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美人コンテスト編
episode570
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「ふむ……、まるで超音波のような声質ですね。普段小鳥のような愛らしい声が、どうやったらあんなに酷い歌声に変わるんだろう? 一般的な音痴の領域を、遥かに超越しているようだ」
シ・アティウスは冷静かつ、興味深そうに酷評を述べた。当然耳は塞いでいる。
「美少女イコール美声といった、勝手な思い込みを覆すほどの勢いですね」
隙間から音波攻撃(うたごえ)は容赦なく流れ込んでくるのだ。これは歌い終わるまで辛い。普段表情を浮かべることのない男の顔が、露骨に苦痛に歪んでいた。
「全くだわねえ。――ちょっとぉ、ベル、アル、大丈夫なのン?」
沈黙してしまったベルトルドとアルカネットの頬を交互にペチペチ叩きながら、リュリュはヤレヤレと頭を振る。リュリュは仮眠用の耳栓で防御をしているので、超音波は気持ち小さい音量になっていた。
現実を手放した2人は、魂が抜け去ったように目を真ん丸くして、口はぽかんと開けたまま肩を落としている。その目に愛するキュッリッキは映っているのだろうか?
「あらあら、小娘ったら、気持ちよさそうに歌っちゃってるわねえ。ホラ、ベルもアルも、ちゃんと応援したげなさいよ」
キュッリッキのことだというのに無反応である。よほどショックなのだろう。――音痴過ぎて。
「それにしても小娘の特技、っていうか無自覚な特技?って、歌うことだったのねン」
垂れ目を瞑ると、リュリュは困ったように苦笑した。
ステージ前のライオン傭兵団全員も、同じように驚愕の目をステージ上に注ぎまくっていた。
「あ…アレが、お嬢の特技なのか!?」
ギャリーは恐怖を満面にたたえ、両手でしっかり耳を塞いでいる。普段あんなに可愛い声で囀っているのに、ドコから出しているんだと慄くほど酷い。厳つい顔は苦悶に歪み、冷や汗がじんわりと額に浮かんだ。
「ねえねえ、カモメが海に墜落してるんだけど~?」
ルーファスは両人差し指で耳の穴を塞ぎ、海に次々と墜落していくカモメたちを痛ましそうに見つめていた。飛ぶ鳥も落とす音波攻撃である。
「サイ《超能力》の防御壁を~、易々と突き破っていくんだけどおおお」
真紅の口紅を塗った大きな唇をへの字に曲げて、マリオンは頭を激しく振った。
「魔法も降参です」
シビルは耳をパタッと閉じながら薄く笑う。
会場中、昏倒したり呻き声をあげる猛者たちでいっぱいになり、音波攻撃を食らって阿鼻叫喚地獄絵図だ。
しかしステージの上では、気持ちよさそうにご機嫌なまでの顔で、握り拳全開でキュッリッキは熱唱している。振り付けも惜しまずノリノリだ。
神秘的な美で観客たちを魅了した直後に、この世のものとは思えない音痴を超越したキュッリッキの歌声を、誰も止めることができなかった。
シ・アティウスは冷静かつ、興味深そうに酷評を述べた。当然耳は塞いでいる。
「美少女イコール美声といった、勝手な思い込みを覆すほどの勢いですね」
隙間から音波攻撃(うたごえ)は容赦なく流れ込んでくるのだ。これは歌い終わるまで辛い。普段表情を浮かべることのない男の顔が、露骨に苦痛に歪んでいた。
「全くだわねえ。――ちょっとぉ、ベル、アル、大丈夫なのン?」
沈黙してしまったベルトルドとアルカネットの頬を交互にペチペチ叩きながら、リュリュはヤレヤレと頭を振る。リュリュは仮眠用の耳栓で防御をしているので、超音波は気持ち小さい音量になっていた。
現実を手放した2人は、魂が抜け去ったように目を真ん丸くして、口はぽかんと開けたまま肩を落としている。その目に愛するキュッリッキは映っているのだろうか?
「あらあら、小娘ったら、気持ちよさそうに歌っちゃってるわねえ。ホラ、ベルもアルも、ちゃんと応援したげなさいよ」
キュッリッキのことだというのに無反応である。よほどショックなのだろう。――音痴過ぎて。
「それにしても小娘の特技、っていうか無自覚な特技?って、歌うことだったのねン」
垂れ目を瞑ると、リュリュは困ったように苦笑した。
ステージ前のライオン傭兵団全員も、同じように驚愕の目をステージ上に注ぎまくっていた。
「あ…アレが、お嬢の特技なのか!?」
ギャリーは恐怖を満面にたたえ、両手でしっかり耳を塞いでいる。普段あんなに可愛い声で囀っているのに、ドコから出しているんだと慄くほど酷い。厳つい顔は苦悶に歪み、冷や汗がじんわりと額に浮かんだ。
「ねえねえ、カモメが海に墜落してるんだけど~?」
ルーファスは両人差し指で耳の穴を塞ぎ、海に次々と墜落していくカモメたちを痛ましそうに見つめていた。飛ぶ鳥も落とす音波攻撃である。
「サイ《超能力》の防御壁を~、易々と突き破っていくんだけどおおお」
真紅の口紅を塗った大きな唇をへの字に曲げて、マリオンは頭を激しく振った。
「魔法も降参です」
シビルは耳をパタッと閉じながら薄く笑う。
会場中、昏倒したり呻き声をあげる猛者たちでいっぱいになり、音波攻撃を食らって阿鼻叫喚地獄絵図だ。
しかしステージの上では、気持ちよさそうにご機嫌なまでの顔で、握り拳全開でキュッリッキは熱唱している。振り付けも惜しまずノリノリだ。
神秘的な美で観客たちを魅了した直後に、この世のものとは思えない音痴を超越したキュッリッキの歌声を、誰も止めることができなかった。
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