは断言した。ルーファスも笑顔で同意する。
「キューリちゃんにその気がないもの、これっぽっちもね。そんな女の子を無理矢理関係に持っていく甲斐性は、残念ながらメルヴィンにはないし」
「キューリを傷つけたくないって、理性を総動員して我慢してるようだしな。ホント頭が下がるわ、あいつにはよ」
「だねえ」
「面白くねーやつ…」
そう言いながらも、メルヴィンの誠実な面は認めているザカリーだった。
よっこらせ、とベッドに腰を下ろし、ギャリーは苦笑交じりにぼやいた。長時間木の椅子に座っていると腰が痛い。
「自由都市だからしょーがねーけど」
同室になったザカリーが、ブーツの紐を解きながら同意する。
ラーヘから旅客船に乗り換え、御一行様はそれぞれ割り振られた部屋に収まった。
豪華客船ではないため特別室というものはなく、簡素なベッドが2つ入っただけのツインしかない。ラーヘとコケマキ・カウプンキを往復するだけの客船だ。
「食堂はあんのかな、この船」
「あるらしいが、不味いとかリュリュさん言ってたな」
「乗ったことあるのかね」
「いや、噂で聞いたことがあるらしい」
「ほほう。まあ、あの人のそのへんの情報は、アテにしてよさそうだな」
「んだな。――ラーヘで酒やつまみやら買い込んできたし、汽車で疲れたからこのまま部屋でダラダラすっか」
「おういえ」
ギャリーとザカリーは、それぞれ紙袋からビール瓶や肴の入った箱を取り出し、すぐさま酒盛りを始めた。夕食はラーヘで食べてきている。
「ねーねー、オレも混ぜて~」
ノックもそこそこに、笑顔のルーファスが入ってきた。
「おう、座れや」
ルーファスはギャリーの隣に座ると、持ってきた紙袋からワインやチーズを取り出した。
「オレの相部屋シ・アティウスさんだから、逃げてきちゃった」
チーズをもぐもぐしながら、ルーファスはため息をつくような顔をする。
「持ってきた資料をベッドの上に広げて、黙々と目を通し始めてさあ。シーンと室内静まり返って酒盛りしづらいし、なんか疲れちゃうンダヨネー」
「あー判るワカル。旅のまっ最中なのに仕事し始めるやつ。白けるよな」
「やっぱこういう時は、酒でも飲んで雑談だよね」
ウンウンと頷き合う2人を見て、ギャリーは笑った。
3人は同郷で幼馴染だ。ハワドウレ皇国の山間にある、宿場町で3人は生まれた。
ギャリーとザカリーがスキル〈才能〉を活かしてハワドウレ皇国軍に入ることになり、自らのスキル〈才能〉が町にとって、あまり貢献することもないと思ったルーファスも町を離れた。
幼い頃から宮殿騎士に憧れていたのだ。
しかしサイ《超能力》というレアスキル〈才能〉であり、宮殿騎士に求められるのは戦闘剣術スキル〈才能〉である。到底縁遠いものだったが、幼い頃から2人を相手に剣術は磨いていたし、サイ《超能力》を組み合わせた戦闘を自ら編み出していた。
そうした努力が実を結び、晴れて宮殿騎士となったルーファスだが、2人が軍を離れてカーティスの立ち上げる傭兵団に入ることが決まると、さっさと宮殿騎士を辞めてライオン傭兵団に入る。
憧れとは程遠い世界であったことが、未練を断ち切ったと本人は語るのだった。
「そういや、部屋割りでおっさん揉めてたろ。決着ついたんか?」
「貞操の危機とか喚いてたな」
「ああそれ、結局ベルトルド様とアルカネットさんが同室で落ち着いたみたい」
部屋割りを決めたのはリュリュで、ベルトルドとリュリュが同室になったのを、ベルトルドが半狂乱で拒否したのである。
アルカネットは連れてきたもう一人の使用人セヴェリと同室だったが、アルカネットかセヴェリと変えろとダダをこね、アルカネットは仕方なく、ベルトルドと同じ部屋で寝ることにしたのだ。
甘い夜が過ごせると張り切っていたリュリュは、不承不承セヴェリと同室に収まる。
「キューリは、まさかメルヴィンと一緒じゃねーよな…」
ザカリーは不満顔をルーファスに向ける。
「それはないみたいよ。メイドのアリサちゃんと一緒だって」
「それならイイ」
「別にキューリがメルヴィンと同室でもいいじゃねえか」
「そうそう。2人はまだ清い間柄よ?」
「よかねーよ! メルヴィンがその気になって、手を出すかもしれねーじゃん!」
「それはねーな。保証してもいいぜ」
ケタケタ笑いながら、ギャリーは断言した。ルーファスも笑顔で同意する。
「キューリちゃんにその気がないもの、これっぽっちもね。そんな女の子を無理矢理関係に持っていく甲斐性は、残念ながらメルヴィンにはないし」
「キューリを傷つけたくないって、理性を総動員して我慢してるようだしな。ホント頭が下がるわ、あいつにはよ」
「だねえ」
「面白くねーやつ…」
そう言いながらも、メルヴィンの誠実な面は認めているザカリーだった。
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