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美人コンテスト編
episode566
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「そろそろマーゴットのテントに行ってあげなよ。ベルトルド様達来るまで、オレがキューリちゃんと一緒にいるから」
「そうですね、判りました。では、お願いします」
「ほほい」
テントを出て行くカーティスを見送り、キュッリッキは小さく首をかしげる。
「ベルトルドさんたち、いつ来るんだろう?」
「キューリちゃんの出番は一番最後だから、正午過ぎになるって言ってたよ。それまでは、さすがに仕事抜けてこられないみたいで」
「そうなんだあ~。メルヴィンたちはもう来てるのかなあ?」
「うん。一番良い席を取ったってザカリー言ってたから、みんな座って時間を待ってるって」
「そうなんだね。――早く、メルヴィンに見せたいなあ」
ドレスを両手でつまみ、そっと横に広げて見せる。
(似合ってるかなあ、メルヴィン褒めてくれるかなあ~)
メルヴィンをびっくりさせてあげようと、ルーファスとマリオンに言われて、衣装に身を包んだキュッリッキの姿は内緒なのだ。
たまにはそういうのも面白そうかなと乗ってみたが、早くメルヴィンに自分の姿を見せたくて、褒めて欲しくて、キュッリッキはジリジリと心が落ち着かなくなっていた。
「あー、いたいた、リッキーやっほー」
「ファニー! ハドリーも」
「よっ」
突然親友のファニーとハドリーが、テントに姿を現した。
「おやおや、2人とも応援に来てくれたとか?」
ルーファスが目をぱちくりさせていると、
「あたしもエントリーしてるのよ、美人コンテスト」
「お~」
キュッリッキが背筋を伸ばすと、ファニーは両手を腰に当てて「ふぅ」っとため息をついた。
「結構自信あったんだけどー、あんたもエントリーしてるんだったら、優勝は無理ネ」
「そうなの?」
ファニーはこめかみをピクッとさせると、キュッリッキの鼻をつまんだ。
「この無自覚め! 主催の方針であんた最後の出番で良かったわよ! トップバッターでステージに出て行ったら、あとが自信喪失で続かないんだからね!!」
「いひゃひゃいふぉ」
ファニーの剣幕に、ハドリーとルーファスは薄笑いを浮かべた。
申込書には写真を添付するが、主催側でステージに立つ順番を決めるときに、その写真を参考にする。
ラストに近ければ近いほど、美人の質が上がる。ファニーが言ったように主催側の判断で、ハイレベルな美人が最後の方にもっていかれるのだ。そうすれば前半の出場者に、いらぬ劣等感を抱かせずに済むし、客の盛り上がりも自然と操作できる。
「ったく、優勝だったら報酬が凄い良かったんだけど、あんたがライバルじゃ無理すぎる。――しょうがないわね、2位狙いに変更するわ」
前に突き出した胸が、重たそうにぶるんと揺れる。それを見上げて、キュッリッキは自分の胸に視線を向けた。
(……むぅ)
揺れるどころか、揺らすことさえ難しいペッタンな胸である。
「ファニーちゃんは、今日だけの臨時日雇いで?」
「そそ。『トリカブト傭兵集団』に雇われたのよ。あそこにも女はいるけど、流石にもうコンテストって年齢じゃないしね~。たまに仕事手伝わせてもらってるのもあって、出てあげるってことになったの。ちなみにあたしは45番よ」
「なるほどなるほど。ファニーちゃんもかなりイイ線イってるから、上位入賞はマチガイナイネ」
小麦色に日焼けした肌は、布の面積がやや少ない大胆なビキニと、ジーンズの短パンで覆われている。愛らしい顔とセクシーな肢体は、明るく活発な印象を全面的に押し出していた。
「だとイイけど。――さっき全部の控えテントの中見てきたけど、ライオン傭兵団のもうひとりのエントリー女、アレ毎年出てるって人よね。今回も出るみたいだけど、全然懲りてないのね?」
ルーファスは深々と首を縦に振る。
「あのベルトルド様が却下しても、まーったく聞き入れないからねー。相当の頑固者なんだよ~」
「まあ、別にブスってわけじゃないと思うけど、コンテスト向きじゃあないわね」
「おいおい、あんまり失礼言うなよ」
ハドリーが慌ててたしなめると、ファニーは小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「これ、美人コンテストなのよ? あたし、間違ったことは言ってないわ」
「そうですね、判りました。では、お願いします」
「ほほい」
テントを出て行くカーティスを見送り、キュッリッキは小さく首をかしげる。
「ベルトルドさんたち、いつ来るんだろう?」
「キューリちゃんの出番は一番最後だから、正午過ぎになるって言ってたよ。それまでは、さすがに仕事抜けてこられないみたいで」
「そうなんだあ~。メルヴィンたちはもう来てるのかなあ?」
「うん。一番良い席を取ったってザカリー言ってたから、みんな座って時間を待ってるって」
「そうなんだね。――早く、メルヴィンに見せたいなあ」
ドレスを両手でつまみ、そっと横に広げて見せる。
(似合ってるかなあ、メルヴィン褒めてくれるかなあ~)
メルヴィンをびっくりさせてあげようと、ルーファスとマリオンに言われて、衣装に身を包んだキュッリッキの姿は内緒なのだ。
たまにはそういうのも面白そうかなと乗ってみたが、早くメルヴィンに自分の姿を見せたくて、褒めて欲しくて、キュッリッキはジリジリと心が落ち着かなくなっていた。
「あー、いたいた、リッキーやっほー」
「ファニー! ハドリーも」
「よっ」
突然親友のファニーとハドリーが、テントに姿を現した。
「おやおや、2人とも応援に来てくれたとか?」
ルーファスが目をぱちくりさせていると、
「あたしもエントリーしてるのよ、美人コンテスト」
「お~」
キュッリッキが背筋を伸ばすと、ファニーは両手を腰に当てて「ふぅ」っとため息をついた。
「結構自信あったんだけどー、あんたもエントリーしてるんだったら、優勝は無理ネ」
「そうなの?」
ファニーはこめかみをピクッとさせると、キュッリッキの鼻をつまんだ。
「この無自覚め! 主催の方針であんた最後の出番で良かったわよ! トップバッターでステージに出て行ったら、あとが自信喪失で続かないんだからね!!」
「いひゃひゃいふぉ」
ファニーの剣幕に、ハドリーとルーファスは薄笑いを浮かべた。
申込書には写真を添付するが、主催側でステージに立つ順番を決めるときに、その写真を参考にする。
ラストに近ければ近いほど、美人の質が上がる。ファニーが言ったように主催側の判断で、ハイレベルな美人が最後の方にもっていかれるのだ。そうすれば前半の出場者に、いらぬ劣等感を抱かせずに済むし、客の盛り上がりも自然と操作できる。
「ったく、優勝だったら報酬が凄い良かったんだけど、あんたがライバルじゃ無理すぎる。――しょうがないわね、2位狙いに変更するわ」
前に突き出した胸が、重たそうにぶるんと揺れる。それを見上げて、キュッリッキは自分の胸に視線を向けた。
(……むぅ)
揺れるどころか、揺らすことさえ難しいペッタンな胸である。
「ファニーちゃんは、今日だけの臨時日雇いで?」
「そそ。『トリカブト傭兵集団』に雇われたのよ。あそこにも女はいるけど、流石にもうコンテストって年齢じゃないしね~。たまに仕事手伝わせてもらってるのもあって、出てあげるってことになったの。ちなみにあたしは45番よ」
「なるほどなるほど。ファニーちゃんもかなりイイ線イってるから、上位入賞はマチガイナイネ」
小麦色に日焼けした肌は、布の面積がやや少ない大胆なビキニと、ジーンズの短パンで覆われている。愛らしい顔とセクシーな肢体は、明るく活発な印象を全面的に押し出していた。
「だとイイけど。――さっき全部の控えテントの中見てきたけど、ライオン傭兵団のもうひとりのエントリー女、アレ毎年出てるって人よね。今回も出るみたいだけど、全然懲りてないのね?」
ルーファスは深々と首を縦に振る。
「あのベルトルド様が却下しても、まーったく聞き入れないからねー。相当の頑固者なんだよ~」
「まあ、別にブスってわけじゃないと思うけど、コンテスト向きじゃあないわね」
「おいおい、あんまり失礼言うなよ」
ハドリーが慌ててたしなめると、ファニーは小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「これ、美人コンテストなのよ? あたし、間違ったことは言ってないわ」
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