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美人コンテスト編
episode569
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(メルヴィンにやっと見てもらえる。頑張っちゃうんだから)
やや緊張気味に面を上げて、キュッリッキはステージをまっすぐ歩いていく。
ステージの半分上はテントで日除けがされていて薄暗い。前に進むにつれ視界がどんどん開けていくと、太陽の光に照らされた海が眩しく輝き、キュッリッキは一瞬目を細める。
海と波打ち際に近い観客たちが、徐々に視界に飛び込んできた。
(メルヴィンはドコかなあ?)
目だけをキョロキョロするが、人が多すぎて見つからない。
(もうちょっと前に行ったら見つかるかな。…でも、なんだか凄く静かな気がするかも~?)
ほかの出場者達のように大声援で迎えられると思いきや、観客たちの意外な反応に、キュッリッキは目をぱちくりさせていた。
バンドの演奏がピタリと止まり、波が引くように会場の騒音も静まっていく。
衣擦れの音とヒールの靴音だけが、潮騒とともにビーチに響き渡った。
観客たちは皆、吸い付けられたようにステージに立つキュッリッキに見入っていた。
胸元や細い二の腕を大きく覆う飾りは、銀と青のビーズで幾何学模様に編まれ、そこから柔らかな半透明の薄布が、幾重にも裾に広がってほっそりした身体を包み込んでいる。
裾のあたりが淡い青色になっていて、水と白い泡を彷彿とさせるドレスだ。
そよ風に薄布が揺れると、陽の光に透けて身体の線があらわになり、ほんのりと淡く肌の色も透ける。
49人までの艶かしい美しさの競演のあとに、神秘的で清楚な美が登場して、会場は感動の渦に落とし込まれている状況だった。
陽の光を弾いて金色に煌く髪の毛と、日焼けとは無縁の真っ白な肌、儚げでいて美しい顔は戸惑いを浮かべて、目の前の観客に向けられていた。
静まり返る中、キュッリッキがステージの所定の位置に立つと、静寂を突き破るように大歓声が沸き起こった。
これまで顔よりも、その艶かしいボディに魅了されていた人々は、キュッリッキの登場により、なんのコンテストかを思い出す。
「どお? メルヴィン」
ルーファスがニヤニヤとメルヴィンに感想を求めると、メルヴィンは惚けた様にキュッリッキに釘付けとなっている。
「言葉で聞くまでもないか」
ルーファスの苦笑に、タルコットとギャリーはにっこりと笑った。
毎日見ているはずのキュッリッキの顔、そして姿。しかし今ステージにいる彼女は、絵画から抜け出た女神か妖精のように見えるのだ。
「綺麗です、本当に…」
頬を赤らめつつ、メルヴィンは心酔するように呟いた。
「フフンッ、愚民どもめ。リッキーの美しさに魂から魅入られたか」
ポロシャツにスラックス姿のベルトルドは、尊大なドヤ顔で鼻を鳴らす。さすがに軍服は着ていない。リュリュもアルカネットも、似たりよったりのラフな格好だ。
「ちょっと前まで股間がバーニングしてたくせに、よく言うわネ、まったく」
「男としてアタリマエの反応だろう。首から下の、裸体に等しいエロティックな艶姿は、実に眼福だった」
「なかなかに神々しいというか、神秘的な雰囲気ですねキュッリッキ嬢。これまでの49人のエロイ姿が霞む勢いを醸し出していますよ」
「無垢なまでに、本当に透明感のある美しさです。魅入られないほうがどうかしているというものです」
シ・アティウスの率直な感想に、アルカネットが深々と同意する。
「さすがは召喚士様、ってところかしら?」
「おおっと、あまりの神秘的な美しさに仕事忘れちゃったよ~! さあキュッリッキちゃん、キミの特技をここでご披露しちゃってえー!!」
「そうだった!」
司会者に促され、キュッリッキはハッとなる。メルヴィンはどこかと、探すことに夢中になっていたのだ。
「えっと、では、得意な歌を歌いまーーーっす!」
そう元気よく大声で宣言し、キュッリッキは司会者のマイクをひったくった。
「ちょっ! ヤバイぞ」
観客席にいるハドリーが、慌てて両手で耳を塞ぐ。
「ヤダあの子、マイク持っちゃった」
ステージの裏で、ファニーは両手で耳を塞いだ。
「アタシの十八番、『恋のドキドキハリケーンラブ』いっきまーす!」
キュッリッキは大きく息を吸い込み、そして。
「あ~~~たしの~~~~この~~あふれるううう想いわあああああ」
握り拳で歌いだした瞬間、ビーチにいるすべての人々がずっこけた。
やや緊張気味に面を上げて、キュッリッキはステージをまっすぐ歩いていく。
ステージの半分上はテントで日除けがされていて薄暗い。前に進むにつれ視界がどんどん開けていくと、太陽の光に照らされた海が眩しく輝き、キュッリッキは一瞬目を細める。
海と波打ち際に近い観客たちが、徐々に視界に飛び込んできた。
(メルヴィンはドコかなあ?)
目だけをキョロキョロするが、人が多すぎて見つからない。
(もうちょっと前に行ったら見つかるかな。…でも、なんだか凄く静かな気がするかも~?)
ほかの出場者達のように大声援で迎えられると思いきや、観客たちの意外な反応に、キュッリッキは目をぱちくりさせていた。
バンドの演奏がピタリと止まり、波が引くように会場の騒音も静まっていく。
衣擦れの音とヒールの靴音だけが、潮騒とともにビーチに響き渡った。
観客たちは皆、吸い付けられたようにステージに立つキュッリッキに見入っていた。
胸元や細い二の腕を大きく覆う飾りは、銀と青のビーズで幾何学模様に編まれ、そこから柔らかな半透明の薄布が、幾重にも裾に広がってほっそりした身体を包み込んでいる。
裾のあたりが淡い青色になっていて、水と白い泡を彷彿とさせるドレスだ。
そよ風に薄布が揺れると、陽の光に透けて身体の線があらわになり、ほんのりと淡く肌の色も透ける。
49人までの艶かしい美しさの競演のあとに、神秘的で清楚な美が登場して、会場は感動の渦に落とし込まれている状況だった。
陽の光を弾いて金色に煌く髪の毛と、日焼けとは無縁の真っ白な肌、儚げでいて美しい顔は戸惑いを浮かべて、目の前の観客に向けられていた。
静まり返る中、キュッリッキがステージの所定の位置に立つと、静寂を突き破るように大歓声が沸き起こった。
これまで顔よりも、その艶かしいボディに魅了されていた人々は、キュッリッキの登場により、なんのコンテストかを思い出す。
「どお? メルヴィン」
ルーファスがニヤニヤとメルヴィンに感想を求めると、メルヴィンは惚けた様にキュッリッキに釘付けとなっている。
「言葉で聞くまでもないか」
ルーファスの苦笑に、タルコットとギャリーはにっこりと笑った。
毎日見ているはずのキュッリッキの顔、そして姿。しかし今ステージにいる彼女は、絵画から抜け出た女神か妖精のように見えるのだ。
「綺麗です、本当に…」
頬を赤らめつつ、メルヴィンは心酔するように呟いた。
「フフンッ、愚民どもめ。リッキーの美しさに魂から魅入られたか」
ポロシャツにスラックス姿のベルトルドは、尊大なドヤ顔で鼻を鳴らす。さすがに軍服は着ていない。リュリュもアルカネットも、似たりよったりのラフな格好だ。
「ちょっと前まで股間がバーニングしてたくせに、よく言うわネ、まったく」
「男としてアタリマエの反応だろう。首から下の、裸体に等しいエロティックな艶姿は、実に眼福だった」
「なかなかに神々しいというか、神秘的な雰囲気ですねキュッリッキ嬢。これまでの49人のエロイ姿が霞む勢いを醸し出していますよ」
「無垢なまでに、本当に透明感のある美しさです。魅入られないほうがどうかしているというものです」
シ・アティウスの率直な感想に、アルカネットが深々と同意する。
「さすがは召喚士様、ってところかしら?」
「おおっと、あまりの神秘的な美しさに仕事忘れちゃったよ~! さあキュッリッキちゃん、キミの特技をここでご披露しちゃってえー!!」
「そうだった!」
司会者に促され、キュッリッキはハッとなる。メルヴィンはどこかと、探すことに夢中になっていたのだ。
「えっと、では、得意な歌を歌いまーーーっす!」
そう元気よく大声で宣言し、キュッリッキは司会者のマイクをひったくった。
「ちょっ! ヤバイぞ」
観客席にいるハドリーが、慌てて両手で耳を塞ぐ。
「ヤダあの子、マイク持っちゃった」
ステージの裏で、ファニーは両手で耳を塞いだ。
「アタシの十八番、『恋のドキドキハリケーンラブ』いっきまーす!」
キュッリッキは大きく息を吸い込み、そして。
「あ~~~たしの~~~~この~~あふれるううう想いわあああああ」
握り拳で歌いだした瞬間、ビーチにいるすべての人々がずっこけた。
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